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野蛮学校物語  作者: yukke
第3章 運命の人間たち編
74/116

第69話 500VS220 1. 模擬戦争当日

投稿遅れてすみませんでした。



―――――――――――――――――――――――

―【臆病者】アイリス視点―



◆◆◆◆◆22日目◆◆◆◆◆



 朝5時10分。

 朝早くから洞窟内全体が慌ただしい。


 各ゴブリンがそれぞれの準備を急いで進めている最中である。



 それもそうだ。 

 今日は【ゴブリン軍団】にとって運命の日である。


 昼は敵にバレないようにする模擬戦争。

 夜は手加減無しの本物の戦争。


 今日でゴブリンと俺達の運命は決まる。



 「みんなー! 刃の付いていない武器を取れよ! 隣のヤツに事前確認をしてもらえー!」



 ユッケは洞窟内で空中浮遊をしながら、大きな声でゴブリン達に呼び掛けている。

 あちらこちらへ飛んで心配しているその様は、先生とまるで変わらない立ち回りである。



 俺とモークは一足先に準備が完了した為、村長の部屋で作成の最終確認を行っていた。


 部屋の中には、村長とダークゴブリンのボス、ノノアがいた。



 「……アイリス殿、御覚悟は出来ていますか?」

 「ああ、大丈夫。何時もやっている事だ。心配はしなくてもいい。」

 「ソンチョウドノ、アイリスガイツモコドモタチニヤッテイルコトダ。」


 「……そうですか。余計な心配をお掛けしました。……コホン! さて、各員の最終確認を行う。」



 俺達は村長に目を配る。

 村長の指示だと何故か安心感が沸いてくる。



 「モーク、ノノア殿。あなた達は魔物5体を率いて、事前に渡した地図の線に沿ってゆっくりと巡回をしていただきたい。ノノア殿は敵の密偵を見つけ出したらコレを敵に投げつけてください。上空で監視しているユッケが直ぐに気づくでしょう。」

 「畏まりました。」



 村長はノノアに10個ほど、ボールのようなものを渡した。

 当てただけでどうして上空にいるユッケにわかるのだろうか?

 それは俺にもわからない。



 「モーク殿は【カゲヲアヤツルモノ】を使って撃退していただきたい。殺すのは厳禁です。生徒に持たせている縄で捕獲してください。」

 「りょーかい!」


 「ノノア殿、アリスは空を飛べますか?」

 「はい。他の者を圧倒するほどの優秀な腕です。」


 「アイリス殿。アリスはアナタを見れば直ぐに食らいつくでしょう。ユッケに位置を把握してもらって彼女を誘ってください。適度に戦闘したあと、例の作戦をお願いします。上手く掛かれば縄無しでも捕らえられるでしょう。」

 「わかった。」



 俺は了承する。

 例の作戦がうまくいけば、アリス捕獲も可能だ。


 村長は予めワゼリスに許可は事前に取ってあるそうだ。

 「部下達は殺してもいいと言っている。」とは言われたのだが、流石にそれはやり過ぎると村長は判断している。


 改心させるよう努力すれば何とかなるだろう。



 「ボス殿。あなた達は隠し場所が敵にバレないように守っていただきたい。アナタの魔物は模擬戦争には使いません。ただ、万が一相手側が私達に危害を加える意図が見えたと偵察の魔物が判断した場合は、アナタが自由に魔物達の指揮をお取りください。ある程度の殺害行為を許可します。私がワゼリス様に謝罪します。」

 「ワカッタ。マモノタチニハソウイッテオク。」


 「ワゼリス殿が提案した戦争時間は3時間。それを越えれば軍を撤退をするそうです。それまでの間、敵は数名ほどの監視を送るでしょうな。何としてでも模擬戦争と言うのがバレないように徹底していただきたい。」

 「「「はい(ハイ)!」」」



 俺達は村長の言葉を聞いて、綺麗に合わさって礼をする。

 特に仕組んでいた訳でもないのだが。



 「では解散です。御武運を。」



 そして俺達は村長の部屋をでた後、バラバラになって行動を始めた。






 一人になった俺は収納魔法からサングラスを取り出し、目に掛けた。


 大量の数字が流れてくるのは流石に慣れた。



 《おはようございます、アイリス様。早速ですが、ユッケに連絡を取りますか?》



 ああ。

 そうしたかった所だ。



 《では、ユッケに繋げます。》



 サングラスの返答から数秒後、ユッケの声が脳内に響く。



 《もしもし、ユッケだ。……アイリスか?》



 ああそうだ。

 アリスを見つけたら場所を教えてくれよ。



 《わかってるんだが……それよりお前は何処にいる? 上空から見てるんだが全然お前の場所が掴めん。その場所で派手なことをしてくれると助かる。》



 派手なこと? わかった。



 俺はユッケの要望に応えるため、魔法を使うことにした。



 「【氷球】、【魔力操作】!」



 氷球は勢い劣らず上空へと舞い上がる。

 数十メートル程の高さまで上に上がった【氷球】を工夫してみることにした。



 「【分裂スプリット50】!」



 氷球は突如、小さな大量の【氷球】に分裂した。


 この【分裂】はあらゆる方向に魔力球を飛ばせるため、かなり便利である。



 実はこの魔法、ゴブリン村長から借りたあの本【魔術全般 第6巻(終)】に乗っていた魔術である。


 ※第49話参照。


 暇がある時に貰った【古代ガウ・ダウ言語辞書】翻訳本を使って解読していた。


 通常の魔法では【分裂30】が限界なのだが、この魔術は最高1000まで分裂させることが出来るらしい。



 果たしてコレで気付くかな?



 しばらく待っていると、ユッケから返事が来た。



 《おお! 【分裂50】か。村長から貰ったあの魔術本にあったのか?》



 ああ、一番最初だからかなり簡単な魔術だが……かなり便利だぞ?



 《それにしても、魔術本があったのは凄い話だな。他の人間に見られた間違いなく焼却対象だ。》



 確かにそうだな。この本、実は全部で6巻まであるらしいんだが……。

 村長は俺に渡した最終巻の6しか無いらしい。



 《そういえば俺も1巻の本は何処にあるのか全く知らんな。他は全部大分昔に読んで捨てたんだが……。》

 


 いわれて見ればそうだ。

 村長が渡した本は最終巻である6巻。


 ……と言うことは、それまでの1~5巻があるということ。


 (冒険ついでに探すか。多分無い可能性もあるけど)



 まぁ、冒険ついでに探すのはどうだ?

 正直俺も第1巻の内容が何なのか気になる。



 《そうだな。アイロンに行けば何かわかるかもな。……じゃあお前を見失わない為にちょっと魔法かけるけどいいか?》



 大丈夫だ、かけてくれ。



 《【標的照準ターゲット・ロック】。》



 すると、しばらく経過してから俺の周りに突如紫色の魔法陣が浮かび上がった。



 《本来、この魔法は敵を逃さない為に使用する魔法なんだが……使い方を工夫すれば味方の場所を把握する便利な魔法になる。良ければ教えようか?》



 明後日になったら教えてくれ。

 明日は疲れてぐっすり寝ているだろうからな。



 《予定は入れておく。アリス見つけたら連絡するから、その時までは森の中でのんびり待っとけよ!》



 ユッケはそう言い残すと、サングラスの通信を勝手に切った。


 俺は【うでどけい】を見る。

 短針長針は6と10を示していた。


 (もしかして、俺大分長い時間待たされるんじゃ……)


 そう気づいた頃には、もうゴブリンの洞窟からかなり遠く離れていた。



―――――――――――――――――――――――



 一方その頃、【朱の騎士団】本拠地では戦争の準備を朝の3時から着々と進めていた。


 少し前、ワゼリスから突然の直接命令が下されたことより、部隊は本拠地の近くき設置している巨大な荷物置き場で慌ただしく準備している。



 今回の軍団を指揮されたルーサーは、ワゼリスからの命令を渋々受けた。

 ゴブリンを全力で虐殺しようと思っていた所に、突然主から「模擬戦に切り替えだ!」と言われたのだ。


 主の言葉にはずっと従ってきたルーサーだったが、今回ばかりは少し疑問を抱いていた。



―――――――――――――――――――――――

~ルーサー視点~



 俺は兵士に武器の切り替えを指示している間、ずっとワゼリス様の事について考えてきた。



 ……どういうお考えでそう決められたのですか?

 ワゼリス様。




 この手でやっと両親の復讐を遂げられると確信し、恨ましき魔物達を惨殺出来ると思っていた。


 納税する穀物を輸送するために都会へ移動途中、両親は魔物に殺された。

 草原でレベル100以上の危険魔物、ダークワイバーンに出くわす事など限り無く0に近いハズだったというのに。


 それ以来、両親の敵を取るためにずっと考えて行動して来た。


 敢えて上下関係に煩い周囲からの恨まれ役を演じることで、俺を前線に出してくれると思った。

 今のステータスでは、ダークワイバーンには手も足も出ない。


 そうすれば、少しでも魔物を討伐出来る。

 俺は魔物を討伐する事で段々と強くなれる。

 段々と強くなれば前線に出る機会が増える。



 ちなみにアリスを蔑んだのは、彼女の方が恨まれ役を担っていたからだ。

 上下関係が煩い奴より、【カニバリズム】持ちの少女の方が嫌われるのは当然。彼女は俺より前線に出され、何時も返り血を全身に浴びて帰ってきた。



 討伐してくれて何時も感謝しているというよりかは、


 (なんでテメェばっかり前線に立って活躍して、俺は強くねぇただのイキリ野郎になってんだよ。畜生が。)


 という気持ちの方が強かった。



 ……しかし、今回の作戦は血を流す戦いとは違った。



 どうしてワゼリス様は魔物と和平を結ぼうとするのか?

 サッパリ意味が分からない。


 (クソッ……500もの軍団を俺が指揮しているのはとても嬉しい事だが、模擬戦争だから相手を一匹も殺さずにみすみす撤退するのは屈辱……)




 この時俺は、どうすれば良いのか自分では全く分からなかった。

 もし冷静に考えていたら、全く違った未来になったのかも知れない。


 しかし、俺が最終的に下した判断は……。


 (そうだ! 俺だけが真剣を握れば……俺が独断で起こした事になる。そうなれば、ワゼリス様は問われずに済む。魔物も殺せて一石二鳥だ!)


 ワゼリス様の命令を無視して、自分だけ真剣を使って魔物を倒すというものだった。

 かなり破綻している。




 俺は用意された模擬剣と真剣を替えるフリをする。

 兵士達の殆どは既に馬に跨がり、まだ準備していない兵士には周りで手伝っていた。

 頃合いと見た俺は真剣を抜いて次の指示を出す。



 「皆! 剣は取ったか! 全員広場に集まれ! ワゼリス様の御言葉を一言一句聞き漏らすでない!」

 「「「はっ!」」」



 兵士達は俺の指示に同意すると、一斉に本拠地の大広間へと移動した。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

~アリス視点~



 パジャマ姿の私が、目をつぶりながら毛布でモカモカしていると大きなドタドタという地面を蹴る音がした。


 地面を蹴る音に強く反応した私はムクッと起き上がり、両手を上げたくなる衝動に駆られる。



 「ふぁぁぁあ。お肉おいちぃ。」



 あまりにも夢の中に出てきた人肉の味が美味しかったのでついつい言っちゃった★



 ねむたいおめめを両手でこすり、大きな欠伸を漏らしながら、周りから聞こえるドタドタという音の発生源を探る。


 (……アソコに居るのはルーサーじゃん。軍団率いて大変だねー。……ふぁぁぁあさむい。布団にいたい…………ZzzZzzZzz)


 完全に寝ぼけていた私は事態の深刻さに気付くのに時間をかけてしまった。


 モフモフの布団をまた掛けて目を瞑り、しばらくの間自分の言った「ルーサー」という単語について一人で語る。


 (そう言えばルーサーって、何時も死にたがりのよくわかんない男だよねー。普通ワゼリスから【ゴブリン軍団】の筆頭任された位であんなに喜ば……ゴブリン軍団!?)


 ようやく事の事態に気付いちゃった……。

 ゴブリンという自分の頭から出てきた言葉に電気信号がビリリと走り、勢いのあまり毛布をガバッと開けて起き上がる。


 完全に目が覚めたと同時に、一つ確定したことがある。


 (いけない!遅刻じゃん!)


 私はベッドから抜け出し、慌てて支度に取り掛かる。



 血を落としきれずに残った服を何時ものようにサッと着こなし、収納魔法から鎌を取り出す。

 髪を数十秒で整えた後、私はワゼリスの所へ向かった。






 「……出遅れましたね?」

 「ゴメンね。うっかり寝過ごしちゃった★」



 ワゼリスの部屋に着いた私だったけど、当然の如く彼に見抜かれちゃった。


 何時もミスしてしまった時に使う、少女のニッコリ笑顔で何とか誤魔化す。


 すると、ワゼリスは私に問い掛けるように言ってきた。



 「……それで、行くのですかな?」

 「うん。もし人間がいたら食べちゃおうかなーって。」


 「相手は油断出来ません。何があっても責任はアナタ自身です。それでも構いませんね?」



 要は、私の身に何があっても助けないって事だね。


 まぁ単独行動するからには上としては当然の判断よね。

 今更此処で言われてもびっくりしないけど。



 「わかってるよー。ぜーったい油断しないから。」

 「……なら、安心ですな。では早く【グルドの森】へ向かいなさい。軍団は既に出発しております。」


 「ハーイ!」



 私は幼児のような返事をしながら右手を上に上げた。

 そして、それからは特に言うことが無いので颯爽と退出する。


 私がワゼリスの自室に入ってから出るまで僅か3分足らずだった(そんなのどうでもいいけどね)。




 朱の騎士団の本拠地から出た私は装備や所持品の確認をサッと済ませた後、とある魔法を唱えた。



 「【飛行フライ】」



 フワッとした感触と共に、私の体はゆっくりと浮かび上がっていく。


 私が浮かび上がる事の出来る限界の100メートル程になった所で、私は体を傾ける。


 すると、魔力の力によって、私は高速で飛行し始めた。


 上からだとル・レンタンの街並みが、何時も見ているよりも綺麗。

 美味しそうな食べ物もウヨウヨ動いてるね。


 (……ハッ!いけないいけない、私ったら。すぐ別の食べ物に浮気するんだから)


 自分でポンポンと頭を叩き、さっきの考えを戒めた。






 10分程移動していると、【朱の騎士団】と思われる500人程の部隊に遭遇した。


 ルーサー君の指揮が悪くないのか、通常のスピードよりも早く移動している。

 けど、遅いね。



 幾ら馬で向かっているとは言っても、500名なら当然スピードは遅くなるよねー。


 それに比べて私、単独行動で飛んでるから君たちの数倍早いし。



 (お先に失礼しま~す!)


 私はルーサー君の部隊を尻目に、【グルドの森】へと向かった。

 後ろでルーサー君の兵士が敬礼していたのは気づかなかった。


 (どんな人なのかな~。楽しみ~!)


 この時の私は能天気な事をずっと考えていた。


 相手がどんな人間かも知らずに……。

 そして、これから起こる未来も何も知らずに……。



―――――――――――――――――――――――



 アリスに先を行かされてしまったルーサーは、部下の報告によってアリスを発見した。


 自分より先を越された怒りは毛頭なく、寧ろ可哀想に見つめていた。



―――――――――――――――――――――――

~ルーサー視点~




 検問を難なく通過し、草原地帯を駆け抜けている。

 すると、俺は微かな強者の感覚を覚えた。

 上空から無視出来ないほどの威圧感が漂う。


 すると、部下が俺に報告してきた。



 「ルーサー様、上をご覧ください。アリス様です。」

 「何!? ……そうか。確かヤツは空を飛ぶ魔法を熟知しているな。単独行動だから好き勝手飛べるからか。」



 俺は部下の報告に少し目を広げるが、すぐに冷静になった。


 自分が率いる【朱の騎士団】メインの部隊を、上空100メートル程で抜いていくアリスを俺は哀れに見つめる。


 (……カニバ女、お前は知らないんだな。お前は既に【ゴブリン軍団】で最大級に警戒されてるんだぞ?多分お前を捕まえるためのワナも想定してるんじゃねぇか?単独行動は相当の覚悟を持ってやらないと、後でズルズル引っ張るハメになるぞ)


 そんな感じでヤツを見ていると、部下が尋ねてきた。



 「如何いたしますか?」

 「ソッとしておけ。そのうちまた帰って来るさ。挨拶代わりの敬礼で良いだろう。」


 「はっ! 畏まりました。兵士達にもそう言っておきます。」

 「ああ、そうしろ。」


 「はい。大声を出しますので少し離れます。」



 俺がそう言うと、部下は俺から10メートル程離れた。

 そして、後ろを向いて一番奥の兵士でも聞こえるほどの大声で喚起する。


 (俺より優秀だな。俺がやられた後にはコイツが継ぐだろうな)



 「聞けー! 上空で飛んでいる者は【朱の騎士団】のアリス様だ! アリス様に向かって敬礼を行う! 馬上で構わん!」

 「「「了解!」」」



 上を気にしていた兵士達は、部下の喚起で一安心した表情を見せる。



 「敬礼!」



 そして、部下の合図により俺の兵士達は馬上でアリスに10秒程の敬礼した。

 


 俺にとってのこの敬礼は、アリスを敬うのに対しての敬礼では無いように見えた。


 最も近かったのは、去り際に使われる敬礼に近い気がした。



―――――――――――――――――――――――

―ユッケ視点―



 上空3200メートル。

 俺は体を回転しながら暇を潰していた。


 こんな空中で体を軸ごと回転するなんて所業、並みの者であれば「今から自殺します。」と言っているのと同等の行為である。



 だが、俺には【飛行】の魔法を自己改良と発展を繰り返して偶然見つけた魔法があるのだ!


 その名も……。



 【中位魔法・自由飛行フリーダム】!



 特殊魔法の中でもかなりの上位である中位魔法。

 そして、飛行系魔法の最上位だ。


 これさえあれば、理論上は何処までも飛べると思う。身体がついて来れればの話だが(90キロ超えた辺りが俺の限界だった。体がはちきれそうな思いだったな)。



 ……ということで、俺は今アリスとかいう女の子がいるかどうか探しているんだが……。



 3200メートルと言うのは、アリスにバレない為だ。

 3200という数字に大きな意味はない。


 これでも、俺が思っていたよりも高く飛んでいる。

 最初は「2000ぐらいで良いんじゃないか?」と考えていたのだが、ゴブリン村長が念の為だからとお願いしてきた。


 特にデメリットは無いからかなり見積もったんだが……。


 (流石にこれだけ離れてれば気付かないだろ?)


 俺は頭の中でそうモヤモヤしながら悩んでいた。

 ふと、かなり昔の事を思い出す。

 嘗て共に旅をしていた仲間である。


 (……アイツならどうしてた?直感で行動してたな。……なら俺もそうするか)


 俺は高度を上げることにした。



 高度3200メートルから4000メートルへと移動した。

 この程度なら10秒もかからない。


 (……此処だな。……ん?)


 自分の悩みが消える高度まで移動した。

 そして、あらゆる魔法・魔術を駆使してアリスを探す。


 すると、かなり遠くで100メートル程の高さで飛行する物体を見つけた。



 ……サングラス、あそこで飛行している人間はひょっとしてアリスか?



 《モークが移したデータとユッケのデータを比較・解析します……解析完了。》



 ……そうか(裏でそんな事やってたのかよ)。

 どうだ?



 《照合率、99.72%(0.28%→髪、服装のズレ)。アリスで間違いありません。》



 そうか(別に100%でいいんだけどな)。

 じゃあ、アリスの進行予想を大まかに立ててくれ。


 アイリスをそっちに向かわせるからその距離も粗方考慮してほしい。


 その後、アイリスに進行方向を教えろ。

 俺に連絡する必要は緊急時のみで頼む。



 《了解。計算が終わり次第、アイリスに報告します。》



 頼んだ。




 俺はサングラスとの会話を終えると、生徒達の様子をあちらこちらで伺った。


 (さて、アイリス。アリスをとっつかまえるんだな!)


 その心の中ではアイリスの応援を密かにしていた。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

~アリス視点~



 ルーサー君の部隊を通り過ぎてから凡そ15分。

 微かに緑色の大地が顔を伺っているのが確認できた。



 もうすぐじゃない。

 ワクワク!ワクワク!



 「【ステータス】。」



 私は【飛行】で魔力がどれだけ減っているかステータスを確認する。




 【ステータス】アリス



  レベル 147 ランク A


  体力 1682/1682

  魔力 2268/2843

  攻撃 1089/1089

  防御 1653/1653

  早さ 865/865

  速度 10.25/10.25

 当会心 16.5/16.5

  回避 20/20

 当回避 20/20

 総回避 36/36

 残血液 3100/3100(1990)


 経験値 2673528/500000000

   次 2673528/2796000(122472)




 うーん、500ちょっとねー。


 やっぱり遠距離向けじゃないね。

 この魔法。



 ……まぁ、いいや!

 そんなの別に食べちゃえばすぐけいけんちも魔力もたまるし。






 そんな事していると、かなり近くなってきた。



 ……ん?

 誰か私の事を矢で狙ってるね。


 でも、撃ってくる様子は毛頭なし。

 牽制かな?


 私は気にせず進む。






 森の中に入った私は数百メートルほど入ると、微かながら違和感を薄々感じていた。


 (あちらこちらから矢で牽制してる。……でも、撃ってくる様子は感じない。殺意が無い)


 何か不気味な予感がするから此処で引き返してもよかったけど……。


 (フンっ!こんなケンセー程度で私を退かせられると思ってんの?ゴブリン達もその程度のアタマなのかなー?)


 気にしない事にした。




 ……でも、なんだか上から物凄く不気味な感触がする。


 押しつぶされそうな、

 踏みつぶされそうな、

 はたまた喰われそうな。


 非常に気味の悪い感覚。


 上を見上げてみても何も無い。


 (ああ、もう!私今日どうかしてる!がんばれアリス。負けるなアリス!人間見つければご馳走たいむ!)


 私は両手でほっぺたをペンペンしながら冷静さを取り戻そうと心のなかでそう書き留める。



 そして、収納魔法からもう一つ取り出した。

 私の最も得意の武器、クロスボウ。


 使い慣れている武器を手にしたことで、私は安心感を得ることに成功した。


 (なーんだ、私ったら。武器が恋しかっただけなんだー。あんしんあんしん!)


 心を落ち着かせた私はスイスイと森の奥へと移動する。

 草原地帯で飛んでいたよりも半分以下のスピードだけどね。






 口笛を吹いて目を瞑りながらのほほーんと優雅に移動していた。


 心を落ち着かせた数十秒程である。

 その時、突如としてそれは起こった。



 「【氷球】! 【分裂50】!」



 詠唱が微かに聞こえたその直後。

 それに反応して目を開けた途端、私の数十メートル先に50個の小さな氷の塊が私に向かって弾け飛んできた。



 「【炎壁】!」



 私は咄嗟に四方6メートル程の炎の壁を作り上げ、間一髪で防ぎきった。


 すぐさま炎を解除し、魔法が発動された方向を見つめる。


 すると、30メートル先に1人の男が両手に短い剣を持って佇んでいた。

 男は私を見てこう言う。



 「ようこそ。【試練の森】へ。肌寒い歓迎……どうだったかな?」

 


 私は何故だか一筋の冷や汗を垂らしていた。




先日、愛用していたスマホの寿命が来てしまいました。

次回の投稿からは新しいスマホのタブレット機能を使って小説を執筆していこうと思います。


今まで使っていたタブレット機能とは違い、文字の打ち方にまだ慣れていません。

文字の打ち間違いが頻繁に訪れています。


しばらくの間、文章の誤字が更に多くなる事があります。

予めご了承ください。

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