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野蛮学校物語  作者: yukke
第3章 運命の人間たち編
70/116

第65話 真と偽の宣戦布告 4. ワゼリスと村長の会合



 モークとノノアが帰還したその頃。


 夜の作戦が彼らによって成功したことにより、損害を食らった組合がいた。



 【ル・レンタン組合専用取引所】である。



 たった一時間足らずで同時に奇妙な事が起こったのだ。



 ・レベル90以上のローズが、何者かに喉元をナイフで切られた。

 ・【朱の騎士団】と睨み合っているハズの【ゴブリン軍団】から、突然の宣戦布告。



 とある中心街の外れにある、何の変哲もない銅製のマンホールから通じる彼等の本拠地では、緊急会議を開いていた。


 ボスの命令により、各拠点の責任者と幹部全員が集まって頭を悩ませていた。



―――――――――――――――――――――――

【ル・レンタン組合専用取引所】【闇の間】



 此処は闇の間。



 【ル・レンタン組合専用取引所】本拠地の最奥、組合の幹部たちが会議や取引をする。

 彼等にとって、最も重要で崇高な場所である。


 20人ほどが座れる円形のテーブルに、それぞれ幹部が決められた場所に座っていた。

 それぞれに一杯のワインの入ったグラスが用意されている。


 部屋は混沌とした暗闇に覆われており、見知らぬ人が入れば一層不気味な感触を味わうことだろう。

 それほど広いという訳では無いのだが……。


 壁の周りには【ル・レンタン】で10を争う組合が掲げられていた。


 真ん中に近づくにつれて組合の順位が高くなっている。

 その中の幾つかは、()()()()()()()()()()×()を付けられている。


 普段は余裕を見せる幹部たちも、この日は頭を悩ませる者しか居なかった。






 「クソッ! 【ゴブリン軍団】め……。一体どうやって我々の拠点を突き止めた?」



 幹部の男は両方の拳を握り締め、激しく机を叩く。

 「バン!」という衝撃と音が辺りに響いた。



 「申し訳ありません……。モークタンが我々の拠点に直接渡してきたとしか今のところ報告は――。」

 「だから! 他に思いつく方法を探せっつんてんだろ! 大体テメーらのミスでこうなっちまったんだろーが!」


 「……申し訳ありません!」



 男の怒鳴り声に責任者は頭を地につけた。


 自分達のミスでモークタンを逃がしてしまった事は事実だからだ。

 多大な責任が重くのし掛かっている。



 「……それくらいにしておけ。今ここで責任をとる時間じゃねぇ。やっちまったもんは仕方ねぇからな。取り敢えず、この紙を読んでから皆で考えろや。」

 「バルザン様。申し訳ありません。」

 「……申し訳ありません。」


 「取り敢えず地面につけとる頭を上げろや。我々はそんな姿を喜んで見る人間やない。」

 「はい……バルザン様の御慈悲に感謝致します。」



 ボス……いや、バルザンは2人をやんわりと制止した。


 2人は頭を下げて謝った。

 地に頭をつけていた男は立つことを許された。



 バルザンは右手で紙をヒラヒラと動かしながら皆に話した。



 「……で、そのモークタンとやらが俺達宛てにこのカミを寄越してきたんだが……。」

 「なんて書いてあったのでしょうか?」


 「……ギーザ、取り敢えず皆の為に読んでくれ。」

 「わかりましたよ。まあ、読みますね。」



 バルザンは隣にいた実質No.2の位置にいるギーザにモークタンからの手紙を読ませることにした。

 そこには、カルナ言語でこう書かれていた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 宣戦布告通達書


 送り主 

 【ゴブリン軍団】代表 ゴブリン村長

 【ゴブリン軍団】代表 ダークゴブリン


 宣戦布告対象

 【ル・レンタン組合専用取引所】



 突然の手荒い御配送、誠に申し訳ありません。


 貴殿方が私達を真っ先に襲う万が一の対処法として、このような措置を取らせていただきたした。


 さて本題に入りますが、貴殿ら【ル・レンタン組合専用取引所】が【朱の騎士団】を事実上、傀儡しているという情報を我々の密偵が極秘に入手致しました。


 そこで我々は【朱の騎士団】よりも、貴殿方の組合の方が後の将来への危険分子だと判断致しました。


 よって我々【ゴブリン軍団】は、貴殿方【ル・レンタン組合専用取引所】に強制宣戦布告する事を此処に宣言致します。


 日程は送り届けられた今日を含めて5日後の夜19時。

 場所は我々が住んでいる【グルドの森】で御座います。


 我々を目の前にして後方へ走ることの無いようにお願い致します。


 では、会戦の日にお会いしましょう。

 両手を広げて御歓迎致します。


 それまでごゆっくりと残りの時間をご堪能ください。



―追伸―

 降伏という手段はありませんので御注意ください。


 会戦の日に最終手段をとります。

 その時は御覚悟を。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 「きょ……宣戦布告だと!?」

 「バカな……どうして知能をほとんど持たないハズの魔物が、我々の言語を使いこなしている!?」

 「一方的ではないか! 何処からそんな自信が湧いてくるのだ! 単なる虚仮威しに惑わされるでない! 取り敢えず様子を見てから冷静に考えようぞ?」

 「単なる虚仮威しだと? 違う! 大体【ゴブリン軍団】が我々の名前と拠点をどうして知っている? 我々の行動が浮き彫りになっている証拠ではないか!」



 ギーザが手紙を読み終えた直後、幹部たちは皆騒然となった。


 魔物が人間の言葉を使っていることに驚く者。

 強制宣戦布告という単語に震える者。

 様々な考察で肯定と否定に別れて議論する者。



 騒然となった幹部たちが共通する事は一つ。


 【ゴブリン軍団】を無視することが出来なくなったのである。



 騒ぎがヒートアップしそうになったその瞬間、バルザンは制止すると同時に自分の考えを述べた。



 「静かにせぇ! ……それで、俺の感想を先に言わせて貰おう。アッチから宣戦布告をいきなり出されちまった以上、俺達にソイツを突っぱねる権利はねぇ。仕方なく俺達は戦うしかねぇんだ……。」



 バルザンは途中から苦しそうな表情になっていった。

 「()()()()」という単語が、バルザンの表情を変えていった大元である。



 通常の宣戦布告では、宣戦布告を敵側に通達する一つ前にやらなければいけない事がある。

 「割譲願」や「条件書」、「警告書」などと呼ばれる戦争しない為の交渉が必要になってくる(その時の名称は別に決められてはいない)。


 主に国と国の戦争レベルの規模になってくるほど重要になってくるのだ。


 万が一これを破っていきなり宣戦布告をすれば、世界の敵であると豪語するのと同じことである。

 取引閉鎖はまだマシ。

 兵士による内乱もまだマシ。

 自国以外の同士が組んで一気に攻めてきたら最悪である。

 


 だが、今回の場合は違ったケースである。

 そこを【ゴブリン軍団】は突いてきた。


 (なるほどな……俺達は闇の商人。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というこった。手紙の書いてある通り、万が一敵前逃亡をしちまったら、コイツらの命は全く保証できねぇ……か)


 手紙では敵前逃亡を厳禁されている以上、バルザンの選択は一つ。



 ()()()()()()()()()()()()()ということである。





 バルザンは使い古した机の上に置かれている、ワインの注がれたグラスを見ながら様々な思いにふけっていた。

 そんな状況を近くで見ていたギーザは、言いづらそうな表情で口を開いた。



 「……罠仕掛けられている気しかしないんですけど……行くんですよね? アニキ。」

 「ああ。この戦争に勝てなきゃ、このル・レンタンの全組合を操ることなど出来やしねぇ。」


 「……そうっすね。手紙をみる限り、【降伏禁止】ですからね。脅しを通り越して殺意満々ッスよ。」

 「火遊びをしていたら、誤って爆弾に火をつけてしまった気分だ。お前なら俺の言うことがわかるだろう?」


 「はい……。」



 ギーザは過去の思い出を思い浮かべていた。

 苦い思い出のみが浮かび上がるばかりであった。


 (【闇商人】という稼業に手を出してはマズいと当分前からわかっていた。でも、20になる前に親を無くした俺達は、名前がなくて真っ当な仕事につけなかった……。【冒険者】……あんな命張っても安い報酬ではやる気もしない)


 元々このギーザという名前は、親から貰った【名前】ではなく【愛称】である。

 バルザンが時間を掛けて考えてくれた愛称だった。


 ※【名前】と【愛称】の違いについては、第1話の冒頭を参照。



 ギーザは複雑な感情を持ちながら一つある提案をバルザンに出した。



 「……モークタンはまだこの首都から出ていない。4()()4()0()()になるまでは外へ通じる門は閉まっているハズ。各方角の門で待ち伏せては如何でしょうか?」

 「待ち伏せ? ……ありだな。土に隠れる可能性も否定出来なくはないが……やれるだけやってやろうじゃねえか。」



 すると、バルザンは数回手を叩いて合図をした。

 時計を一瞬見た後に指令を出す。



 「聞けえぇぇい! 俺達に手紙を出したモークタンを一斉捜索する。今日の()4()()2()0()()までに各方角の門で待機しておけ! 強いモークタンがいた瞬間に捕まえて俺の元に連れてこい! 絶対逃してはならん!」

 「「「バルザン様の仰せの通りに!」」」


 「解散!」




 すると、バルザンと数人を残して他の幹部達は闇の間を頭を下げて出て行った。








 その後は、残った数人でローズの考察を行っていた。



 ローズ・アレナイヌは首をナイフで斬られたようだ。


 一撃死。

 いたぶられて死ぬよりはマシなのだろうとバルザンは目を閉じて少し黙祷する。


 ローズの遺体はこの街の調査隊が現場に赴いているため、回収も弔いも出来ないでいる。


 (ローズをやったのは恐らくモークタン。……だが、単に見られただけで殺すのはリスクが高すぎる。何か見られたくないものでもあったのか?)


 バルザンはローズの死に引っかかりを覚えていたが、結局のところ特に大した進展はなかった。

 調査隊の一般公表が行われるまでは、真相の発見は無理であるという結論を出しただけであった。



―――――――――――――――――――――――



 今日はワゼリスとゴブリン村長が直接交渉をする日である。

 ワゼリスとモークのどちらかが【ル・レンタン組合専用取引所】の連中に見つかってしまうと、モークとノノアが繋いだ手綱をみすみす逃すことになる。


 戦争までの時間は刻一刻と近づいていった。



―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 今……()()4()()()

 お外は真っ暗闇。



 ちょうどノノアさんの治療が終わって治療室から一人で出て来た頃であった。


 幸い俺がいち早く応急処置をした為、それほど重くならずに済んだ。


 流石に戦闘は出来ないさそうな状態だったけど、大事にならなくて良かったのは何よりだね!



 その頃ワゼリスは出発の準備を整えていた。


 何時もの赤いターバンから、青色のローブを被った男魔法使いに大変身である。

 フードのせいで肝心の顔が半分隠れている。


 太っ腹を隠すためにキツく紐で巻いているらしく、ちょっとキツそう……。


 2日前に出したというゴブリン村長と、直接交渉の為に行うのだから寧ろ頑張って貰いたいね。


 ワゼリスだと敵にバレてしまうと面目がつかない。

 そこで、冒険者の振りをして【ゴブリン軍団】の元に向かおうとしているのだ。

 万が一の事を考え、お供に7人をつれている。


 (敵も何かしら手をうってきそうなんだけど……)



 「モーク殿。後20分で出発ですぞ? 仕度は出来ていますか?」

 「その前にちょっとお願いしてもいい?」


 「なんでしょうかな?」

 「僕が泊まってた部屋にあったあのミニ図書館の本、全部貰ってもいい?」



 無茶苦茶厚かましい願いだとは自覚しているけど、いってみなきゃわかんないしね!



 「構いません。ちょうど読む方が居りませんでしたから困っていた所です。……ですが、どうやって運ぶおつもりで?」

 「ココに入れる。」



 俺は口をガバッと開けて頬を動かした。



 「なるほど……モークタンにそんな器官があったのですか? それは初めて聞きましたね。」

 「多分【収納魔法】と似てる。体の中に入ったっていう感触もないし……。」


 「……まぁ、出来るということでしょう。好きなだけ本を持って行って構いませんよ。」

 「さんきゅー!」



 ワゼリスはにこやかな笑顔で俺に勧めた。


 (良し!これで気兼ねなく読書タイムの時間が出来るね!)


 俺はワゼリスの部屋を退出したあと、急いで泊まっていた自室に駆け込んだ。



 そして俺はまるで本を食べるように口の中に吸い込んでいき、7分経った頃には全1200冊弱を体の中に入れていた。

 ミニ図書館はカラになった本棚と、端にたまった埃を残すだけとなってしまった。



 ある意味満足感を覚えてワゼリスの自室に戻った頃には、ノノアさんがいた。


 何時もの黒フードではなく、緑のフードを着用している。

 髪が殆ど見えず、口元も布で隠れている。

 両脇に短剣をしまい込んでいた。


 恐らく【シーフ】という冒険者の区分なのだろう。

 【盗賊】と違う所は、組合に登録したかどうかの違いだけとアイリスがたまたま持っていた本に書いてあった。



 「出発よ。モーク。」

 「オッケー! こっちも済んだよ。」

 「では、外で連れが待っています。……ところでモーク、バレそうに万が一の作戦は覚えて居ますかな?」


 「うん。アレでしょ?」

 「ええ、アレです。」



 俺とワゼリスは少しにやけた。

 ノノアにはにやけている俺達の意図はわからなそうにしていたものの、少しだけ笑みを浮かべていた。



―――――――――――――――――――――――



 ()()4()()1()9()()、ワゼリス率いる偽物の冒険者パーティーは変わった馬車を引いて西()()へと向かった。


 西門は【朱の騎士団】から一番近い門であった。

 ここから馬車で凡そ2()0()()


 全部で8門あったが、下手に動くよりは堂々と行こうという目的もあって西門を選んだ。






 それから3()0()()()、西門付近にある仮拠点に【ル・レンタン組合専用取引所】の男達がたどり着いた。


 ()()()()()()()()3()0()()()()()()()()()()という大失態をしているにも関わらず、西門の責任者は()()()()()()()()()()()でのうのうとしていた。




 彼はフレッドという男である。


 年はまだ26。

 もっとカネが欲しいが為に【ル・レンタン組合専用取引所】に入った貴族出身である。


 実際貴族としての権力は高くない。

 【ル・レンタン組合専用取引所】では「この国では9番目に強い!」と強調して言ってはいたものの、貴族100名中61番目に権力が強いというのが事実である。


 一日平均金貨1枚という給料では気に入らなかったのだろう。それでも庶民からしたら夢のような給料なのだが。

 

 貴族出身による優越感から、暴言や雑言が多数報告されている。

 あまりの言動と独占欲の強さに、この【ル・レンタン組合専用取引所】ですら手を焼く者だ。






 彼は、部下が必死になって持ってきた立派な銀製の椅子に座りながらボスの愚痴を言い始めた。



 「ボスの野郎……この俺様にモークタン探しとかいう、クッソつまんねぇ雑用を押し付けやがって……たかがモークタン如きに俺様を使うんじゃねーっつうの!」

 「ふ……フレッド様、この作戦は組合の今後の幾末を左右するほどの大事な作戦。愚痴は程々にしておいたほうが宜しいかと――。」


 「五月蝿い! 黙れ! お前は誰に向かって指図をしている!」

 「ギャアアアア!」



 部下の諫めにキレたフレッドは、鞘を抜いていない剣で彼の頬を力一杯殴った。


 部下は勢いを制止出来ずに床へ倒れ込む。

 鞘を抜いていなくても威力は大きい。



 「すっ……すみません。私の失言をお許しくだ――。」

 「すみませんと言ったら許してもらえると思ってんのか!」



 必死に頭を付けて謝る部下だったが、そんな慈悲をフレッドは持っていなかった。

 フレッドはさっきと同じく鞘付きの剣で容赦なく叩く。


 周りの人間は恐怖でただただ部下がいたぶられる様子を見届けるしか無かった。






 数十回程殴られた部下は鼻と口から血が出始めている。

 頭は一回り膨張し、これ以上やったら破裂しそうだ。


 そこへ見ていた一人の部下がもっと殴ろうとするフレッドの前に立ちはだかり、必死の覚悟で呼び止める。



 「フレッド様! お待ちください! このままでは死んでしまいます! 怒りをぶつけたいなら私に!」

 「フン! これだから平民は……。良かろう!」


 「……ヴッ!」



 フレッドはお約束通り止めた部下に全力の一発を込めた。


 部下は必死に痛みを堪えようとしたが、かなりの衝撃には耐えられなかった。


 フレッドは殴った鞘付きの剣で止めた部下にそれを向けると、殴った部下に向かって警告を発した。



 「おい! コイツのお陰で助かったな。今日はこの辺までにしといてやる。だが、次は覚悟しておけ。」

 「……ア゛……ガジコマリマジダ。」


 「この愚か者を手当てしてやれ。次は手当てもさせんぞ!」



 フレッドは他の部下に命令すると、近くに備え付けてあった花瓶を憂さ晴らしに叩き割る。


 負傷した部下は他の者達数名に抱えられながら、どこかへ消えていった。



 「おい! 早く酒を持って来い! ったく……面倒な手前かけさせやがって。」



 フレッドは部下が持ってきた銀製の時計を見る。

 時刻は4()()5()9()()

 既に門は1()9()()()に開いている。


 何も事情を聞いていない検問員たちは何時もの規則に則り、厳しい検問を進めている。


 フレッドが彼らに「モークタンがいたら捕まえろ!」という指示と賄賂を出さない限り、検問員はモークタン如き【害なし】と判断するであろう。


 (フン。ここは5時少し前から一気に賑わう場所。こんな所よりももっと辺鄙な東門だろ?モークタンが狙うとしたらな!)


 そんな苛立ちを抑えつつ、フレッドは部下に頼んで指示を出した。



 「誰か、検問員に【モークタンを見つけたら捕らえろ】と伝えてこい。コレを渡せば何とかなるだろ。」

 「私がお伝えに参ります。」


 「うむ。」



 フレッドから金貨5枚を受け取った部下は、急いで検問にいる係員の元へと向かった。




 フレッドの部下は検問員に金貨5枚を渡して指示する。

 此処は冒険者に見られない検問所の裏の為、何をしようが問われる事はない。



 「これは命令だ。通常の検問に一つ新たな規則を追加してほしい。」

 「……何でしょうか?」


 「モークタンがいたら捕らえろ。その時はあそこにある建物まで連れてこい。万が一逃げられたら此方が対処する。」

 「は、はぁ……了解。」



 フレッドの部下は何処かへ言ってしまった。


 (モークタン?確か……()()()()に商人を馬車に乗せて護衛している6人パーティーが、()()()()()()()()をやたら可愛がっていた気が……まぁ気のせいだろ。デカかったし)


 賄賂を貰った検問員は、気がかりな事を思いながらも命令の通り新ルールを追加した。



 「聞けぇぇい! 今から緊急のルールを追加する! この街に人間を恨むモークタンが潜んでいる! モークタンを見つけた瞬間処罰になるので冒険者方は注意するように!」



 検問に並ぶ冒険者は、しばらくの間ザワザワとしていたのは言うまでもない。



 それからと言うもの、検問員達はモークタンが居ないか隅から隅まで必死に探した。

 ()()5()()()()()()()()のだから一切抜かりはない。


 しかしモークタンがいたパーティーは、昼を過ぎても、夜を過ぎても居なかった。




 一体、モークタンは何処へ行ったのだろう?




―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 6人の冒険者に囲まれた一台の馬車。

 馬引きも勿論冒険者である。


 その中には、狭くて硬い銀製の檻の中に入っていた()()()()()()()()と一人の普通の商人がいた。



 12月の朝5時は、凍てつくような寒さと暗さが冒険者の体力を減らしていく。

 そのためこの時間に馬車で出発するには、最低5人以上の冒険者の護衛が必要になってくる。



 ル・レンタンを出発し、野生のスライム達が寒さを無視してのんびり睡眠している草原地帯にいた。

 その頃の俺とワゼリスは、安堵の息を吐いた。


 安堵の余りワゼリスは太っ腹を締めていた布を解き、何時もの赤いターバンに戻っている。


 俺は狭くてキツい檻の中から這い出る事にした。


 (()()5()0()()()()の檻は小さ過ぎるって!)



 「……ふぅ~。余りにも素通り過ぎたので逆に怪しかったですねぇ。」

 「ホントだね。……って言うか僕も()()()()()()()()()()()()()()()()と思ってたんだけど……。」


 「私にも理解できません。()()()()()()()()()()()()()()()だったハズなんですがね……まぁ良しとしましょう。」

 「そうだね! 僕とノノアさんが行き先知ってるから大丈夫だよ。」


 「それはありがたい。……所で道中に危険な魔物は居ますかな?」

 「殆ど居ないね。もし君達でも対処出来なさそうな敵にあったら【テレパシー】で助太刀を呼ぶよ。」


 「安心です。それまではゆっくりしていきましょう。」



 俺とワゼリスは互いに笑いあった。


 どうして俺に違和感を覚えなかったのだろう?

 検問員もちょっとは怪しむと思ったんだけどな……。






















 まぁ、いっか!


 ……と健気に思った俺であった。



―――――――――――――――――――――――



 ワゼリス御一行は、順調に【グルドの森】へと向かっていった。


 時々魔物が俺達を襲おうとしてきたのだが、2800人率いる【朱の騎士団】のトップを張り合うメンバーで編成されたパーティーの前では、マトモに刃向かえる強者は道中に居なかった。


 ル・レンタンを出てから凡そ5時間後、遂に【グルドの森】の東南入り口に到着した。

 現在の時刻は午前10時04分。



 東南入り口の付近では木製の簡易な建物が建設されており、既にゴブリン村長とアイリス、そしてユッケが歓迎の準備をしていた。


 ダークゴブリンのボスは最後の用事で今はお暇している。

 休んでいる訳ではない。



―――――――――――――――――――――――

―【臆病者】アイリス視点―



 「アイリス、アレがもしかしてワゼリスの馬車か?」

 「多分そうかな? 連れている冒険者達が全員結構強い。多分何人かがレベル90以上かな?」


 「こりゃ【朱の騎士団】のオールスターって訳だ。盛大な移動ってことだな。」



 ユッケが平原の奥の方を見て俺に質問をして来た。

 俺の言葉を聞いて多分遠回しに褒めている。




 昨日の夜中。

 全ての戦闘準備を終え、生徒達に回避を教えていた途中にモークからサングラスで通信をして来た。


 どうやら【ル・レンタン組合専用取引所】とやらの組合に、宣戦布告する事に成功したようだ。

 

 予定通り問題なくワゼリスと村長の直接交渉が出来そうと言うので、急いで俺とダークゴブリン達がユッケの指導の元この簡易食堂兼会談所を完成させていた。


 (なんだかんだで、ユッケと村長に振り回されっ放しだな。お陰で体力がかなり付いたけど)


 そんな事を考えていると、馬車がすぐそこまで来ていた。



 馬車は突然止まり、ドアが開く。

 中から赤いターバンのオッサンが姿を表した。


 彼は馬車に設置されているタラップを使ってゆっくりと駆け降りる。


 地面に両足が付いた瞬間、もう一方のドアから何かが出てきた。



 「たっだいまー! 【臆病者】と【孤独人間】と村長さーん!」



 ヤツが俺に目掛けて勢いよく跳ねて飛んできた!

 作戦を実行したモークである。


 ……って()()()



 俺はモークをキャッチしようとしたが、()()()()()()()()()()9()()()()()()()が飛んできたので、捕まえられずに後ろへ押し潰されてしまった。

 回避しようとしてが、モークがデカすぎて全身回避は出来なかった。


 顔を潰されなかっただけマシとしよう。



 「モーク! 重い! 熱い! 早くどけ!」

 「ゴメンナサイ。」



 ゴブリンの銭湯にあるサウナよりも、モークタンのモフモフは結構熱かった。


 体の事を一切気にしていなかったモークは俺の怒りの言葉を聞いた途端、引きずった罪悪感に取り憑かれながらすぐにどいた。



 その間に、ゴブリン村長とワゼリスは握手を交わしていた。



 サングラス、【地獄耳(ヘルヒアーモード)】にしてくれ。



 《了。極小チップ【ミニチャン】の機能使用。【地獄耳】に切り替え。》



 早速聞いてみようか。



―――――――――――――――――――――――

~ゴブリン村長とワゼリスの初会話~



 「ようこそ【試練の森】へ。アナタが来ることをお待ちしておりました。ゴブリン村長です。村長さんと呼んでいただければ幸い。以後、お見知り置きを。」

 「ご挨拶ありがとうございます。【朱の騎士団】団長 ワゼリス・ダートと申します。お見知り置きを。あの時の挑発文の無礼、お許し頂きたい。」


 「構いませんとも。あの程度で腹を立てては、ゴブリンを統べる魔物としては失格ですからなぁ。」

 「アナタ様の様な寛大な心をお持ちになれば、さぞ魔物達もご安心でしょうなぁ。」


 「ホッホッホ! アナタ様も優しいお方ですなぁ。通りで2800名がアナタ様について行くのですなぁ。」

 「お褒め頂きありがとうございます。」


 「さて。此処では足の底が冷える事でしょうし、あそこに簡易食堂を設けました。移動致しましょうか。私達が出来る最大限のお料理をご提供致します。」

 「勿論賛成致します。暖かい料理で心も体も、そしてこの()()()も癒されるでしょうなぁ。」


 「ホッホッホッホ……。」

 「ハハハハハッ!」



―――――――――――――――――――――――



 ……なんだかわからないけど、おそらくこのワゼリスとやらも知能は高そうだ。


 ()()()()()()()が聞こえた気もするが、仲が良くなりそうな証だとしよう。




 (それにしても【団長】って凄いな。村長に会うまではオッサンとあんまり変わらなかったのに、いざ声と表情を出すと一気に風格が出て来たな)


 俺よりも大きく、寛大な風格だった。


 (【団長】……か。別に……悪くないな)


 なんだかワゼリスの事が羨ましくなった。

 自分の後ろに2800人も付いてくるのだ。


 俺みたいに皆から【臆病者】の烙印を押された人間が、もしも【団長】になったらそれこそアイツらに見返してやることが出来るのではないか?


 (今は……無理だな。でも、候補として自分の中であげておこう)




 これは、俺が組合の【団長】に初めて憧れた瞬間であった。




―――――――――――――――――――――――

【試練の森】東南入り口の簡易食堂



 ワゼリス達は簡易食堂の中に入った。

 後はゴブリン村長自身が何とかしれくれるらしい。


 中はユッケの魔法によって室温21℃、床35℃に保たれている。

 【室内温暖化】という赤色魔法レベル1の魔法なのだが、俺でも使える。


 だが、これを長時間維持するのは案外難しい。

 相当回数をこなして手慣れている主婦でないと、初回使用では20分も持たない。




 では、暖かい部屋の中の内装はどうか?

 答えは勿論簡素。


 10人が座ることの出来る布の敷かれた円形のテーブルと、端っこに紙とペンが置かれているだけの四角いテーブルが置いてあるだけ。

 後はなにもなし。


 ユッケが何処かから持ってきた窓ガラスで、草原の景色が見える以外は本当に何もない。



 見るからに金持ちのワゼリスにとってはがっかりレベルだろう……。


 ……と思っていたのだが、【地獄耳】で聞いてみると案外気に入ってくれたようだ。

 「少年時代に過ごした懐かしい思い出が思い浮かびますなぁ!」と寧ろ少し涙を流しながら喜んでいる。


 (そんなに気に入ってくれたのか?まあ、嬉しいけど……)


 人の内部は余り突っ込まないでおこう。




 だがモークは別だ。


 ユッケが取り調べた所……なんと昨日、バイキング形式の夕食で1()1()6()0()()()を食べたらしい。


 ひょんなきっかけで大食い大会に発展し、【朱の騎士団】達と競争していたそうだ。


 ……モークはバイキングへ行かせてはダメだな。



 ついでにあのアリスと出会ってしまったみたいで、クロスボウで数ヶ所撃たれたらしい。


 【朱の騎士団】の総意ではなく、個人の暴走なのだとか。


 「模擬戦争の時殺しに来るね★(要約)」とモークに言い残したらしく、結局戦闘は避けられないようだ。

 情緒不安定な人だなとは思ったけれど、モークは【カニバリズム】の禁断症状ではないかと個人的に思っているそうだ。


 (レベル差の理由でユッケを狙うのは考えにくい。そうなると、俺かモークのどちらかが一番最初に狙われるんだろうな。人間優先だからもしかしたら俺か? ……どちらにしろ村長が言っていたあの作戦が実行出来そうだな)


 俺は余りやりたくなかった作戦を発案する事を心に決めた。

 人肉が食べたくて仕方がないのなら、人肉を嫌いになればいい!





 ……とモークとの話しを聞いている間、村長のおもてなしは既に始まっているようだ。


 ゴブリン村長が左の大皿からメニューの品を丁寧に紹介しているようだ。



 ゾンビ牛ロースと旬野菜の特製リンゴソース和え。


 冬カボチャの煮付け。


 シンプルに塩胡椒で味付けした旬野菜炒め。


 ゴブリン達の主食の原点である、バラライ鹿の丸焼き。



 此処までは以前俺達が最初に歓迎された時に食べた品と一緒だ。

 

 ※第50話参照。


 ワゼリス達はまだ説明途中にも関わらず、かなり食べたそうにしている。


 特にワゼリスの目の輝きは凄まじい。

 見辛い窓越しからでも嬉しそうな表情が滲み出ている。


 (よっぽど食べ物に執着があるんだろうなぁ。特訓時代に食べ物しか心の拠り所が無かったから凄くワゼリスの気持ちがわかる。モークほどじゃないけど)


 肝心のモークはユッケの魔法によりこの簡易食堂の中に入れなくなっている。

 滅茶滅茶食べたそうだが放っておこう。


 昨日1160人分食べでもまだ欲しがるのか。



 此処で村長の説明が終了した。

 一部ゾンビ牛の事で話があったが、ゴブリン村長とワゼリスの二つ隣りにいた人物が詳しく説明をし、すぐに納得した。


 ワゼリス達は手を合わせて言葉を発する。



 「【神が与えてくださったお恵みに心から感謝いたします。万物の食材と命に感謝を!】」



 あの時の密偵がやっていた「いただきます。」と同じ様なものだ。


 その後は予想出来るだろう。

 案の定ワゼリス達は小皿に料理を取り分けた後、がっつくように食べ始めた。



 最初に取った料理を見てみると、


 冬カボチャの煮付けに一人、バラライ鹿の丸焼きに一人我先にと言わんばかりの速度で料理を取り分けていた。


 冬カボチャは【シーフ】の職業に近い女。

 丸焼きは意外にもワゼリスである。



 ちなみにモークに女が誰かと聞いてみることにした。



 「モーク。最初に冬カボチャを取った、【シーフ】っぽい服装をきているあの女は誰だ? どこかで見たような気がするんだが……。」

 「あー。ノノアさんだね。僕達が最初に【朱の騎士団】の人と出会った、あの密偵さん。」

 「そう言われれば確かにそうだな! あの時の密偵だ。通りで冬カボチャを最初に取ったんだ。モークに6割ほどぶんどられてたから。」


 「一言多くない? まあ、僕と一緒にあの作戦実行した協力者ってとこ。」

 「理解したよ。」



 って言うかお前、いつの間に友達みたいに呼んでるんだよ!とツッコミたくなった。



―――――――――――――――――――――――

~ワゼリスとゴブリン村長の会話~



 「いやぁ。美味い! まさかゾンビ牛がこれほどの美味とは……私も初めて勉強になりました。」

 「ホッホッホ! ただし分厚い状態ではなく必ず薄く切ってから火を通してください。用途を間違えると猛毒そのものとなりますぞ?」



 此処で突然、ワゼリスが突然ゴブリン村長に向けて【情報伝達】を送る。


 (おいおい、【情報伝達】を人間が持っている事自体、聞いたことないぞ!)


 だが、【地獄耳】は【情報伝達】の中まで覗けるようだ。



 「ハハハハハ! それは大変ですなぁ(つまりその用途を知らない人間に普通のお肉だと言って送れば、誰にも怪しまれることもなく殺せる。そう言うことですかな?)。」

 「大丈夫ですよ(ええ、御名答)。この料理はしっかり加熱しておりますし、ご覧の通り薄切りでしょう(殺したい人間がいるのならば、別に構いませんなぁ。ただし、真相がバレても私達は無関係ですぞ)?」


 「見ればわかります(勿論ですとも)。だから遠慮なくこの様に美味しく頂いておるのですよ(大変御参考になりました、ありがとうございます。では、ゾンビ牛の食べられる詳細と解体方法を教えて頂きたい)。」



 此処からはかなり専門的な話が続いた。


 ゾンビ牛の捕まえ方や解体の方法。

 取り扱いの注意事項。

 寄生虫に感染しないようにする工夫。


 一般の俺には専門的過ぎて、綺麗サッパリ理解出来なかった。

 しかし、ワゼリスが誰かを殺そうとしているのはわかった。


 「送る」と言うことは、多分【朱の騎士団】には入っていないが深い面識がある人物を狙っているのだろう。



 「お! このカボチャの煮付けは素晴らしいですなぁ(なるほど……ですな。ありがとうございます)! 私達が食べる材料に入れたい位です(それでは勝手ですが、【情報伝達】を切らさせて頂きます)。」

 「ありがとうございます。」



 此処でテレパシーは切れた。

 その後は特に【情報伝達】をワゼリスが使うことは無かった。



―――――――――――――――――――――――



 それから40分後。

 デザートであるリンゴと温州みかんを食べながら、2時間程度の直接交渉が始まった。



 ワゼリス側の要求は主に3つ。


 1.木材の調達メイン

 2.【朱の騎士団】本拠地の建設(地下)

 3.今後の貿易相手になろう!



 1と3はスムーズに成立した。

 今後の貿易相手は言うまでもなくメリットが大きい。


 木材の調達は、物々交換で話が決まった。


 ワゼリス側は銀とゴブリンには無い調味料。

 ゴブリン側は木材(今後ワゼリス側が求めるものがあれば、変更する)



 2は村長は拒否した。

 だが、「今の所は何も移り住む予定がありませんので……。」とは言っていたので努力はするのだろう。



 途中、ワゼリス側から意外な提案が追加された。



―――――――――――――――――――――――

~ワゼリスとゴブリン村長の交渉(一部)~



 「村長殿。あなた方は軍事を強化するために教師を雇ったと此方におられるノノア殿から聞きました。」

 「ええ、間違いありません。今や生徒達も先生を追い越そうと努力をし、すくすくと成長しております。あと10日少し経てば先生は此処から去ってしまいますが……その時には既に自主的に取り組んでおられるでしょうな。」


 「そこで、私からお願いがあります。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() 生徒達でも構いません。」

 「それは私も予想出来なかった質問ですね……。うーん、悪くは無いですが……【傷つけない・蔑まない】などという行為をしないと必ず誓ってほしければ私としては構いませんが……生徒達が人間を受け入れるかどうか……。」


 「ダメな理由をお聞きしても構いませんか?」

 「私達は人間によって家族や住んでいた土地を奪われております。先生が人間であったことにより、人間から恐怖を取り除こうとしてはおりますが……そこは()()()()()ですね。今後聞いてみましょうか?」


 「御願いします。」

 「模擬戦争の2日後にまた来てください。模擬戦争で交流の意味を兼ねましょう。その後、彼らの意見を聞いて()()()9()()()()()が出たらアナタ達を歓迎致しましょう。」


 「9割……ですか?」

 「先生は人間であるにも関わらず、1()0()()の生徒達が彼について行くと答えましたよ。本人には一言も言っていませんがね。」



 ちょっと感動して泣きそうになったが、必死に堪える。

 アイツらが……俺の授業を……。

 もっと教えたくなってきたのは言うまでもない。



 「……わかりました。信頼を勝ち取っていきます」

 「譲歩に感謝致します。」



―――――――――――――――――――――――



 結局、そんな形で取引は終了した。


 【朱の騎士団】達を本拠地へ招き入れるのだけは、次の機会に持ち越す事にした。



 ワゼリス達はゴブリン村長とお別れの握手をガッチリ交わした後、ル・レンタンへ帰って行った。


 ワゼリスを見送り終わった俺達は、モークを見つめてこう言った。



 「よーし! モークが帰ってきたことだし、宴でも開いたらどうだ?」

 「おお! それは素晴らしいですなぁ! 早速帰って準備でもしましょう。」

 「いいの? ねぇいいの? 宴?」

 「程々にしろよ。俺達には1160人前を用意出来る量は無いからな。」


 「そうだぞ? お前俺の分までぶんどりやがった事があるからな。あの恨みは今も忘れてねぇぞ!」

 「幾ら先生と言えども、もう少し()()と言うものが欲しいものですなぁ。」

 「程々にするから! ね、村長さん! 宴やろっ!」

 「村長に任せるよ。どうだ?」


 「……無事に戻ってきましたからね、手柄を立てたご褒美の代わりとしましょう!」

 「やった~~~! (め~し)! (め~し)! (め~し)!」



 目を()うるうるしながら結果を待っていたモークは、村長の判断が出た瞬間に今までにない飛び上がりを見せる。

 デカくなったお陰で着地の衝撃風がかなり強くたなびいてきた。



 そんなモークの喜ぶ様見た俺達は、いつの間にか大声で笑っていた。


 モークに与えた作戦は、此処で全て終了した。



―――――――――――――――――――――――

※誤字訂正


検問員に賄賂を送るよう部下に命令時、フレッドがワゼリスになっていました。


申し訳ありませんでした、ワゼリスさん。


※あれれ? フレッドさん、やらかしてませんか?

 大遅刻と部下への暴力でかなり時間を持って行かれましたけど……。

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