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野蛮学校物語  作者: yukke
第3章 運命の人間たち編
68/116

第63話 真と偽の宣戦布告 2. 食べて出会って

―――――――――――――――――――――――

―モーク視点―



 異世界図書館のとある本を堪能していた俺に、扉からノックの音がする。

 4回のノックと共に使用人が入ってきた。



 「モーク殿。夕食の支度が出来ましたのでご案内致します。」

 「オッケー。」



 俺は少し慌てながら読んでいた本を元の場所に戻す。


 (食事から戻ったらまた読もうかな)


 そんな事を思いながら、俺は使用人に連れられて食事の会場へと案内された。



―――――――――――――――――――――――

【朱の騎士団】一般兵士食堂



 使用人に案内された一般兵士食堂は、貴族が使用しているような豪華な作りじゃなかった。


 少し朱の騎士団から離れた所に、木で作られた巨大な教会のような建物の中にあった。



 中に入ると、よくある酒場を出来るだけデカくしてみましたと言わんばかりの光景が見えた。

 あちらこちらでは既にパンと肉にがっつく兵士達が見受けられ、さらにその一部の兵士達にかなり凝視され、ヘンなボソボソ声も聞こえてきた。

 たいしたことはないと思うから聞かなかったフリをしよう。



 「モーク殿の席は此方です。」



 使用人は俺に顔を合わせながらその席のテーブルに何かしらのプレートを置く。


 使用人に案内された席は、兵士達よりも何故か広かった。

 20人前だろうと予測できる分の料理が、既にテーブルの上に全部のスペースを使って置かれている。


 (遠(・)慮(・)な(・)し(・)に(・)食(・)え(・)って事だね)



 「では、この店のルールをお伝え致します。お代わりの際は此方のプレートを持って、あちらにあるカウンターの人に数字をお伝え下さい。」

 「その数字の分の料理が来るってこと?」


 「はい。お飲み物はあちらの10種類の中からお好きなものをお取り下さい。食べ終えたお皿は片付け係が回収致します。」

 「これの制限時間とかはあるの?」


 「この教会が閉まるまでの間は構いません。私の時計であと4時間ですね。」



 俺は使用人の【腕時計】を見る。

 アイリスにちょっとだけ見せて貰ったので、ビックリすることはない。


 だけど、使い方までは教えてくれなかったね。


 とけいにはな(・)が(・)ー(・)い(・)針(・)と(・)み(・)じ(・)か(・)ー(・)い(・)針(・)が付いていて、それぞれに2(・)と(・)6(・)の数字の方向を示していた。

 数字と数字の間に細かいメモリみたいなものが付いているけど何なんだろ?




 ……よくわかんないからいいや。

 別にそんなに興味もないし。



 「ですが、ずっとお食事せずにに此処にいますと、強制的に退出しなければならない場合がございます。また、他の兵士達の迷惑行為は極力お止め下さい。お帰りの際はプレートを入り口の係員に渡してから退出してください。」



 強制的に退出って珍しいなぁ。

 確かに食わない客は店にとってデメリットだからしょうがないけど。


 まあ、とりあえず返事しておこう。



 「ハーイ。退出したらどうするの?」

 「退出後は数分後に別の使用人がアナタを呼ぶので、この食堂の裏側で待っていて下さい。」


 「りょーかい。」

 「では、ごゆるりとお食事をお楽しみ下さい。」



 使用人は入り口の係員と何かを話した後、特に何事もなく退出していった。


 (さあ~て食べるぞ~!!!)


 俺は一人前の料理をじっくりと見つめる。



 黒糖パンと上クラスの干し肉とカボチャスープと果物。

 ……それだけ。


 (まあ、沢(・)山(・)食(・)べ(・)る(・)こ(・)と(・)が(・)正(・)義(・)だしね) 


 ちょっとだけ最上位の食事も食べたかったけど、これでガマンしておこう。



 早速黒糖パンをバクッ。


 ……うまいね。

 フツーにうまいんだけど。


 パンのモチッとした食感といい、程よい黒糖の甘味といい。


 もうちょっと味薄くてパサパサしてるかなーとは思ってたんだけどな~。



 次に干し肉。

 下から2番目の上クラスでも美味しい。


 なんだかんだ言って嫌いじゃないね。


 油身タップリのこの白い部分。

 ち(・)ょ(・)っ(・)と(・)度(・)が(・)キ(・)ツ(・)イ(・)塩(・)味(・)。

 噛めば噛むほど旨味が出てくる赤身。


 (でも、ゾンビ牛かなぁ~。アイリスがくれた最上もヤバかったけど)


 嫌いじゃないけど何故か好きになれないこの味。



 最後にカボチャスープ。

 ……え?


 正直言ってこの食事の中で一番美味い。

 というよりも感動する。


 ゴロゴロと転がるカボチャとカボチャが溶けた濃厚スープ。


 ほんのりと甘くて非常に優しい味わい。

 それらを温かいスープ状にしている。


 (もしもお母さんが蘇(・)っ(・)て(・)このスープ作ってくれたら、俺マジ泣きする自信あるよ……)


 多分兵士達もこの味が好きだろう。

 特に田舎から出て来た人はこのスープに感動するのだろう。



 最後にフルーツ。


 ……うん、フルーツ。

 みかんとりんごとイチゴだね。


 なんだか毛布の中に入りながら食べたい気持ちだね。

 デザートにはアリかもしれない。



 よし、こんな感じかな?

 此処からは一気に食べちゃおう!


 俺は吸い込むように出された料理を食べる。


 一人前完食

 一人前完食

 一人前完食

 一人前完食

 一人前完食

 一人前完食


 兵士達は俺の食い意地に目を点にする。

 めちゃめちゃ視線が気になるが、そんなことは後回しだ。


 ちなみに、一人前完食するのにかかる時間はなんと7秒を切ったらしい。

 一人の兵士がついでとばかりに数えてくれた。



 そして最後の一人前を余裕で完食すると、兵士達からちょっとした歓声と拍手が上がった。



 「おー! モークタンにしちゃあやるじゃねえか。」

 「俺もちょっとアイツと競争しようかな?」

 「ソイツは面白しれぇ! ちょっとした博(・)打(・)とやらも考案出来そうだな!」



 博打という言葉が聞こえてきた。

 単語の意味は理解出来るけど、食い意地の博打を俺とやるのなら無理だね。


 掛かった時間は20人前で凡そ5分。

 最初の一人前をじっくり堪能していたから少し遅れた。



 そして、すぐさまカルナ言語で「注文」と書かれているカードに向かった。


 プレートを係員に出して「20!」と言った。

 テーブルの上に「一度につき上限20まで」と書かれた紙があったので仕方がない。



 「畏まりました。1分後にお料理が届きますのでご自分の座席でお待ちください。」

 「りょーかい。」


 

 その間に、俺は飲み物エリアを見てみる事にした。


 水    (シンプルが一番)

 レモン水 (退屈な日常に新たな刺激を!)

 お茶   (苦味、そして甘味)

 オレンジ (イミルミア帝国産A級使用!)

 リンゴ  (イミルミア帝国産A級使用!)

 ウーロン茶(異世界の飲み物にチャレンジ)

 炭酸水  (ダイエット効果アリ!)

 牛乳   (モー!モー!)

 コーヒー (牛乳と合わせるのもアリ!)

 緑草水  (回復効果アリ!)



 飲み物の説明が書かれた紙に書かれていたものが何ともいえない気持ちに襲われた。


 (何だよ牛(・)乳(・)の(・)モ(・)ー(・)!(・)って……)


 牛(・)乳(・)の(・)説(・)明(・)書(・)に(・)釣(・)ら(・)れ(・)た(・)俺(・)は、結局牛乳を木製のコップに4割ほど入れる事にした。

 牛乳とコーヒーを合わせると美味しいと言われたので、コーヒーも更に4割入れた。



 自分の席に戻ると、既に20人前の料理が置かれていた。

 多分食べ終えた奴は係員が回収したのだろう。



 俺が席に着いた途端、突然3人のゴツイ男が近付いてきた。



 「オイモークタン! 随分派手に注文してるが……俺達と一勝負しねぇか?」

 「勝負?」


 「大食いの勝負だ! テメーの食い意地を見てたら、なんだか勝負がしたくなってなぁ。」

 「俺達は一応、この地区の大食いで賞をかっさらっている。いわゆる【フードファイター】ってやつさ。」

 「ふーん。……って事は大食いには慣れてるんだね。」


 「そう言うこった。ちなみに、ルールは単純。1時間以内で何人前頼んだかを競うってやつだ。ち(・)び(・)っ(・)子(・)にもわかる簡単なルールだろ?」



 俺を少しばかり煽っているけど、そんな程度の煽りでは俺を怒らせる事は出来ないね。

 俺がちょっとキレそうになった相手は今のところユッケと一(・)部(・)の(・)人(・)間(・)だ。


 ユッケはちょっかいをかける煽りが上手なだけなんだけどね。



 「いいよ。3人纏(まと)めて掛かってきて。20人までなら勝負するよ(20人相手なら余裕っしよ)。」

 「なんだと? 自信があるのか?」


 「うん。負ける気がしない。」

 「20人分のハンデがお前にはあるぞ?」


 「別にたいしたことないね。ついでに本気だして君たちの出鼻を挫(くじ)いてあげるよ。なんならコレのカウントもなしにしてもらっても結構だね。」



 俺は強めの口調で攻めた。

 3人は怒りと言うよりも恐怖で若干震えている。


 (本当なら10倍ハンデでも勝てるんだけど……そうなると流石に冗談が過ぎるしね)



 「よし。やってやろうじゃねーか! オイテメーらの中で食い意地がある奴はいるか! あと17人早く来い!」



 男は怒鳴り声に近い大きさで声を張り上げる。

 当然、怒っている訳でもなく此処にいる皆に聞こえるように大きな声で募集を出したまでだ。


 数分後、17人の男女が集まってきた。

 大半が朱の騎士団に所属している【フードファイター】の面々らしい。


 それでも行ける。



 「よっしゃー! そこら辺にある席を繋げろ! 俺達とモークタンが対面になるように頼む。他の者は自由に掛け事や食事を囲んだ範囲外で行え!」



 すると、すぐさま兵士達はテーブルを繋げ始めた。


 俺のテーブルの右に同じ大きさのテーブルが繋げられた。

 俺が座っていた元の席が20人用の席だったから……コレで40人用の席になったことになるね。


 そして、俺の正面には8人用の席が5つ繋げられている。

 僕に挑戦する20人が、4人5組に分かれて食べるつもりだね。



 それらを四角形で囲うようにテーブルが置かれた。

 これが、範囲を示しているのだろう。


 範囲外を良く見ていると、兵士達が掛けをしている。

 勝つ予想に金を出し合っていた。


 あとで気がついたのだが、ちょっとした違う掛けもしていた。


 最終的にこんな倍率になった。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



掛けの詳細


どちらか勝つか?


モークタン 5倍

人間20人  1.25倍


どれくらい食べられるか?人間の場合


  ~99 0倍(誰も掛けていなかった……)

100~199 1533.7倍

200~299 1153.2倍

300~399 731.6倍

400~499 106.8倍

500~599 67.9倍

600~699 19.3倍

700~799 3.3倍

800~899 1.6倍

900~999 2.9倍

1000~   4.7倍  


どれくらい食べられるか?モークタンの場合


  ~99 6.6倍

100~199 7.9倍

200~299 13.4倍

300~399 9.4倍

400~499 3.5倍

500~599 1.9倍

600~699 4.4倍

700~799 8.3倍

800~899 34.6倍

900~999 57.9倍

1000~   101.8倍  


数字は(人前)



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 ちょっと俺が不人気なのは気に食わないが、仕方がない。


 実力が全くわからない俺より、賞をとっている人間を選びたがるのは当然。

 安全な掛け方なのだろう。


 ギャンブラーは、石貨1枚の少額から銀貨まで掛けたりしていた。



 途中誰かがとある場所にそこそこの大金を掛けてどよめいていたが、そんな事は気にしないでおこう。



 「よーし。モークタン、念の為に確認しておこう。俺達20人とお前の勝負だ。お前にはそこにある20人前を食べてからカウントをとる。一時間の間にどれだけ食べられるかの勝負だ。わかったな?」

 「オッケー。」 


 「よーし! じゃあ誰か合図を頼む。」

 「はい。では………………始め!」



 中央に立った男が合図を出した。

 20人は一斉に急げ急げと食べ始める。


 そんな中俺は……。



 「いただきます。」



 という食材に関わった人やその食材に感謝を込めた後、食事を始めた。


 (最初に食べる前にいただきます忘れちゃったけどね……)


 心の中で自分の失敗を若干後悔しながらも、勢い良く食べ進める。




 掛けているから応援をしたくなったのだろう。

 俺側と人間側に別れて応援合戦をしている。


 本来ならば此処で強制的に退出される可能性が非常に高くなるハズなのだけど、何故か係員は動きもしない。

 寧ろ俺達のなりいきを遠くから達観していた。


 (しれっとこの大食いが認(・)め(・)ら(・)れ(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)た(・)ってことだね)


 俺はそんな事を考えながら出されたハンデの残りを食べていった。





 





 「40人前追加お願いね。」

 「オイ! コッチに追加8人前だ!」

 「私のテーブルも8人前追加お願いします。」

 「俺達も8人前追加だ。」



 大食い参加者達と俺は、凄まじい注文が相次いでいる。

 ちなみに一度に追加注文できる限度は、俺が40人前で人間は各席毎に8人前。


 限度は20人前だったハズなんだけど、係員達がこの大食い大会を認めちゃったから一気に40人前まで頼めるようになった。


 そんな追加注文でプレートを一々持って行くのは面倒だと、勝負開始前で騒がれていた。


 そのため、不参加者達の一部がプレートを担当の係員に渡すという方針で行っている。

 その際、カジノで掛けた側を支援しているね。そうでないと、必ず敵同士で妨害行為が出てしまうからだと思う。



 現在の経過時間は10分。

 現在今まで食べた量は、

 俺が68人前で人間20人が143人前。


 何やら紙と木で作られた即興の対戦ボードが設置されていて、そこに俺と人間側が食べた数字がアナログで書き換えられていた。


 まだまだ俺の腹は余裕なのだが、40人前のハンデを背負わされているためちょっと油断は禁物だね。



 相手も意外にやる。


 特に俺の目の前にいる3人が非常に手強い。

 最初に俺に話しかけてきた3人組だね。


 他のテーブルにいるヤツらとは食べる速度と食欲が尋常じゃない。多分倍以上のスピードで食べてる。


 (人間にしてはやるね~。今はまだ様子見かな?)


 彼等がフードファイターで賞を独占していたという話が、あながち嘘ではないなと俺は思った。







 「俺……俺達はもう無理だ……。」

 「人間側4人失格! これで人間が16人となりました! モークタン、今がチャンスです!」

 「僕まだまだ余裕だね。40人前追加。」

 「……フン! なかなかやるじゃねえか。此方も8人前追加といこう。」

 「8人前追加でお願いします。」



 開始から凡そ17分が経過した頃。

 人間側で最初の4名がギブアップ宣言をした。



 現在今まで食べた量は、

 俺が106人前で人間20人が234人前。

 その差は128人前。

 不参加者の一部は「チクショー! ハズレたか!」という悔しそうな表情をしている。


 最初がギブアップしたから、そろそろ他の席も苦しんでいるかな?


 (そろそろこの辺りから味(・)に(・)な(・)れ(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)て(・)脱落する人間がいるんだよね~)


 まだ勝負に出ない。

 もう少し脱落者が出てからにしよう。








 「ごめんなさい……私達これで限界です。」

 「スンマセン……俺達も無理っす……。」

 「おおーっと、なんと人間側8人失格! これで人間が残すところあと8人となりました! しかし、モークタンと人間の差は既に100人前の差があります! いったいこの大食いはどちらか制するのでしょうか!」

 「おかわり。40人前追加ね~。」

 「クッソ……残り20分を8人で凌ぐしかないのか……。」



 開始から40分。

 残り20分を切った所で、人間側に大きな動きがあった。


 なんと2席同時脱落。


 知らない間にいつの間にか出来ていた司会者が脱落者に理由を聞いた。



 「いったいどういたしましたか? お腹が膨れてしまったのでしょうか?」

 「いいえ……同(・)じ(・)料(・)理(・)を(・)ず(・)ー(・)っ(・)と(・)食(・)べ(・)て(・)い(・)て(・)……気がついたら、なんだか気が遠くなってしまって……ちょっとトイレ行って来ます!」



 答えた男性は口に手を当てるとヨロヨロ歩きでトイレへ向かっていった。

 気になって彼について行った男曰わく、嘔吐だったらしい。


 聞かなくて良かった……。



 現在今まで食べた量は、

 俺が462人前で人間20人が573人前。

 その差は111人前。


 両者合わせて1000人前突破である。


 (此処まで頑張ってきた彼等には非常に悪いんだけどね……今から本気(マジ)でいかせてもらうね。人間と魔物のちょっとした格差とやらを見せつけてあげよう)


 席にあった40人前をアッサリと間食した俺は、座っていた椅子を後にし、席の上へ移動する。


 (俺なんかちょっと大きくなった気がするけど……気のせいだよね?)


 そして人間側にこういった。



 「……じゃあこれから僕のマジの食い意地を見せるよ。」

 「……ほぅ。それで、テメーはこの差を僅か20分足らずで詰めると?」

 「差は100人前だぞ! ホラ吹きにも程がある!」


 「ホラ吹きかどうかは自分の目で理解してね! ……じゃあ受付の人、今度からは一番デカいお皿に料理を全部盛り付けてね。後、料理の注文が滞ると負けちゃうから予め出来るだけの量を用意してね。」

 「は……はい。畏まりました。」



 よし! 勝ったな!

 これが受け入れられなかったら正直ギリギリの戦いを強いられるハメになったけどね。





 数分後、40人前の料理が盛り付けられた大きな皿と大きな杯が俺の席に置かれた。


 大きな皿にはパンと干し肉、何故か彩るようにフルーツが盛り付けられていた。

 赤色の大きな杯はカボチャスープである。


 それを俺はまるで乞食が貪るような勢いでガツガツと食べていき、両方ともペロリと完食した。

 僅か40秒足らずの出来事。



 大食い参加者と不参加者、係員は唖然となった。



 「エエエエエエッ!!!」

 「嘘……だろ……?」

 「おい……この料理40人前だぞ? それをたった40秒で。」

 「オイ! コイツはモークタンじゃねぇ……モークタンの皮を被った【食(・)い(・)物(・)の(・)悪(・)魔(・)】だ!」



 皆ボクに対して酷い言われようだね……。

 これで、

 俺が502人前で人間20人が575人前。

 その差は73人前。



 すぐさま食べた皿は回収され、また40人前の料理が俺の目の前に置かれた。

 俺はそれをまた40秒を切る時間で終わらせる。


 そして、また直ぐに40人前の料理が置かれた。問答無用でそれを40秒で完食した。

 これでアッサリ俺の逆転である。



 俺が582人前で人間20人が576人前。

 その差は6人前。



 人間側は既に諦めムードが漂っていた。

 勿論ギャンブルに参加し、人間側に掛けた者もである。

 彼等には怒りのような感情はなかった。

 圧倒的な力を見せつけられたからである。



 すると目の前にいた3人組の内の1人が突然立ち上がり、味方である人間側にこう言い放った。



 「馬鹿野郎! テメーら! 幾ら最弱のモークタンに負けたからって、人間のすげーって所を見せずに負けるのは流石にどうかしてるぜ! せめて奴に、何(・)か(・)し(・)ら(・)記(・)憶(・)に(・)残(・)ら(・)せ(・)る(・)ような、人間の底(・)力(・)って奴を見せてやろうぜ!」

 「だから……何が言いたいんだよ!」


 「逆転されたからって負けた面してんじゃねぇ! どうせ負けるなら玉(・)砕(・)覚(・)悟(・)で突っ込めって言ってんだよ!」



 彼なりの励まし方に動揺した他の人間側のメンバーは、胸を複数回強く叩いた後に気合いを入れた。



 「っしゃー! どうせ負けるなら食って食って食いまくってやるー!」

 「モークタンの野郎! 人間を舐めんじゃねー!」



 残り15分を切った頃、人間側が一斉にラストスパートと言わんばかりに突っ走ってきた。


 (えっ!全員のペースが最初の時に戻ったんだけど!)


 俺は慌てながら料理を食いまくる。

 「人間のある意味最も恐ろしい所は、最(・)後(・)の(・)最(・)後(・)で(・)信(・)じ(・)ら(・)れ(・)な(・)い(・)力(・)が(・)限(・)界(・)を(・)超(・)え(・)て(・)全(・)力(・)で(・)出(・)せ(・)る(・)。(・)」とアイリスが俺に話していたことがある。


 さっきのは、そ(・)の(・)ス(・)イ(・)ッ(・)チ(・)を(・)押(・)す(・)た(・)め(・)の(・)キ(・)ッ(・)カ(・)ケ(・)だっかのかも。



 でも、40人前を食うスピードは俺の方が断然早かった。

 魔物の食べる速度は人間よりも速い。


 残り時間が刻一刻と迫っていく内に徐々に差を広げていった。



 残り5分。

 俺が815人前で人間20人が701人前。

 その差は114人前。


 此処でこのボードは隠された。

 結果発表で公表されるのだろう。



 でも、何故だか彼等は限界を当に超えているハズなのにペースを全く落とさなかった。


 それ故に俺はギリギリの戦いを強いられているような感覚を感じた。

 余裕のハズなのに負けそうな感覚である。


 (なるほど。コレがアイリスとあの人間の言ってた「人(・)間(・)の(・)底(・)力(・)」って奴なんだね)




 そして、開始から一時間経過した。



 「そこまで~! 終了でーす!」



 司会者が棒で木の板を叩いて終了の合図を俺達に伝えた。

 バンバンという衝突音は俺に安堵の気持ちを与えてくれた。


 両方の不参加者からは盛大な歓声と拍手が上がった。

 あまりの勝負に皆総立ちである。



 ギリギリ最後の料理の大皿を食べ終わった俺は、フゥという溜め息と共に椅子に座……れない。

 ……あれ?


 めちゃめちゃ困惑していると、司会者は不思議そうな表情で俺に言ってきた。



 「……ところであの……モークタンさん? 一時間前よりずいぶんお(・)身(・)体(・)が(・)ご(・)成(・)長(・)な(・)さ(・)れ(・)ま(・)し(・)た(・)ね。食べてから非常に短期間で成長出来るのは、私事では御座いますが非常に羨ましい限りだと思います。」

 「……えっ? ちょっと待ってナニコレ?」



 なんと俺の体が一時間前よりも体積が9(・)倍(・)以(・)上(・)になっていた。

 横3倍。身長3倍の超デカサイズである。


 多分食べ過ぎ。

 いや、間違いなく食べ過ぎである。


 人間は誰も俺がデカくなった事に突っ込まなかった。

 人間が食い過ぎるとお腹が膨れるのと同じ原理だとと勝手に解釈した気がする(そもそも俺本人もデカくなる理由がイマイチわかんないんだけど)。


 (やっちゃった~~。これノノアさんからの説教確定カモ……これから隠密で敵軍の陣地前まで秘密裏に行くのにコ(・)レ(・)はダメでしょ……)




 結局は俺の勝利だった。

 記録は

 俺が1160人前で人間20人が786人前。


 掛けの結果も公表された。


 単勝 

 モークタン 5倍

 人間予想

 700~799 3.3倍

 モークタン予想

 1000~   101.8倍  




 大記録である。


 ちなみに人間側は最後の力を最後まで振り絞った。

 その後、ト(・)イ(・)レ(・)へ(・)直(・)ダ(・)ッ(・)シ(・)ュ(・)して嘔吐の連続だったらしい。


 誰も敵側を恨むことはなかった。


 間違った場所へ掛けてしまった人も、



 「掛けは負けたけど、その代わりにいいもんをこの目で見れた。ある意味幸せかもな。」



 と言って満足しながらこの店を出て行った。


 後で知った事だが、俺の予想である101.8倍を取った人物が判明した。

 昼過ぎに俺と戦ったあのパーティーのリーダーである。

 どうして俺を支援したのだろう?

 ……まあいっか。



 俺はプレートを出入り口にいる係員に返すことにした。

 俺が立ち去る時、後ろからは「ありがとなー、モークタン!」という声がちらほら聞こえたので、



 「今度大食い大会が出たら呼んでね!」



 と返して堂々と退出した。



―――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――

【朱の騎士団】一般兵士食堂・裏口付近



 上空を見ると、綺麗な夜空が出ていた。

 幾千もの星が浮かび上がっている。


 これだけで時間を潰せそうだが、あと数分で使用人の迎えが来るハズだ。




 現在、俺はデ(・)カ(・)い(・)。

 幸いここはル・レンタンの少し外れ。


 特別な日には街の人達がこの食堂の料理を食べにくるのだが、今はなんてこともないフツーの日。


 (此処が街のド真ん中ならマズかったね……ただでさえ人々は俺達の事を根っから嫌うのに、デカい奴がいたら大事だよ?)


 そのやらかしを自分でしてしまったことにちょっと後悔する。


 (う~、ノノアさん絶対俺に説教するよね~。「……モーク殿、後で処(・)刑(・)部(・)屋(・)(やらかした兵士や官僚を殺す場所を【朱の騎士団】がそう言うらしい)に来て頂戴。」とか言いそうだし…………ん?)


 俺がノノアさんからの言い訳を真剣に考えていたその時、とある方向から妙な視線を感じ取った。


 ……マジで強い。

 ユッケという程じゃないけど俺よりもレベル50以上は間違いなく高い!


 (しかも……殺意がヒシヒシと伝わってくるんだけど……これは下手な発言したらダメだね)



 「……そこにいるのは誰かな? 返事して出てくれると僕としては非常に助かるんだけど……。」



 俺は視線の方向を振り向き、相手を決して怒らせないようにやんわりとした態度をとる。



 「へー、気付かれないように驚かそうと思ったけど、意外と探知能力はあるのね。ふっしぎ~! 私、モークタンがそんなの持っているなんて初めて知った~。」

 「……えーっと……ちょっとした特技かな? 色々あって色(・)々(・)あ(・)っ(・)て(・)習得したって言うか……そんな感じ。」


 一般食堂の影から出てきた相手は、12~3歳の少女だった。


 

 おさげにされた金髪の髪型。

 所々が妙に赤黒い黄色のフードを被り、そこからさらに青色と赤色を基調としたメイド服に近い服を着用しているね。


 もしかして……コイツがあの例のアリスちゃんかな?



 「……アナタの名前はアリスさんですか?」

 「え? 私の名前知ってるの? えらいね~!」



 アリスは俺のおでこを激しくナデナデする。

 間違いなく年下の割には、妙に上っから目線の態度をとっている。



 「……で、何をしに俺を見てたの?」

 「あなたが【ゴブリン軍団】の使者だと脅(・)し(・)た(・)密(・)偵(・)から情報を得たから~、ついでに顔を拝んでおきたかっただけ~。殺して食べちゃうつもりはないから安心してね。」


 「……ああ、そうっすか。それは有り難いね。」



 味方脅して情報を得る奴なんて普通有り得ないんだけどなぁ。


 (多分コイツ、【朱の騎士団】から煙たがられているのかな?例の【カニバリズム】とやらで。コイツだけ情報を隔離されていたカモね)


 すると、アリスが俺の体全体をみて首を傾げる。



 「それよりも君、普(・)通(・)の(・)モ(・)ー(・)ク(・)タ(・)ン(・)よ(・)り(・)お(・)っ(・)き(・)く(・)な(・)い(・)? 確かもっと小さくてい(・)じ(・)め(・)た(・)く(・)な(・)る(・)くらいだったんだけどな……。気のせい?」

 「気のせいじゃないね。そこの料理でちょっと食べ過ぎちゃって……。」


 「へえ~。モークタンは食い過ぎるとそうなるんだ~。」



 ……い(・)や(・)そ(・)こ(・)は(・)も(・)う(・)ち(・)ょ(・)っ(・)と(・)反(・)応(・)し(・)て(・)よ(・)!と言いたくなったのだが、仕方なく心を落ち着かせることにした。

 でも、アリスさんの目の高さ位まで大きくなっているのはどうしよう……。



 「……で、どれくらい食べちゃったの?」

 「1160人分くらい。」



 俺がそう言った途端、アリスが急に仰け反る。



 「ウソ!? それは……すっ、すごいね……。」

 「あの……大食い大会やってたから、何時もより食べ過ぎちゃった……。多分それのせいでこんなにでっかくなっちゃったけど。」


 「そうなんだ~。モークタンの自慢話が増えたね!」

 「ああ、ありがとね。」



 俺は戸惑いながらも礼を言う。


 彼女の心の奥底に秘めている何かが全くわからなかった。

 化けの皮を被っているのかもしれないね。


 (なんだかお(・)世(・)辞(・)っていう顔してるんだよな~。本心から言っている気が全く伝わって来ないんだけど)


 いっそのことふっかけてみよう。



 「えーっと……言いづらいんだけどさ、アリスさんって【カニバリズム】だよね?間違ってたらゴメン。」

 「そうだよ。別にキミに隠す気もないから遠慮なく話しちゃうけどさー、結構【カニバリズム】の禁断症状で悩んでるんだよねー。」


 「なんで【カニバリズム】になっちゃったの?」

 「食べるものが無かったからって言う感じかなー。人(・)間(・)っ(・)て(・)極(・)限(・)に(・)追(・)い(・)詰(・)め(・)ら(・)れ(・)る(・)と(・)何(・)で(・)も(・)食(・)べ(・)ち(・)ゃ(・)う(・)んだよ。ムカデやミミズやゴキブリでもさ。」



 あー。

 そう言う理由か。


 なんとなーく彼女の事情がちょっとだけ理解出来た気がする。



 「僕は何で食べないの?」

 「まだ食べた料理を消化仕切れてないからねー。」


 「じゃあ消化したら?」

 「その時にたまたま私と出会っちゃったら……覚悟してね。スライムより身がプルプルしてそうだから……デザートとしては美味そうだし。」



 アリスは濃い舌なめずりをする。

 人間からしたら非常に魅惑的な行為なのだが、彼女の本当の目的は全く違う。


 物(・)理(・)的(・)に(・)食べたいのだ。


 (つまり……生かされている状況とあんまり変わんないじゃん)


 このままではアリスの単独行動が現実になるのは間違いない。

 下手をしたら命の奪い合いである。



 「あの……僕達の模擬戦争の時も仲良くしようよ。それができた……。」

 「黙れ。」



 すると、アリスがフードの中から弓のようなものを取り出して俺に構えてきた。


 クロスボウである。


 さっきまでのやんわりの態度から急変して殺意を剥き出しにしている。

 地雷を踏んでしまった……。


 何やら赤色のオーラのようなものがアリスから見えているが、取り敢えずそれを向けた理由を聞くことにしよう。



 「え? どうしてそれを向けるの?」

 「……フフッ。人間に虐殺される運命のウジ虫(モークタン)如きに、私が頭を下げて気を伺う必要は無かったわね。」


 「……(なるほど。間違いなく模擬戦争の時は俺達を殺しにくるね。それにしても情緒不安定だなー)。」

 「それに……キミ達には悪いけど模擬戦争の時は殺しにいくねー。負けたら私が内臓もろとも食い尽くしてあげる。和平交渉なんてく(・)だ(・)ら(・)な(・)い(・)考(・)え(・)を私に提唱しないでくれる?」


 「皮肉な事言うけど、血(・)の(・)気(・)盛(・)ん(・)だね。」

 「ウジ虫に皮肉を言われても踏み潰せばいい。」



 俺とアリスはビリビリムードである。

 何かの拍子で戦闘していまいそうだ。


 すると、意外な言葉をアリスが放った。



 「アナタも皮肉だねー。ア(・)ナ(・)タ(・)の(・)両(・)親(・)が(・)モ(・)ー(・)ク(・)タ(・)ン(・)じ(・)ゃ(・)な(・)く(・)て(・)別(・)の(・)人(・)間(・)なら、こんな理(・)不(・)尽(・)な(・)モ(・)ー(・)ク(・)タ(・)ン(・)生(・)活(・)し(・)な(・)く(・)て(・)済(・)ん(・)だ(・)のにねー。姉とか妹さんは人間によって殺されたのかなー。」

 「……今なんて言った?」


 「『アナタも皮肉だねー。アナタの両親がモークタンじゃなくて別の人間なら、こんな理不尽なモークタン生活しなくて済んだのにねー。姉とか妹さんは人間によっと殺されたのかなー。』って言ったよ。それが何なの?」



 俺は堪忍袋が少しだけ破けた。

 そして、アリスに怒鳴りつけた。



 「俺の両親をバカにすんじゃねぇ! 俺はモークタンに生まれて後悔もしてない! テメーみたいな人間がそんな考えを持っているせいで、俺達はこんな生活を強いられているんだ!」

 「こんな状況で良くそんな口を叩けるねー。そんな悪い子にはお仕置きしちゃおうかなー。食らえ! アハハハハハ!」



 アリスは狂気の笑い声と共になんとクロスボウを一発発射した。



 凄まじい速度で飛んできた矢は、俺の右頬辺りにズブっと刺さった。

 緑色の俺の血が流れているが、少量なので気にしない。


 幸い俺の体の特性上、矢はそこまで深く刺さらなかった。

 ちょっと重い軽傷と言っておこう。

 だけど、頬辺りに痺れるようなジンジンとした痛さを俺の神経が敏感に感じた。



 やってくれたなー、アリス。

 しかし、アリスは俺のケガを指差ししながら狂ったように笑っている。


 やり返す事が出来ない。

 もしやってしまったら……彼女が本気怒ってしまい、俺を10秒かからずに殺してしまうだろう。


 (一般食堂の裏側だからこの光景が気付かれる事は基本的にない。けど裏を返せば、使用人が来るまではずっ我(・)慢(・)しないといけない)



 「アハハハハハ! おもしろーい★ 楽しいからもっとやっちゃえー!」



 アリスは左頬を狙ってクロスボウを発射した。


 当然矢は左頬にあたるが、さっき右頬に食らったのと同じ結果をうんだ。


 (クソガキ……。でも、流石にマズいな。)


 サングラス。

 どうしたらいい?



 《安心してください。待つのが賢明な判断です。》



 わかった。



 「じゃあ最後にいっくよー★ せーのっ!」



 狂ったアリスは俺の頭を狙って発射しようとした。

 すると、何処かから大きな声が聞こえた。



 「モーク殿! モーク殿はいらっしゃいますか!!!」



 使用人が来たのだ。


 アリスは肩を落として向けていたクロスボウを下げる。



 「……チッ。今日のお仕置きはこれくらいにしておいてあげる。模(・)擬(・)戦(・)争(・)の(・)時(・)に(・)持(・)ち(・)越(・)し(・)って事で。思う存分殺してあげるから覚悟してね。それじゃあバイバーイ!」

 「ちょ……ちょっと待て!」



 そして、影の方へと向かっていった。

 俺が制止しようとしたが、影の方に彼女の姿は無かった。


 (『持ち越しね』か……俺の両親をバカにした原因は間違いなく【カニバリズム】のせい。コイツを根本的に取り除かない限り、アリスは人間や魔物を殺し続ける。俺達モークタンも災いが起こるね)


 そんな事を思っていると、使用人が俺を見つけたのか走ってきた。



 「モーク殿……! 酷いケガです! 直ちに救急班を……。」

 「別にいいよ。その代わり、回復薬を用意してくれない?」


 「はい! 此方に。」



 使用人は赤色の液体が入った瓶を俺に渡した。

 2本の矢を思いっきり抜っこ抜いて貰った後、後、俺は回復薬を一気に全部飲んだ。


 傷は見る見るうちに塞がり、元に戻った。



 「モーク殿。私が本拠地までお迎え致します。」



 気を取り直して俺は使用人についていった。

 矢は使用人が預かる事になり、ワゼリスに渡すらしい。


 しかし、残念ながら彼女を追及する事は難しいそうだ。

 俺は何とも言えない気持ちになった。



―――――――――――――――――――――――



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【朱の騎士団】本拠地



 部屋に戻った俺は木製の時計を見つめていた。

 部屋に入る直前、セットした時間になると鐘を鳴らす目覚まし時計なのだが、その設定時刻は深夜の1時。


 (……やっぱり今日は徹夜。寝ないでおこう)


 この部屋にあるミニ図書館の本を、隅から隅まで調べたい時間を削りたくはない。

 異世界の本はなかなか見れないからだ。


 今すぐ風呂に入ってソッコーで寝ても、起きるのは多分4時間30分ぐらい後なのだ。



 結局俺は風呂でゆっくり一人風呂をちょっと満喫したあと、本を探る事にした。


 (あ、ノノアさんにちょっと言(・)い(・)た(・)い(・)事(・)があったね。使用人に伝えてもらう事にしよう)


 そして、俺は入り口付近に置いてあるテーブルの上にある紙に書いた。



□□□□□□□□□□



 お願い。


 使用人さん。

 密偵のノノアさんに伝言お願いします。


 内容は、


『ごめんなさいノノアさん!

 食(・)べ(・)過(・)ぎ(・)て(・)体(・)が(・)で(・)っ(・)か(・)く(・)な(・)っ(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)た(・)!(・)

 今回の仕事は真剣にやるから許して!』


 です。

 12時までに宜しくお願いします。


 モークタンのモーク。



□□□□□□□□□□



 書き終えた後、魔法陣が描かれている場所にソッと置いた。


 すると、魔法陣が突然青色に光輝いたと思うと、置いたハズの紙が消えていた。


 (これでOKだね?)


 多少不安になったが大丈夫だと思う。


 (さて、異世界の本をもっと調べようかな。あったら【カニバリズム】も調べたいし)


 全ての用事が済んだ俺は、1時になるまでの間を本に費やしていった。



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~密偵ノノア視点~



 現在の時刻は20時過ぎ。


 夕食を終えた少し後に、私はワゼリス様に呼ばれた。

 運悪くとある重大な用事と被ってしまい、数分遅れている為、かなり駆け足で向かっている。

 場所は昼過ぎと同じワゼリス様の個室である。


 個室のドアについた私は4回ノックした後、扉を開けた。

 中にいたのは、昼過ぎの時と同じメンバーであるロガー様とエリス様。

 そして、ワゼリス様である。



 「失礼します。ワゼリス様。遅れてしまい申し訳ありません。」

 「いやいや。寧ろ此方のかけるタイミングが悪かったようです。それに数分程度なら喜んで許しますよ。」


 「ありがとうございます。」



 一礼をした後、ワゼリスからあの時の結果が言い渡された。



 「結論から言いましょう。モーク殿の予想は全員ハズレだ。そして……奴は1160人前を平らげていきおった。」

 「つまり……白金貨1枚と金貨1枚、銀貨6枚の損害ってことでしょうか?」


 「そうですなぁ。ワンランク上の料理へいかせたら後悔しましたな……。」

 「彼の胃袋はブ(・)ラ(・)ッ(・)ク(・)ホ(・)ー(・)ル(・)てすね。」

 「皆掛けに負けちゃったね。」



 私達は苦笑いしか出なかった。

 報告によると、ひょんな出来事から大食い大会が始まったらしい。


 モークと人間20人の勝負で彼が勝ったのだとか。

 笑うしかない。



 あともう一つ、ワゼリス様を悩ませる事件がおこった。


 アリスがモークをケガさせたらしいわ。

 使用人に常備させている回復薬で何とかなったらしいけど、友好関係を築く上で使者をケガさせてしまったのはいくら何でもマズい。


 ましてやそれが【朱の騎士団】に所属しているメンバーなら尚更。



 「使用人が言うには、モーク殿はそこまで怒ってはいないらしいんだが……本人と【ゴブリン軍団】に向かって謝罪が必要なのは間違いない。」



 ワゼリスは溜め息を吐いている。

 一匹狼のアリスに頭を悩ませているようね。



 「アリスが今日の深夜に行われる作戦を知っていたら、彼女はどの様な行動を取るつもりでしょうかな?」

 「恐らくですが、無視するかと。」


 「何故でしょうか?」

 「……すいません。コレは私の直感としか……。」



 ワゼリス様は両手を組んで真剣に悩んでいる。

 しかし、結局最後まで彼女の予想を正確に言えた者は居なかった。



 「……ゴホン、ノノア殿。こんな状況で済まないが、この作戦を成功させてほしい。何が何でも私達が関わっていることを奴らに漏れたら数千人が路頭に迷うこととなる。くれぐれも頼んだぞ!」

 「この命に代えましても、必ず作戦を成功させます!」


 「……宜しい。キミは仕事の為に先に仮眠を取ってきなさい。」

 「お気遣いありがとうございます。」



 私はワゼリス様と幹部に礼をしたあと、退出した。


 すると、モークの側に控えている使用人が来た。

 モーク殿の伝言を頼まれたらしいわ。



 「『ごめんなさいノノアさん! 食べ過ぎて体(・)が(・)で(・)っ(・)か(・)く(・)な(・)っ(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)た(・)! 今回の仕事は真剣にやるから許して!』とモーク殿は仰っておりました。」

 「……はぁ!?」


 「伝言、確かに伝えました。」

 「……ええ。わざわざ御足労ありがとうございます。」



 私はモークの意図がサッパリわからず、困惑しながら使用人に感謝した。


 ……なんだかよく分からない伝言だったけど、1時になったら全てわかるでしょう……。


 今日はワゼリス様の御意向で、本拠地での仮眠を許されている。

 さっきの伝言で足がほんの少しだけ重くなったけど、結局は部屋に戻る事にした。

 サッとシャワーを浴びて寝るまでの時間は20分。


 木製の目覚まし時計をセットしたあと、何時もの寝具では決して味わえない、モフモフの寝具で仮眠をとった。


 今晩の深夜1時に、【朱の騎士団】の運命が大きく動く。

 その重みは大きくのしかかっていた。



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※数字の並び修正

 タイトル修正

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