第56話 ゴブリンの為に授業を! 【ステータス】騒動
◆◆◆◆◆8日目◆◆◆◆◆
深夜の3時過ぎ、俺とモークはヘトヘトになりながらユッケの鬼指導を受けていた。
今、やっと俺とモークがある魔法を唱えることに成功した直後である。
どうやらこれで授業は終了のようだ。
そして、俺達は我慢できずに地面に突っ伏した。
どっと疲れが出たのだろう。
そして、モークと俺はユッケに吐き捨てるように愚痴を言う。
「ちょっと此処までやるとは聞かなかったよ! ハード過ぎるって!」
「……ユッケ、眠いから今日はずっと寝ててもいいか? 今後の埋め合わせはする。」
「寝るな。だって、しょうがないだろ? お前らだけ【ステータス】を覚えてなかったら恥ずかしくて仕方がないだろ? それに、たった5時間程度でこれを身に付けるのは至難の業なんだぞ?」
そう、俺達は【ステータス】を覚える事に苦労していたのだ。
昨日の夜10時、「お前らにどうしても習得しないといけない魔法があるから来てくれ。すぐ終わる。」とユッケに誘われ、それからずっと【ステータス】の魔法をぶっ通しで覚えさせられた。
どうやら俺も明日のユッケの授業に参加しないといけないらしく、そのための【ステータス】なのだとか。
上級者が1ヶ月かけてやっと覚える代物を、俺らは強制的に僅か5時間で覚えさせられた。
確かに凄いことなのだが、そんな事よりもとっとと布団に入りたいものである。
「って言うか、何でゴブリン達には優しくて俺達には滅茶苦茶厳しいのさ!」
「多分お前らはハードな計画をたてたら直ぐに覚えるかな~と思って。お前らは今まで過酷過ぎる経験を積んできたし、ゆるーくやれば怠りりそうだったから。」
「おまえの勝手じゃん!」
ユッケの自分勝手な思考にモークは、突然地面から這い上がり、ユッケに不満を言いまくる。
「直ぐ終わる」と言われて5時間も経過したら、心が鬼になるのは当然の事である。
そして地面から起き上がった俺はモークと一緒に全力でベッドに駆け込み、わずか1分で眠りについた。
ユッケ曰わく、俺達が「死んだ魚のような顔」をしながら深い眠りに落ちていたらしい。
そして、その日の朝。
あれから少しグッスリと寝た俺は、定刻通りに起床する。ついでに、まだ寝ていたモークを無理矢理起こした。
ホントは寝かせてあげたいのだが、ユッケが強制的に叩き起こしてきそうで怖かった為、仕方無くするしかない。
ぐずるモークに色々説得していた所、案の定彼が突然ドアを開けて大声で叫ぶ。
「おはようございまーーーす!!! ……ってあれ? ……起きてたのか。何だよ、折角大声で飛び起きさせようとしたのに。」
俺とモークがビックリしている顔を見たユッケは、少ししょんぼりして扉を閉めてどこかへ行ってしまった。
バタンという扉の閉まる音が俺達を静かにさせる。
また二人になった俺達は着替えのついでに、ユッケの事について語ることにした。
「ユッケ、何だか楽しそうだな。」
「ホントは仲間とつるんでいたかったんじゃない? 1000年も孤独に過ごしてきたら流石にそうなるよ。幾らレベルが高かろうとさ。」
「確かにそれは言えるな。俺は10年近く孤独だったが滅茶苦茶キツかったぞ。それを100回も味わうんだ。」
俺は今までの特訓を振り返り、複雑な気持ちになる。
あんな事をあと99回繰り返せと言われたら、ノーと即決するだろう。
まあ、そんな事は絶対起こらないだろうと思いながら、俺はユッケに教わった【ステータス】を使ってみる。
ユッケの授業中に【ステータス】が突然使えなくなりましたなんて事を避けたいのだ。
まあ、魔力を使わない魔法なのだから
「【ステータス】!」
俺はそう言うと、ステータスウインドウ(ユッケ曰わく、ステータスを見る画面)を軽く見てみることにした。
【ステータス】名前無し(現愛称 アイリス・オーリア)
レベル 39 ランク C
体力 767/767
魔力 290/290
攻撃 427/427
防御 233/233
早さ 723/723
速度 8.5/8.5
当会心 9.125/9.125
回避 56/56
当回避 56/56
総回避 80.64/80.64
残血液 4000/4000(200)
経験値 72480/500000000
次 72480/77000(4520)
恐らく、幾つかのステータスがあがった気がする。
ボスとの戦闘だろうなと何となく推測できる。
そして、俺に釣られるようにモークも【ステータス】を使用する。
【ステータス】名前なし (現愛称 モーク)
レベル 34 ランク D
体力 492/492
魔力 188/188
攻撃 174/174
防御 296/291
早さ 482/482
速度 3.875/3.875
当会心 8.75/8.75
回避 35/35
当回避 30/30
総回避 54.5/54.5
残血液 8000/8000(500)
経験値 71952/500000000
次 71952/77000(5048)
レベルも上がっていないハズなのに、何故か体力と魔力が大幅に増加していた。
恐らくこれもユッケが教えてくれるだろう。
俺達は何時ものようにゴブリン村長と朝食をとる。
すると、ゴブリン村長が一つ気がかりな事を質問する。
「アイリス殿。穴掘りの現状はいかがでしょうか?」
現在、モークがあの強力な隠密系のスキルや魔法を覚えて以降は1メートルすら掘っていなかった。
だが、実はユッケがコッソリとやっていてくれていた。
そのおかげで、あともう少しで温泉がででくる所まで近づいたのだ。
「現在の最深は2400メートルです。2800メートルほどで温泉が出るかと思われます。」
「あと数日と言うことで構いませんね?」
「ああ、そうですね。だいたいそれぐらいでなんとかなりそうです。到達するまでに何も起こらなければ幸い何ですが……。」
「構いません。しかし、アイリス殿は人間。ここにきてからおよそ一週間少しがたちましたが、風呂はいつお入りに?」
俺は少し苦い表情をしたあと、ヘンな言い訳が出来ないと思ってハッキリと答える。
「入ってません。」
「……そうですか。……もしかして風呂が完成してからでしょうか? 本当はアイリス殿にだけ水風呂を用意しても構いませんが……。」
「入りません。自分だけ特別扱いされるのはあまり好きではありません。寧ろ皆で入る風呂の方が楽しいに決まっているじゃないですか。」
「! 大変失礼な事をお聞きして申し訳ありません。」
人間なら俺を見て陰口で「クサッ!」と言って煙りたがるだろう。
そう言う人の心を潰しにくる奴らがこのゴブリン達には居ないことが非常に嬉しかった。
それから40分後、俺達はゴブリン達と混じってユッケ先生の授業を受けていた。
「では、皆さん。最初に能力表示魔法【ステータス】を使用してください。ああ、流石に【ステータス】を覚えていない生徒がいたら隣の生徒に頼んで見せてもらってくださいね。」
なるほど、この為に俺達に5時間もみっちり特訓させられたのか。
((それならもうちょっと早くからやってほしかったな!))
心の中で俺とモークはユッケ先生にそう突っ込む。
「アイリス先生、モーク先生。何か言いたい事はありますか?」
「「いえ……ナニモアリマセン。」」
しかし、実際に口で言うとさらに面倒になることがわかっていた俺達は、そう言わざるをえなかった。
心を読まれていることなどの気持ち悪さは微塵も感じない。
そして、ユッケ先生のステータスの説明が始まった。
俺は自分のステータスを見ながら、ユッケの解説を聞いていく。
【ステータス】名前無し(現愛称 アイリス・オーリア)
レベル 39 ランク C
体力 767/767
魔力 290/290
攻撃 427/427
防御 233/233
早さ 723/723
速度 8.5/8.5
当会心 9.125/9.125
回避 56/56
当回避 56/56
総回避 80.64/80.64
残血液 4000/4000(200)
経験値 72480/500000000
次 72480/77000(4520)
これらを説明するとこのような感じである。
【ステータス】使用者の名前(愛称がある場合は此処に記載される)
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★★★レベル★★★
現在の使用者のレベルを表す。
レベルが上がると様々なステータスが少し増える。
また、一定数のレベル毎にスキルを獲得する事がある。
レベルを上げるには経験値が必要。
ただし、特定の条件によってはレベルが下がる可能性がある。
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★★★ランク★★★
使用者の強さを段階的に表す。
ただし、あくまでこれは目安。
また、冒険者ランク昇格試験(正式にランクを認めてもらえる)を一切考慮していないので要注意。
ランク順は
EX,
S+,S,S-,
A+,A,A-,
B+,B,B-,
C+,C,C-,
D+,D,D-,
E,F,G
の順に良い。
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★★★体力★★★
残り体力と最大体力を表す。
攻撃やケガ(ダメージ)を受けた場合、左側の数値(ダメージを受ける量は、防御力やレベルに比例)が減っていく。
稀に体力 250/300(400)というような珍しいケースがある。
これは、
残り体力/現在の最大体力/通常時の最大体力
を表している(最大体力が減っあり増えたりする可能性もあるということである)。
この体力が0になると死亡する可能性がある。
大抵の生物は、レベルが上がる度に上昇していく(個体、個人差あり)。
ただし肉体の特訓を積んでいた場合は、レベルが上がらなくても上昇する可能性がある(さっきのモークみたいなケースが該当)。
回復手段は緑草または回復薬を摂取するか、数時間休憩をとることで回復出来る。
また、食べ物による回復もある。
すぐに回復に直結する訳ではなく、少しずつ体力が回復する。
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★★★魔力★★★
残り魔力と最大魔力を表す。
魔法を使用することによって、使用した魔力量に応じた分、左側の数値が減っていく。
威力や魔法レベルが高いほど使用する魔力量の数値は高くなっていく。
この魔力が0になると魔力切れを起こし、気絶する可能性がある。
大抵の生物は、レベルが上がる度に上昇していく(個体、個人差大幅にある)。
また、魔力を使い続けることで少量だが上がるケースもある。
稀に魔力を使いすぎると、【魔力暴走】を引き起こす事がある。
―【魔力暴走】詳細――――――――――――
1.一部の魔法が使えなくなる。
2.極端に魔力を消費するか、ほとんど魔力を消費しないかのどちらかになる。
3.全く予期しない場所に魔法の軌道が行く。
4.魔力を一定数以上(個体、個人差あり)連続で使用すると、暴発して死亡する場合がある。
5.稀に意図していなくても、魔法が放たれる可能性がある。
6.例え自分の魔力でも、関係なしにダメージを受ける。
7.治療する方法は、感覚を開けて魔力を消費し続け、持っている魔力を0にする。
8.数時間何も魔力を使用せずに安静にする。
―――――――――――――――――――――――
魔力暴走が起こってしまった場合は、今すぐ戦闘から離脱するように。
回復手段は魔力回復薬を摂取するか、数時間休憩をとることでしか回復出来ない。
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★★★攻撃★★★
物理、魔法の基本攻撃力を表す。
攻撃力が上がれば上がるほど、敵対者に与えるダメージが大きくなる(相手の体力を減らす数値が大きくなる)。
大抵の生物は、レベルが上がる度に上昇していく(個体、個人差あり)。
ただし肉体の特訓を積んでいた場合は、レベルが上がらなくても上昇する可能性がある(さっきのモークみたいなケースが該当)。
現在の攻撃力/基本攻撃力で表す。
まれに魔法やスキル、薬などのドーピングにより、現在の攻撃力が基本攻撃力よりも数値が上の可能性がある。
戦闘時間が長くなるほど、現在の攻撃力はゆっくりと減っていく。
また、敵対者による攻撃減少などの魔法やスキルを受けた場合もこれに該当する。
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★★★防御★★★
物理、魔法の基本防御力を表す。
防御力が上がれば上がるほど、敵対者に与えるダメージが小さくなる(相手の体力を減らす数値が小さくなる)。
ただし肉体の特訓を積んでいた場合は、レベルが上がらなくても上昇する可能性がある(さっきのモークみたいなケースが該当)。
現在の防御力/基本防御力で表す。
まれに魔法やスキル、薬などのドーピングにより、現在の防御力が基本防御力よりも数値が上昇している可能性がある。
戦闘時間が長くなるほど、現在の防御力はゆっくりと減っていく。
また、敵対者による防御力減少などの魔法やスキルを受けた場合もこれに該当する。
会心攻撃を受けた場合は、その防御力は適用されるが、効果は数値の20%ほどになる。
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★★★早さ★★★
使用者の素早さを表す。
早ければ早いほど、移動速度や詠唱スピードなどが早くなる。
また、回避能力も多少であるが上がる。
現在の早さ/基本の早さで表す。
まれに魔法やスキル、薬などのドーピングにより、現在の早さが基本攻撃力よりも数値が上昇している可能性がある。
戦闘時間が長くなるほど、現在の早さはゆっくりと減っていく。
また、敵対者による早さ減少などの魔法やスキルを受けた場合もこれに該当する。
足を負傷してしまうと早さが激減するので注意が必要。
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★★★速度★★★
使用者の攻撃する速度を表す。
早ければ早いほど、相手との一騎打ちでが可能になる。
また、回避能力も上がる。
現在の防御力/基本防御力で表す。
まれに魔法やスキル、薬などのドーピングにより、現在の早さが基本攻撃力よりも数値が上昇している可能性がある。
比較的重い武器を装備していた場合も、同様に減少する。
戦闘時間が長くなるほど、現在の早さはゆっくりと減っていく。
また、敵対者による防御力減少などの魔法やスキルを受けた場合もこれに該当する。
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★★★当会心★★★
使用者が敵対者に向けた攻撃で急所に当たる確率。
数値高ければ高いほど、攻撃を急所に当てることができる確率が高くなっていく。
現在の回避能力/基本回避能力で表す。
基本、余程の事が無い限りは現在の回避能力はほとんど減らない。
ただし、敵対者による会心減少などの魔法やスキルを受けた場合は大幅に減ってしまう。
休息をとるか、素早さを上げる効果を持つ食べ物を摂取するしか回復手段はない。
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★★★回避★★★
敵対者が放った攻撃を最初から完全に見切れる確率。
数値高ければ高いほど、攻撃を回避できる確率が高くなっていく。
現在の回避能力/基本回避能力で表す。
戦闘時間が長くなるほど、現在の回避能力が減っていく。
休息をとるか、素早さを上げる効果を持つ食べ物を摂取するしか回復手段はない。
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★★★当回避★★★
ダメージを食らう攻撃を回避する確率。
数値高ければ高いほど、攻撃を回避できる確率が高くなっていく。
現在の回避能力/基本回避能力で表す。
戦闘時間が長くなるほど、現在の回避能力が減っていく。
休息をとるか、素早さを上げる効果を持つ食べ物を摂取するしか回復手段はない。
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★★★総回避★★★
回避と当回避を合わせた、実質の回避確率。
数値高ければ高いほど、攻撃を回避できる確率が高くなっていく。
現在の回避能力/基本回避能力で表す。
戦闘時間が長くなるほど、現在の回避能力が減っていく。
また回避、当回避と確率が連動しているため、当然どちらかが落ちれば現在の回避能力の数値は落ちます。
休息をとるか、素早さを上げる効果を持つ食べ物を摂取するしか回復手段はない。
今回アイリス先生の最終目標として、この数値が70以上になるように努力すること。
※ただしこの数値は、あくまで統計上の数値であり、実際の回避能力という訳ではないので注意が必要(ユッケ曰わく、参考程度で見ておくぐらいが一番良いらしい)。
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★★★残血液★★★
使用者の体内にある残りの血液量を示している。
残り血液量/最大血液量(生き残れる限界量)
で表し、残り血液量が生き残れる限界量を下回った場合は体力が激減していく。
主に、剣などの鋭い武器で攻撃されると大量の血液が流れやすい。
今まで激しい攻撃を受け続け、大量の血を流した者ほど、生き残れる限界量が少なくなる。
また、食べ物を食べることによって血液量を増やすことも出来るが、こちらも体力と同じように時間が掛かる。
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★★★経験値★★★
今まで貯めた経験値の量を表す。
対象者を討伐または勝利することによって、定められた量の経験値を獲得できる。
経験値がある程度貯まると、レベルが上昇する。
最大レベルは現在不明。
必要経験値も勿論不明(個体、個人差あり)。
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何となくこんな感じの説明をされた。
(今まで気付かなかったけど、俺の残血液の数値優秀じゃないか?端的に言えば、俺の体の中の血があとコップ一杯でも生きていけるということだぞ?)
俺は、自分の残血液のステータスを気にかけていた所にユッケ先生が新たな話題を切り出す。
「……さて、言葉だけ説明してても退屈だから特別に俺のステータスを皆に見せてやる。」
「「「お願いします!」」」
ゴブリン達は興味津々である。
そうである。
一番強いユッケ先生のステータスを気にするのは当然のことである。
「じゃあ見せるぞ? 【ステータス】!」
ユッケ先生はステータスをゴブリン達に見せた。
【ステータス】名前 ユッケ
レベル 283 ランク S-
体力 1436/1436
魔力 5749/5749
攻撃 2604/2604
防御 6341/6341
早さ 2897/2897
速度 29.375/29.375
当会心 35.25/35.25
回避 44/44
当回避 43.25/43.25
総回避 68.447/68.447
残血液 4000/4000(1770)
経験値 27398246/500000000
次 27398246/27684560(286314)
((ユッケの野郎……俺達の知らない間にレベル上げをどっかでやってたな!!!))
俺とモークはユッケに鋭い視線を送る。
すると、気配を察知したユッケは急にそっぽを向いて知らん顔をした。
思い当たる節がおありのようである。
《通達、ユッケ先生は買い出しの最中、とあるダンジョンに潜り込んでレベル上げを行っていました。参考までにどうぞ。それから……。》
言い逃れの出来ない証拠が、次々とサングラスの証言から聞こえてくる。
後でモークとユッケ先生がケンカしている光景が目に映りそうである。
「「「おおおおおおあお!」」」
「ユッケ先生やっぱりすげー!」
「ユッケ先生。素晴らしいステータスですね!」
など、事情を知らないゴブリン達は大賞賛の嵐をユッケに浴びせた。
その後、ユッケ先生から更に詳しく解説してもらい、ステータスの内容はおおよそ把握出来ていた。
隣に座ったモークは、終始ユッケに鋭い視線を常に浴びせていた。
そして、夜。
案の定、俺が洞窟から出るとモークとユッケがケンカをしていた。
いや、今からケンカをしようとしている最中である。
両者木の棒を持ってビリビリとした雰囲気に、俺はタジタジになる。
これは、俺でも止められない。
するとモークが俺の方を見て、マジな顔で話しかけてきた。
「……アイリス。今からちょっとマジで勝負するから見てくれない?」
「別に構わないが……ユッケはどうだ?」
「構わん。勝負を挑まれたら断れない性格でな。」
ユッケとモークは互いに目線をずらさずに俺に話している。
俺が「始め!」と言った瞬間から飛びかかりそうな勢いである。
「まあ、やるんだったらやるでいいよ。……で、ルールは?」
「相手の体をこの木の棒で先に叩いた方の勝ち。ちなみに俺の精神攻撃は禁止らしい。」
シンプルなルールでわかりやすい。
だが、長引くと観戦している俺も退屈なので、新たなルールを追加する事にした。
「よし。相手の体をこの木の棒で先に叩いた方の勝ちとし、モークの精神攻撃は禁止とする。ただし、それにルールを追加しよう。3分以内に決着がつかなかったら第三者である俺が介入してお前らの戦いを止める。」
「「……えっ?」」
ユッケとモークは俺にキョトンとした顔で見つめてくる。
何で?と言われると面倒なので、とっとと始めることにしよう。
回避能力が両者とも俺ほど高くない為、短期で決着がつくだろう。
(もしかしてこの勝負の原因はユッケだな)
理由は幼稚な気もするが、ユッケとモークが本気で戦うのがみたい欲に負けてしまったようである。
「さぁ。ではこれより、ユッケとモークの短期勝負を行う。…………始め!」
「【カゲヲアヤツルモノ】! 自分勝手とセコレベル上げの恨みだぁぁぁ!」
すると、すぐさまモークがスキルを唱える。
そして一瞬のうちにユッケの背後から這い上がり、木の棒を自分の体を駆使して大きく振る。
「危なっ!」
モークが【カゲヲアヤツルモノ】を所得していたのを知らなかったユッケは、なんとかギリギリで攻撃を回避した。
後数コンマ秒遅れていたらかすっていただろう。
回避したユッケは「好機」とばかりにモークに木の棒で叩こうとする。
……が、流石に予想出来ていたらしく、何の問題もなしに余裕で回避する。
一旦前方に逃げたユッケだが、【カゲヲアヤツルモノ】を再びモークが使用する。
ユッケは後ろを警戒するが、なぜか後ろからはびくともしない。
ハッとなったユッケは正面を見る。
するとモークが地面に超高速で魔法陣を書いていた。
慌てて攻撃しようとするが、既に詠唱した直後であった。
「【驚愕する魔力球】!」
モークは理不尽魔法を唱える。
「おお、理不尽魔法か。どこで覚えたかは知らんが、そんなものこうして……大丈夫そうだな。」
モークの放った魔力球は全く検討違いの方向へと飛んでいった。
ユッケは安心してモークの元へ一瞬で向かい、棒を振りかざす。
「食らえ! モーク! 今こそレベルの格差を……。」
「……フッ。【方向転換】!」
モークは魔法陣に追加で数本の線を左右に書いた後、そう言い放つ。
すると、検討違いに飛んでいったハズの魔力球は突然ユッケの背後に向かって襲いかかる。
しかし、ユッケは既に木の棒をモークに振りかざしている。
「もらった。」ユッケがそう直感した直後に、それは起こった。
モークはユッケの攻撃を食らう。
しかし、持っていたハズの木の棒が無くなっていた。
素手で攻撃したのである。木の棒で体を叩かなければこの勝負は意味をなさない。
「モーク、何をした?」
「この勝負ってさ? 木の棒を相手に当てたら勝ちなんだよね? じゃあ、コレで仕舞いだね!」
そう言うと、モークはユッケに木の棒をトンと軽く叩く。
ハッとなった俺はすぐさま宣言をした。
「そこまで! この戦いの勝者はモークです!」
虚を突かれたユッケはポカーンとする。
そして、確認せずには居られなかった。
「つまり、さっきの魔力球は俺が持っている木の棒を燃やす為だったのか?」
「うん。でも、ユッケぐらいになると【驚愕する魔力球】程度は何かしらの対策すると思ったんだ。だからあえてそらした。そうするとユッケはそんな事を無視して僕に攻撃すると思ったんだ。」
「……で、その攻撃中に防御がしずらいのを生かして、俺の木の棒めがけて魔力球を放った訳か。属性は勿論赤色で……か。」
ユッケは諦めたかのようにモークを見つめると、大笑いをした。
「ハハハハハ! 今日も俺の負けだ。全く、つくづくお前の策に翻弄されるよ。明日何か食い物を奢ってやる。」
「さんきゅー!!! 明日までにはちゃんと決めておくよ!」
モークは嬉しそうに何度も飛び上がる。
どうやらこのコンビのケンカの原因は今日の出来事だったらしい。
強制的に【ステータス】覚えさせられた恨みと、ひとりで勝手にレベル上げされたのがモークは気に入らなかったようだ。
で、ケンカついでに勝者する事になった。
ユッケが勝ったら、しばらくの間「ユッケ様」と呼ばないといけない。
モークが勝ったら、迷惑料の代わりとして何かモークの好きな食べ物をユッケが全額奢ると言うものだったそうだ。
……やっぱり幼稚なケンカであったのである。
そして、今日は何時もよりも早く寝る事にした。
ちなみにモークの寝顔は、終始幸せそうな満面の笑みだったという。
※ステータス修正




