第45話 大きすぎる素質、才能の開花
―――――――――――――――――――――――
―【臆病者】アイリス視点―
えーっと、ここをこうして……。
……よし、これでいいかな。
「どう? 終わったの?」
モークが俺に確認しに来た。
「そうだな。ひとまずこれでユッケの治療は終わりかな。ナイフが刺さったままだから最悪流血して死ぬんじゃないかとヒヤヒヤしたけど、防御力が高いからマシな方だったな。」
「まあ、もう当分の間はあんな事はしないよ。」
「レベル差が250もあったんだ。手加減をしたらこっちがやられる。」
「それもそうだな。」とモークが納得した後、俺はあるものを探していた。
(確か……あの時ユッケが捨てた爪の武器があったハズだ。)
ユッケが倒れた場所からおよそ100メートル程に、金色の大きな爪を見つけ出した。
さっそくユッケのところまで運んでいこうと持ち上げる。
(……重っ! ざっと30キロはあるぞこれ!)
軽ければ直接持ち運んでも良かったのだが、流石にこの重さを運ぶのは面倒なため、収納魔法の中にに無理やり押し込む。
そしてユッケの近くで収納魔法を発動し、爪の武器を側に置く。
「あとどれ位待つの?」
ユッケが倒れてから既に1時間が経過している。
俺は戦闘終了直後しばらくは立ち上がれなかったため、【カルッツイロ草原地帯】に横たわっていた。
立ち上がったのは30分前だ。
ユッケが此処で死んでしまうと大変なので、それから治療をした。
(ホントはもっと早く治療すればよかったけどな……)
俺は若干後悔している。
もう少し早く治療していたら、此処まで待つ必要は無かったかも知れないのだ。
申し訳無さそうにモークに言う。
「……すまんがモーク。ユッケが起きるまで時間が掛かりそうだ。幸い此処は【カルッツイロ草原】、基本一部のスライム以外はまず襲ってこない。仮に違う奴が襲いかかってきても、間違い無くコイツより強くはない。」
俺はチラリと一瞬だけだがユッケを見る。
俺を追うようにモークも目を合わせ、「確かにそうだけどさ……暇!」と愚痴を吐く。
「その間にさ、お前はサングラスを掛けて魔法を唱える練習でもしたらどうだ? 魔力があるということは、お前も一応習得出来ると言うことだぞ?」
「干し肉はどうするの?」
「ユッケにも干し肉を渡すときに、お前も渡してやるよ。約束の上級肉2枚だ。」
「オッケー! 僕は魔法練習してくるよ!」
(モークタンって皆がこんな性格何だろうか?報酬の為にがんばるタイプという人間特有の性格を魔物が持つのか。)
モークが歓喜の舞のようにぴょんぴょんと跳ねる。
俺はかけていたサングラスをモークに渡した。
「取り敢えず氷の魔法張っとくから。」とモークに言い、ユッケから7メートル程離れた場所に氷の魔法を唱える。
50センチほどの氷の立方体が出来ていた。
暖冬終期だから、そうそう氷は溶けないはずである(昼だから氷はとけていくけどな)。
サングラスにモークを任せた後、俺は収納魔法からとある本を取り出す。
販売数100本というある意味数少ないレア本なのだ。
数年前特訓に行こうとしたときに、偶然ゴミ捨て場に捨ててあった。興味を持ったから呼んでみたんだが……。
(イマイチ理解出来ないんだよな。この【スキル『自由主張』の秘密】とかいう本。凄いのはよくわかるんだけど……)
ユッケが起きるまでの間、この本を読み解くのに時間を費やしていた。
―――――――――――――――――――――――
【臆病者】から魔法を学ぶ事を推奨されたモークは、サングラスの魔法教育を真剣に聞いていた。
……が、少しだけモークは不満を抱いていた。
―――――――――――――――――――――――
―モーク視点―
…………ねぇ、
申し訳ないんだけどさ。
どうして実習しないの?
これじゃあまるで魔法自体が勉強のようじゃん?
こんな知識を頭に詰め込むより、実際に魔法を唱える練習を積んだ方が早いんじゃないの?
《知識があってこそ魔法を工夫したり、大きくしたり出来ます。魔法の知識無しで魔法を学ぼうとする人間は、そこら辺にいる火遊びしている子供とさほど変わりませんよ?》
言っていることは間違っていないのだが、それでもやる気が出ないのはなぜだろう?
《モークは地道な事が好きですよね?》
まあ、そうだな。
暇つぶしに人間が使うゴミ捨て場で拾った辞書を、丸暗記しようと努力したことがある。
この世界の基本言語である人間のカルナ言語とかいう奴もそれで習った。
だから人間の言葉は殆ど理解できる。
礼儀のマナーとかはイマイチ知らないけどね。
アイリスが町をでるまでの間、かなり暇を持て余していたから出来た話なんだけど。
《恐らくあなたは魔法の知識を無理矢理詰め込むよりも、詠唱しながら学ばせた方が早い気がしますね。》
お?
わかってるじゃん!
《前置きは置いておくとしましょうか? まず周りの枯れ草を抜いて、地面にこの絵を書いてください。》
すると目の前の緑色の世界の中に、魔法陣のようなものが描かれた。
ちゃんとした書き方があるらしく、丁寧に書き順まである。
俺は枯れ草を半径1メートルほど取り除いたあと、近くにあった木の棒でミスをしないように描く。
(これ、ただ円を八等分した形になってない?)
半径40センチ程の円を一定距離の直線で八等分しただけ。
これが魔法になるとは少し考えにくい。
《これが最も簡単な魔法【魔力球】です。ちなみにこれは、自分の体の中に含まれる魔力を集めただけの魔法です。つまり、どの色にも属しません。》
これが魔法?
何にも発動しないけど?
《【詠唱】が出来ていないからです。》
そう言えばユッケが戦う前に見せびらかしてた時、詠唱か何かしてた気がする。
アイリスも俺に魔法教えるために詠唱してたな!
※ユッケの詠唱第32話参照。アイリスの詠唱第31話参照。モークは知りませんが、第44話でもユッケが詠唱していたシーンがあります。
確か、【親愛なる雷の守護者たちよ! この天の空に雷雲を創造し、我が力を天下に見せつけよ! 創造たる天の雷!】とかだった気がする。
※少し抜けてます。第32話参照。
《個人戦での詠唱には、基本的には4パターンの詠唱方法があります。【設置全体詠唱】【全体詠唱】【魔法名詠唱】【無詠唱】です。順番に説明していきます。》
まあ、なんとなくわかる気がするけど聞いておいて損は無い。
《【設置全体詠唱】は、初心者が初めて学ぶ魔法です。魔法陣を地面または空中に描いてその魔法を詠唱すれば、レベル7クラス以外は大抵出来ます。》
でも、高度な魔法であればあるほどめんどくさいんでしょ?
魔法陣描く量が多くて時間がかかるから戦闘には向いてないんじゃない?
《あってます。これはとあるデータですが、ごく一般的な魔法使いがレベル6の黄色魔法を発動するのに4時間掛かったと言われています。さらに、一文字でも間違えた場合はその魔法陣は無効です。また一から描き直さないといけません。しかし、初心者でも慣れれば大抵の魔法陣は殆ど発動できるため、新たな魔法を習得するための第一段階としてよく使用されます。》
なるほど、新しい魔法を覚える
レベル7も行けるの?
《レベル7の魔法は才能無しでは【設置全体詠唱】で使いこなすのは非常に難しいです。また、特殊魔法は【設置全体詠唱】できるものは収納魔法以外ありません。魔法開発専門家達が必死に研究を進めております。》
魔法開発専門家?
《そのなの通り様々な魔法を研究し、それを連想させて新しい魔法を作る人達のことです。その人達の集まりのことを、この世界の人間は【シミア魔法協会】と言います。今のところ別に知る必要はありません。》
ふーん。
魔法開発か……全然嫌いじゃないけど。
そもそも魔物は魔法を開発する専門家でも何でも無いのだが。
いや、将来的には魔物も開発専門家として活躍するときがくるのかもしれない。
《……次に行きます。【全体詠唱】は魔法を描かずに詠唱のみで行う発動方法です。》
サラッと流されたが仕方ない。
夢を長く語るより手を動かせ!
と、どっかの人間の男が子供に言っていたのをなんとなく覚えている。
間違っているどころか正論なのだ。
要は【全体詠唱】からは魔法陣を書かなくていい段階ということか。
慣れてきたら、その方法より上の段階で魔法を習得しないといけない。
《その次に一般的な【魔法名詠唱】です。魔法の名前を口に出すだけで魔法の設置、詠唱を省くことができます。》
ユッケが乱発に使っていたのは【魔法名詠唱】ということか。
ある程度魔法が習得できたら出来るらしい。
……じゃあ、もしかして【無詠唱】ってそう言うこと?
《はい。【無詠唱】は頭に浮かんだだけで魔法を発動させることができます。相当難しい発動方法ですが、直前まで相手が唱えてくる魔法が全く理解できない状況をつくることができます。》
じゃあ、さっきいってた中で、今やっているのは、基本中の基本である【設置全体詠唱】ということか。
《はい。とりあえず、魔法陣はこれで大丈夫なので、詠唱してみましょう。あと、事前にあなたのステータスを表示して魔力が減ったかどうかを確認してみてください。》
すると、緑色の世界から急に言葉がつらつらと表示される。
……まだ【魔力球】という初期の魔法なため、簡単な方だ。
それより、サングラスに言われたとおりステータスを確認する。
すると、そこには自分とは思えないようなステータスが映し出されていた。
【ステータス】名前なし (現愛称 モーク)
レベル 34 ランク D
体力 461/461
魔力 136/136
攻撃 173/173
防御 291/291
早さ 479/479
速度 3.875/3.875
当会心 8.75/8.75
回避 35/35
当回避 30/30
総回避 54.5/54.5
残血液 8000/8000(500)
経験値 71952/500000000
次 71952/77000(5048)
……あれ?
俺、こんなにレベルあったっけ?
レベル34!?
多分ユッケを気絶させたことによる経験値がはいったのだろう。
キッチリ七万か。
(10年かけてやっとまともな魔物のステータスになった気がする)
あのスライムよりステータスが上である事実に、一瞬だが嬉しさがこみ上げる気持ちの良いものを感じだが、それでもまだまだ弱い。
※一般的な目(レベル25)からみたら、このステータスをモークタンが持っていることに恐怖を覚えます。
まだまだ上の奴が沢山いる。
全力で上にのしがってみせる。
どうせなら頂上をとってみせる。
一部の人間達に自分の強さを認めてもらい、二度とモークタンを殺さない条約を作ってもらおう。
俺は心の中で小さく、明るい火を灯しだす。
今まで一人では出来なかった事を今度はアイリスとやってみるのも悪くないのかもしれない。
……あ、ステータスの確認だったっけ?
魔力136。
これってどれくらい高度な魔法が打てる?
《大きな差はありますが、平均でいえばレベル4の魔法一発程で魔力切れです。》
全然足りない!
これってレベル上げなくても魔力上がりましたとかは無いの?
《その魔力を使い続ければ上がるというケースは報告されています。ただし、魔力を0にすると高確率で気絶してしまうので注意が必要です。》
なるほど。
でも、それでもやらなければいけない。
多分このままレベルが上がっても、魔力が少ないままな気がする。
つまり、魔力が切れやすい今の内に気絶しまくるのが一番良いのだ(絶対しんどいな)。
ということで、魔力はそこそこ増えたのがわかった。
サングラスのメガネにいろいろ詠唱文がかかれているので、それを唱えてみる。
「えーっと、【我の身体に眠る力よ、今こそ汝を解き放つ。魔力球】!」
正しく唱えたつもりだが、何故か魔法陣はうんともすんともしない。
(ん~なんか違うなぁ。もっと自分なりにアレンジしてみようかな?)
そう思った俺は、さっきの詠唱文を弄ってみることにした。
数十分間の試行錯誤を行い、パッと思いついた詠唱文を唱えてみる。
「【我の身体に眠る大いなる力よ、今こそ汝を解き放たん。その力を世界に轟かし、我が魔物としての力を人民共に見せつけ、革命の火を灯すがよい! 魔力球!】」
すると突然、描いた魔法陣が眩い光を放ち、そこから7メートル上方に3メートル程の魔力球が出現した。
……デカい。
上出来では無いだろうか?
「出来た~。」
つい、嬉しかった気持ちを漏らす。
(動かして見ようかな?)
多分こうだろうと様々なパターンを割り出す。
上下左右に動かしたり、クルクルと回転させたりする。
しかし、少しカクカクだったのが少し気に入らなかった。
(……もうちょっと自由自在の動きが欲しいな。滑らかな感じにするには……)
そう思った俺はある一つの考えに辿り着く。
それを魔法陣に追加したらいいんじゃね?
俺は光を放つ魔法陣に、木の棒で色々書いてゆく。
すると、とある文字を書いた直後、魔法陣が赤色に光り出し、ただの魔力球から赤色の魔力球に変化した。
……あれ?
失敗しちゃった……。
《!!! モーク、どうしてその文字をミス無しで書けましたか?》
ああ、何となく。
それよりも、教えてくれると嬉しいんだけどさ。
もっとこの魔力球を自分の考えたように自由自在に出来ない?
あと、文字追加しただけなら詠唱しなくていいの?
《……はい。この線からこの文字、あちらの線からこの文字を追加してください。文字追加を行った場合、魔法にもよりますが詠唱の必要はありません。》
オッケー。
俺はサングラスから出た文字をスラスラとかく。
書き終わった後、俺は頭で様々な方向へ魔力球を動かす。
なんと、魔力球が本当に俺の考えた方向へ進んでくれているようだ。
面白い。
なんだかもうちょっと工夫したくなったので、魔法陣に色々追加していく。
うーん、この魔法陣だとちょっと寂しいから次はこうしようかな?
今度はさっき描いた円の中に、4つ円を描く。
円は均等間隔で描き、出来るだけ円の中心を結んだら正方形になるようにしないと気持ちが悪い。
次にそれぞれの円の中に△と▽を重ねた形を描き、周りに色々文字を追加してみることにした。
そして、納得するまで書いてホッとした瞬間、突然魔法陣が光り出す。
それまで赤色だった魔力球が、白色に変化した。
《モーク、魔力が10を切りました。》
すると、流石にやり過ぎたのが災いし、いつの間にか魔力切れ寸前となった。
俺は魔力球を観察する。
3メートルだった魔力球が4メートルになったぐらいかな?
さっきまで赤色だったのに。
《モーク、私はあなたを過小評価していたようです。あなたには魔法の才能は天下一品ですね。》
え?
でも、これ失敗してるじゃん。
一応動かせるけど、折角赤色に変化したのに白色に戻ったらただの魔力球じゃん。
《成功しています。詳細は画面に表示します。》
すると、画面にはその魔法の名称と効果が表示されていた。
■■■■■■■■■■■■
属性 特殊魔法
レベル 下位魔法
★名称★
【驚愕する魔力球】
★ダメージ詳細★
物理攻撃or魔法攻撃
一部弱体化可能
100~3000
★使用魔力★
10~300
★概要★
赤、青、黄、緑、紫、黒、橙、無色の魔力球に何時でも使用者の意志で変更する事が出来る。相手に見せる色も変更可能。
なお相手がその魔法に直撃するまで、魔法の色はわからない。
また、それぞれの魔力球の効果も付与している。
余りにも理不尽過ぎる魔法として、一部の強者冒険者の間では話題。
現在習得方法が今のところわかっておらず、習得者は全体の0.001%未満となっている。
★攻略法★
1.10倍以上の魔力球をぶつける(黒色の場合のみ)
2.相手の心がわかる魔法を使用する
3.気合いで回避
■■■■■■■■■■■■
《つまり、この魔力球はモークの頭に浮かんだ色の魔法になります。また、相手側はその魔力球が当たるまでどの色なのかわかりません。》
例えば俺が赤色の魔力球に変えたとしても、相手からはただの白色である魔力球にしか見えない。
その色自体も赤色や青色に変えたり出来る。
例え相手に赤色とバレても、直前で青色に変えてしまえばすむ話なのだ。
……え?
滅茶苦茶理不尽過ぎない?
魔力さえ込めれば何とかなる感じがする。
《はい。間違いなく理不尽です。その魔法陣は覚えて置いてください。とても希少です。》
何が希少なの?
《特殊魔法を【設置全体詠唱】で詠唱出来たのは【収納魔法】のみと考えられていました。つまり、この魔法陣はあなたが最初に特殊魔法の発動に成功したものです》
ええええええ!
驚愕したのは言うまでもない。
俺はアイリスを急いで呼ぶ事にした。
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――
―【臆病者】アイリス視点―
難解本を読み始めて40分がたった頃、突然モークがデカい魔力球を連れて俺を呼んできた。
「やったぞアイリス! 新しい魔法が出来たぞ!」
「おお、それは良かったな! どれどれ……デカいな。よくやったな、この調子でどんどん魔法を……。」
「それどころじゃないんだ。取り敢えず来て!」
ただ事ではない様子だ。
モークが戦闘中にそんな様子だった事はない。
強烈な慌てぶりである。
念の為目を確認したが、嘘はついて無いのだろう。
ついていってみる事にした。
「アイリス! 今すぐ収納魔法から紙とペンを出して!」
「えーっと、取り敢えず落ち着いて。……それで、どれを書くんだ?」
「この魔法陣。俺が書くから。」
モークの目線をたどると、そこには魔法陣が書かれていた。
(?間違い無く【魔力球】じゃないな。こんな複雑じゃなかったハズ。じゃあ、どうしてモークのデカい奴には色が付いていないんだ?)
俺は収納魔法から暇つぶしに使うだろうと思っていた30センチのスケッチ本と愛用の鉛筆を取り出し、モークに渡す。
受け取ったモークはすぐさま、描かれた複雑な魔法陣を大きく書き写し始めた。
魔力球は魔法陣の上でユラユラと上下に浮遊している。
俺はサッパリ訳がわからなかったので、サングラスに聞くことにした。
サングラス、一体何がどうなってんだ?
《この魔法の詳細はご存知ですか?》
全く知らない。
ただの【魔力球】じゃ無いことはわかった。
何色なんだ?
《特殊魔法です。【驚愕する魔力球】という魔法です。簡潔に言いますと、使用者は何時でも全色の魔力球に変更可能な魔法です。》
……は?
……つまり、俺がさっき回避した魔力球に色をわからなくした奴が飛んでくるという解釈でいい?
《合っています。》
……回避もクソもない魔法だ。
俺はさっきの2000発は、ユッケのヒントはあって、何とかギリギリ回避出来た。
だが、それはどんな色の魔法が飛んでくるのかがわかっていないと絶対に無理な話。
そもそも特殊魔法は収納魔法以外は魔法陣で不可能だと魔法協会でとっくの昔に証明されていた。
それを、モークが魔法習いたてにアッサリとやってのけたのだ。
間違い無く魔法の天才。
さっきの戦闘といい、モークには何か大きすぎる素質か何かがあるらしい。
(これはますますモークの成長を見るのが楽しみだな。)
俺はモークをもう二度と過小評価しないようにした。
「ああ、もう! 何でこんな面倒くさいことしなきゃいけないの? マジで腹立つ!」
……口は過大評価し過ぎたようだった。
モークが魔法陣を写し終わったあと、設置した氷で実験してみることにした。
「モーク、コレがマジの特殊魔法で【驚愕する魔力球】とかいう奴だったら青色の見た目だけど赤色の魔力球が出来る筈だ。一回これで実験してみてくれ。」
「りょーかい。」
モークはそう言うと、4メートルある魔力球を動かす。
(凄い滑らかな動きだな。多分サングラスが自由自在の方法を教えたのだろう)
俺が考え事をすると、突然白色の魔力球が青色に変化する。
(本当に【驚愕する魔力球】なら氷にぶつけた瞬間赤色に変化して溶ける。偽物ならただの魔力球か青色の魔力球な為、凍るか自滅するかの二択。)
俺は魔力球の動きを注意深く観察する。
「じゃあいくよ、食らえ!」
魔力球は氷に一直線に向かって、氷に激しく衝突する。
……。
……。
……あれ?
氷はどこかに消えて言った。
蒸発したというわけではない。
でも、失敗したら形が残っているハズ……まさか。
俺はモークを見る。
「失敗しちゃった。」みたいな顔をしている。
「アイリス、ごめん。間違えて黒色の事を考えてたら本当に黒色になっちゃった。」
黒色の魔法がどんなものか見てみたかったのだろう。
ってことは、さっきの魔法は黒色の魔法だったのでは?
(確かにほんの一瞬だけど、氷とぶつかる直前に魔力球が黒色になったような気もしなくはない。でも、本当に黒色なら回避できなかったな)
「……サングラスを貸してくれないかモーク。」
俺はモークからサングラスを渡され、それを掛ける。
真実を知っているサングラスに確認してみることにした。
サングラス。
さっきの魔法は間違い無く【黒球】だったのか?
《はい。間違いありません。》
これでハッキリした。
間違い無くモークは魔法陣で特殊魔法の詠唱に成功したのである。
「ともかく成功だなモーク。お前が魔法の天才なのはわかった。」
「えっへん! どうよ、俺の才能は?」
「魔法に関しては間違い無くお前が上だな。そこは認めてやる。でも、お前には一つ大事な事を言おう!」
俺が褒めた事によってモークは威張っている。
だけど、何かしらの才能を持つ人だからこそ起こりうる事がある。
俺はモークに教えてやることにした。
「モーク。魔法の才能があるからといって、それを盾にして努力を怠る事をしてはいけない。一生懸命努力してこそ才能はどこまでも伸びていく。どうせなら誰かライバルを作って、互いに切磋琢磨する手もアリだ。」
「でも、頑張ってこの世界の全ての魔法を覚えて極めちゃった先には何があるの?」
「簡単な話じゃないかモーク。自分で一から世界最強の魔法を作り続ければいい。」
「途中で嫌になったら?」
「それはお前の自由でいい。でも、お前には夢があるだろ?」
「モークタンが平和な世界を!」
モークはハキハキと夢を語る。
本当に願っているのだろう。
瞳が澄んでいる。
「だったら、お前が一番叶えたい夢に向かって進んで行けばいい。その魔法の才能を生かして夢を現実に変えないとな!」
「そうだね! 魔法の勉強に興味持ったから頑張ってみるよ。」
モークはやる気に満ちあふれている。
「ヨッシャー! 勉強だ~!」
「え? お前、魔力残ってないんゃ……。」
だが、そんなことはいいと言わんばかりに俺の言葉を無視して木の棒を持つ。
モークは木の棒でさっき魔法陣を描いた後を消し、魔法陣をミスする事なく描く。
描き終わったモークは、
「【我の身体に眠る大いなる力よ、今こそ汝を解き放たん。その力を世界に轟かし、我が魔物としての力を人民共に……】あれ?」
モークは詠唱中、突然フラフラと混乱し倒れてしまった!
多分俺の考えた通りなのだろうが、念の為サングラスに聞いておく。
《アイリス様の思い通り、魔力切れです。》
(ほら、言わんこっちゃない……)
俺は呆れてものが言えなくなった。
※不備(詳細は省略)修正 加筆あり
魔法説明を修正しました。文字の大きさによるズレが解消しました。
ステータスに残血液追加




