第38話 アイリス&モークVSユッケ 5. 精神的ダメージは超強力!?
「そう言えばあなた言ってませんでした? 『アイリスが名付けた【試練の森】で直接戦いを見た』とか何とか。多分そんな事言ってましたよね?」
「……ああ、そうだ。」
「あれ~~~? じゃあ何であなたはアイリスに近付かなかったんですか? あなたの強さならあの【試練の森】の魔物ですらなんとかなりながらアイリスにたどり着けたんじゃ無いですか?」
「そっ……それとこれとは訳が違うだろう!」
ユッケは隠しきれない動揺をしながら反論した。
ここから更に、ユッケに精神的ダメージを与えていかないとステータスの低下は起こらないな。
もう少しで押せそうだ。
「いちいち俺に説明させないで下さいよ~。本当は『人間と友達になったことがないから、取り敢えず明日までに準備してから会おう。』そんな考えじゃなかったんですか? でも全然自分に自信が無かったから、結局今までずっと先延ばしにしてたんじゃないの? でも、今日何かしらの方法でアイリスが旅立つっているのを耳にして、ストーカー行為レベルで監視してたんじゃないの?」
「……。そうです。ジッサイソウオモッテマシタ。」
あくまでコレは俺の仮説だ。
間違っていたらどうしようもないけど……。
しかし、ユッケが最後棒読みかと疑うほど気が抜けて肯定した。
白目を向きながら何故か上を向いている。
魂だけの存在、それくらい放心した状態だ。
そのおかげで、化かし合いは俺に分があるようだ。
取り敢えず軽く勝利したようだ。
(化かし合いは余裕だったな。さあ、後はステータスが落ちてるかどうか確認だな。)
サングラスさん。
ユッケのステータス、前より下がったと思う?
《!!! 明確は数値は今の所解析出来ていませんが、攻撃力は大幅に低下しています。現在のユッケの攻撃力は、最大攻撃力の10%以下だと推測します。》
よし!
精神的ダメージでユッケのステータス削ろう作戦は成功したようだ。
これで大分気持ちが楽に戦闘出来るだろう。
―――――――――――――――――――――――
一方その頃、【臆病者】のアイリスはというと、
ベタベタついてくる魔剣を懸命に回避しながら、モークの煽り合戦を観戦していた。
これまで魔剣をずっと回避してきたアイリスだが、流石に疲れが目立ってきたのか所々軽くケガをしていた。
現在緑草を2枚消費した彼は、モークの言動の理由をサングラスに教えられていた。
―――――――――――――――――――――――
―【臆病者】アイリス視点―
つまりユッケが言われたくないような言葉を連続で浴びせることにより、精神的ダメージをグリグリとえぐり出すのか。
それが原因でユッケのステータスは一時的に落ちるんじゃないか?と考えたわけか、なるほど。
モークはモークで荒いやり方するよな。
《ちなみにユッケの攻撃力は、さっきの精神的ダメージで10%以下まで確実に落ちています。あと先程までに放った魔法は発動していますが、新しく魔法を放てなくなっています。》
マジか……。
この戦法、意外に滅茶苦茶使えるんじゃないのか?
《否。相手の性格によっては怒り出す場合が存在します。その際の攻撃力は凡そ5倍、ギャンブル性が非常に高い賭けでした。しかし私が高速処理演算で算出した結果、99.999994%の確率で勝てると判断したため、止めませんでした。》
99.999994%は確かに信用できるな。
それにしても、ちょっと無理し過ぎだなモーク。
ユッケの心が弱かったからなんとかなったけど……。
まあでも、これで峠は越えたんじゃない?
《はい。恐らくこれでモークが物理攻撃で死ぬことはしばらくの間は大丈夫そうです。》
肝心の防御力はどうだ?
多分俺の予想だとほとんど減っていないんじゃないか?
《はい。防御力も減っていますが、減っていないと考えた方が良いレベルです。》
ユッケの情報はどうだ?
特にステータスが欲しい。
出来ればユッケを打ち負かした相手がいたのか。そして、どんな戦い方をしたのか。
《もう少しでステータスが判明します。しばらくの間お待ち下さい。》
ああ、頼む。
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モークがそれぞれ行動する中、独りぼっちのユッケがいた。
魂が抜けていくような佇まいでつっ立っている。
完全放心状態である。
散々モークに独りぼっちの悲しさをグサグサと刺されたら、そうなるのは当たり前である。
ユッケがモークを最初に煽ったのはわざとだった。
しかし、まさかモークが精神攻撃を仕掛けてくるとは夢にも思わなかったので、まんまとモークの策にはめられてしまっていた。
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~ユッケ視点~
オレハヤッパリヒトリボッチナンダヨナア~。
サスガニステータスニエイキョウハナサソウダナ。
ネンノタメニ【ステータス】ヲミテミヨウカナ~。
【ステータス】名前 ユッケ
レベル 276 ランク S-
体力 1345/1345
魔力 4652/5492
攻撃 142/2540(!DANGER!)
防御 5960/6034
早さ 625/2838(!DANGER!)
速度 20.125/29.25
当会心 17.875/35.25(!DANGER!)
回避 42/44
当回避 42/43
総回避 66.36/68.08
残血液 4000/4000(1800)
経験値 21670308/500000000
次 21670308/23085600(1415292)
……。
……。
……ハァ!?
エエエエエエエエエッ!
(有り得ない!攻撃力と早さがガクッと落ちている。特に攻撃力142は余りにもキツ過ぎる)
俺は放心状態から目を覚ます。
モークはぴょんぴょんと飛び上がり、露骨に嬉しさを表現していた。
俺に見せるかのように振る舞うその様子に、俺は複雑な表情をする。
放心状態から覚めた理由は、あまりのステータスの激変に目を疑ったのだ。
ちなみに、攻撃力と早さの隣にある謎のマーク(!DANGER!)は警告だ。
急激なステータスの現象がおこると、必ず発生する。
謎の理由で数値が減少したステータスは、
攻撃 (酷すぎる)
防御 (若干減っただけ)
早さ (攻撃程ではないが、それでも痛い)
速度 (これも酷い)
当会心(ギリギリDANGERにならなかった)
主要のステータスが根こそぎ削られたのである。
これで俺の物理攻撃はしばらくの間、ほとんど無力である。
あの最弱魔物であるEランクのモークごときにやられてしまったのだ!
しかし、此処までステータスが激減する魔法は有り得ない。
そもそも、モークはほとんど魔力が無いのだ。
【ステータス】名前なし (現愛称 モーク)
レベル 7 ランク E
体力 59/60
魔力 2/2
攻撃 39/39
防御 79/81
早さ ?
速度 ?
当会心 8.75/8.75
回避 ?
当回避 ?
総回避 ?
残血液 8000/8000(500)
経験値 1246/500000000
次 1246/1530(284)
魔力2という数値は、ほとんどの魔法が発動不可という唯一の証拠である。
たった2という魔力で、此処までステータスが激減するという事は有り得ない。
そんな魔法があったら俺が全力で習得するために誰かの下についているハズだ。
俺はステータス表を閉じると、モークについて考え込む。
(マジか……このモークとかいうモークタン。何で俺に精神攻撃を仕掛けているのかと思ったが……そう言うことか。俺もこんな現象初めて見た。)
最初、モークを煽ったのはあくまで感情に流されるかを見極めていたのだった。
感情に流されたら問答無用で殺していた。
アイリスの敵になろうとも殺さなければいけなかった。
だが、モークはどうだ?
俺が煽りまくった仕返しに、独りぼっちであった俺の孤独さをえぐり出し、逆に俺を煽ってきたのである。
1000年という長い間は、俺の人生の黒歴史であろう。
かつて友達が50人いたというモークに勝てる訳がなかった。
これが孤独というものかとまた悩みながら、俺はいつの間にか煽られていた。
凄く気を落とす事に成功したモークが狙っていた本当の狙いは、俺のステータスを内面から削る作戦だったのだろう。
モークを嵌めようとした俺は、いつの間にかモークに嵌められていた。
(やられた……しかもステータスは小一時間程度では元に戻りづらい。となると俺の攻撃が大幅に制限されたな。)
でも、流石に魔法は打てるだろ!
「モーク! おめでとう! お前の話術にまんまとハマった俺は、ステータスの数値の半数が大幅に低下している。お前がやった試みは成功したようだ。」
「僕も成功して嬉しいよ。良かったねユッケ!」
「でも、魔法は全くの別だろ? だから、完全に無効化出来てませんでした!」
「? だったら俺に魔法を撃って見せろよ!」
「そうだな! 食らえ! 【火……】……あれ?」
俺は弱くした【火球】魔法を撃とうとした時、妙な違和感が俺を包み込む。
手のひらがら赤色の魔法が出て来ないのだ。
(魔力切れ? いや、それは有り得ない。さっきステータスを確認したが、4000強ほど残ってたハズだ。)
俺は見えていたステータス表をもう一度覗き込む。
何か妙な違和感をまた覚えたが、構わず無視をする。
すると、ステータスの下の部分に今まで見たこともない文字が追加されていた。
【ステータス】名前 ユッケ
レベル 276 ランク S-
体力 1345/1345
魔力 4052/5492(【魔力暴走】)
攻撃 142/2540(!DANGER!)
防御 5960/6034
早さ 625/2838(!DANGER!)
速度 20.125/29.25
当会心 17.875/35.25(!DANGER!)
回避 42/44
当回避 42/43
総回避 66.36/68.08
残血液 4000/4000(1800)
経験値 21670308/500000000
次 21670308/23085600(1415292)
【注意】
現在、原因不明の【魔力暴走】が起こっています。
魔法の使用は極力控えてください!
―【魔力暴走】詳細――――――――――――
1.一部の魔法が使えなくなる。
2.極端に魔力を消費するか(ユッケの場合、推定500~1000)、ほとんど魔力を消費しないか(推定1~10)のどちらかになる。
3.全く予期しない場所に魔法の軌道が行く。
4.魔力を2000以上連続で使用すると、暴発して死亡する場合がある。
5.稀に意図していなくても、魔法が放たれる可能性がある。
6.例え自分の魔力でも、関係なしにダメージを受ける。
7.治療する方法は、感覚を開けて魔力を消費し続け、持っている魔力を0にする。
8.数時間何も魔力を使用せずに安静にする。
―――――――――――――――――――――――
……は?
……ヤバイ。
本気でヤバイ。
(え? この地点で、俺は魔法をマトモに放てないんじゃない? じゃあ、さっきの【火球】はどこに?)
かつて、一部の冒険者の囁き声を聞いたことがある。
魔法使いで極稀に発生する最狂レベルの危険状態【魔力暴走】。
発生すると患者の魔力が尽きるか、運良く何も起こらないのを待つまで、無慈悲に膨大な魔力を容赦なく放つカオスタイム。
発生したら手が着けられない状態になるほか、最悪暴発して爆発と共に死に至る場合も存在する。
この世界での魔法使いが、最も恐れ、震える。
それが【魔力暴走】。
魔力が高ければ高いほど、その威力は凄まじく、1000を越えると町を滅ぼすレベルにまで匹敵する。
すると、いつの間にかモークがアイリスの近くにまで戻っていた。
よほど必死に逃げたのだろう。汗が出ている。
何で逃げたのだろう?
ん?
下で何かジリジリ音が……。
「ヂュドーーーーーーーン!!!!!」
なんと、さっき放った【火球】が【魔力暴走】によって突然大爆発を引き起こしたのだ!
モークに放ったと思っていたが、俺の足元に放たれていたのだ!
突如として俺の足元から40メートルの炎が吹き出し、俺をそのまま上空へ弾き飛ばした。
オレンジ色の火が俺の体を容赦なく焼き尽くす。
油断していた俺は炎をまともに食らい、そのまま地面に激突する。
我慢できなくなり、起き上がった俺は口から液体を吐く。
間違いなく吐血だ。
所々青色をした血液がある。
魔力が集まっている証拠だ。
コレが吐血で出たと言うことは、【魔力暴走】確定である。
(まさか初めての吐血がモークの煽りによる【魔力暴走】とは、コイツら。やってくれるじゃねえか……。)
ついでにステータスの非表示が出来なくなっている。
俺はステータスを見る。
【hvk2aJ.Dj.t】な前 yッケ
ivhwgMル 2N6 ラ/jク S-
体?力 726/1tgd
町力 3826/c492(【魔力暴so】)
攻撃 1r2/2cf0(!DANGoR!)
防// 596x/60j34
早さ 625ag28a8(!Dl#dGER!)
s6度 20..jij5aviv9.25
当か心 17.jm5/35.25(!DAmli9GER!)
い避 4tj/4lz
宇回避 4tj/43
総回避 66.dj6/6jgmm
残血液 v8ld5/400T(1jam00)
経験値 2g670308mwapJdi5
次 2g0308mwapJdi5(1415292)
【注意】
現在、原ん不明の【魔力暴so】が起こtています。
x法の使用は極力so控えb8oださい!
―【魔力暴so】.mh――――――――――――
1.一部.5hl9/使えなくなる。
2.極端に魔力を消費するか(ユッケの場合、推定50gmogm000)、ほとんど魔.Mt消費しないか(推定1~10)のど/Mwかになる。
3in5.全く予期しないjgm所に魔法の軌gmg行く。
4.魔力を2j00以上連続で使h6ると、暴発して死亡する場合がある。
5.o/稀にamgdgtていなくても、魔法がgmたれる可能性がある。
6.例え自kf.9魔力でも、関係なしhoージを受ける。
7.治療する方法は、感覚を開け/z/zh5力を消費し続け、持.yg9いる魔力を0にする。
8.hlj/m間何も魔力を使.Mgzに安静にする。
―――――――――――――――――――――――
俺はこのステータスを見て愕然とする。
異常自体が起きているのだ。
これは、最悪死ぬ可能性もあるな。冗談一切抜きで。
(クッソ……回復は魔法が頼りだったのが悪かったな。こんな時のために日頃から回復役を常備しておくべきだった……)
俺は【魔力暴走】という大きな爆弾を抱えたまま、アイリス&モークと戦うことにした。
―――――――――――――――――――――――
一方そのころ、モークはアイリスと合流していた。
その時サングラスから朗報が来る。
ユッケの解析が出来たのだ。
しかし、アイリスはそれと同時にあるものに苦戦していた。
魔剣の存在である。
―――――――――――――――――――――――
―【臆病者】アイリス視点―
チッ……。
マズイな。
まさか、ユッケの【魔力暴走】がこんな所に来るとは思っても見なかった。
懸命に回避しているんだが……。
よくわからん謎の理由で4本になったら、流石の俺でもキツイ。
しかも、ユッケが制御していた時より動きが格段に早い。
直線
左カーブ
右カーブ
ジグザグ
逆ジグザグ
追尾
など、ギリギリにならないと読みにくい攻撃が多数出てきている。
【ステータス】!
《ステータスを表示します。》
緑色の世界の右端にステータスが表示された。
なんとなく、低くなっている気がする。
【ステータス】名前無し(現愛称 アイリス・オーリア)
レベル 25 ランク D
体力 278/400
魔力 160/199
攻撃 75/78
防御 62/68
早さ 205/275
速度 6.5/7.75
当会心 7.5/9
回避 54/55
当回避 55.5/55
総回避 79.73/79.75
残血液 3991/4000(200)
経験値 1756/500000000
次 1756/1800(44)
途中どうしても回避出来なかった事が何回かあったため、魔力を使って無理矢理軌道を回避した。
若干減っているが、想定内だ。
それと、頑張ったモークには後で褒美をやらないとな。
《はい。ハッキリ言って、今回の活躍はモークの功績が大きいです。勝っても負けても、大きな成長になっていると思います。》
さすがのサングラスも今回のモークには完敗のようだ。
お陰で肝心のユッケの解析、それから俺の解析も成功している。
「モーク。お仕事ご苦労様。大活躍だ。」
「ありがとう、アイリス。ただサングラスさん曰わく、ユッケが【魔力暴走】を引き起こしているらしい。」
「ああ、一刻も早くこの戦いを終わらせないと俺達もヤバイ。この状況が大体わかるだろ?」
俺はモークに今の状況を見せるかのように魔剣を回避する。
勿論モークには魔剣が当たらない距離まで離れてもらっている。
「ああ、ヤバイな。アイリス、この状況で動けるか?」
「なんとかな。でも、まだお前の解析が終わってないだろ? 余り危険な行動をしたくない。」
「まあそうだな。じゃあ、今から俺はユッケの【魔力暴走】に気をつけながら戦うことにするよ。」
「わかった。思う存分戦ってこい。なんだかんだでこれが初陣だろ?」
「ああ、俺もお前と同じように特訓してきたからな!」
モークは堂々とユッケへむかってぴょんぴょんと飛ぶ。
何だろうな。
物凄く心強い気がした。
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※タイトル一部修正 見やすくしました。
※最終部分、視点切り替えを修正しました。
※ステータスにミス、一部修正。
不備(詳細は省略)修正 加筆あり
ステータスに残血液追加
一部文字変更




