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野蛮学校物語  作者: yukke
第2章 運命の魔物たち編
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第25話 あのモークタンがあらわれた 中編


 俺は足元にいるモークタンを見つめる。



 「モークタン。ちょっと悪いんだけど、少し遠くで話さないか?」



 冒険者達が此処で俺を見つけてしまう可能性があったため、モークタンにお願いをした。



 「お前……どうせ俺をあの()に連れて行くつもりだろ? 俺は嫌だぞ!!」

 「いや……俺は一応冒険者達に追われてるんだ。あそこにいる奴らに。だから俺が万が一、モークタンを()へ連れて行くつもりなら大声あげでも構わないが?」



 モークタンはぺったんこ(ペラペラの紙のように)になって、考えている素振りを見せる。


 ちなみに、コイツを村や町に持って行ったら一定の報酬額が支払われる。

 確か、銀貨1枚だった気がする。


 モークタンの立場になってよくよく考えてみると、実は俺の方に利がある。



 俺があの冒険者達と競合し、モークタンを捕まえるかもしれないのだ。

 この場合、叫んでも叫ばなくても捕まる可能性が高い。


 さらにここで話すと言う選択肢も、最終的に俺と冒険者達が辺りを囲む可能性だって全然ある。



 多分それをモークタンは考えているのだろう?


 俺がモークタンに提案してからおよそ20秒……。



 「ここから西へ300メートル先に平原がある。草原なら冒険者達を見つけやすいし、反対に見つけやすい。お前は足の速さは他の冒険者達より速そうだ。」



 なるほど。


 悪くない。よっぽどの魔法でなければ、俺は逃げ切れる。


 (多分、俺が町から出るのを見てたな)



 「それに、余り知られてないけど俺はどんな地面でも潜ることが出来る。捕まえようとしても無駄だ。」 



 うん、そこなら大丈夫そうだな。

 モークタンの言ったとおり、広い草原は敵に見つかりやすい分、敵を見つけやすい。



 「じゃあ、()()()()()()()から俺は後ろで周り見張ってるよ。」



 背中を取られたらヤバイと思っているようだ。

 ちょっと面倒くさいが、しょうがないか。



―――――――――――――――――――――――

【カルッツイロ草原地帯】



 「着いた。此処で話そう。」



 後ろにいるモークタンはとある広々とした草原で、俺の足を止める。


 

 此処は【カルッツイロ草原地帯】。


 カルッツイロはカルナ語で【沈黙な、孤独な】とかそんな意味だった。


 ※カルナ語は少しだけ、第22話を見れば出ています。【臆病者】は一応学校には通っていたため、カルナ語はマスターしています(カルナ語はこの世界独特の言語の為、最も早く習得する必要があった)。


 うん、確かになんか孤独な感じ(?)がする。

 体に少し刺さるような冷たい冬風が、余計にそう思わせるのだ。



 幸い冒険者達の姿は今の所どこにも見えない。


 (イケザキ村周辺は、背が高い草が多い草原だから捜すのは大変なハズ……)


 取り敢えず、辺りの警戒はしておこう。

 俺はモークタンにずっと思っていたことを口にする。


 

 「そもそも、どうして人間の言葉を理解出来る? 聞き取りも、話すのも全部人間の言葉だ。」

 「ん~まあ、()()()()()()()かな? でも、単に気になったからという訳で覚えた訳じゃ無い。」


 「せめて教えてくれると嬉しいんだけど……。」

 「人間にも少なからずあるんだろ? 自分にとって都合の悪い事は隠す。わざわざ言わなくていい発言をして、他人を巻き込む訳には行かないだろ?」



 モークタンはどうやら人間の詳しい性格なども知っているようだ。



 「そこまで人間の言葉を取得する必要があったのか?」

 「無かったのかもな……。モークタンという種族は大変だよ。」



 モークタンは【カルッツイロ草原地帯】の奥をただただ見つめている。



 その目はやりきったという達成感では無かった。

 ()()()()()()という感じだった。


 相当辛い経験をしてきたのだろう。

 モークタンという種族に生まれたが故の運命。


 茶色いスライムのようなその魔物。たった1つの種族だけが地獄に落とされた。


 貧乏籤(びんぼうくじ)を引いただけなのだろうか?

 俺はとても偶然とは思えない。



 俺とモークタンは微妙な空気を漂わせる。


 別にモークタンという種族が嫌いではない。気まずい空気を作る質問を投げかけた俺に責任がある。



 と、モークタンが突然声を出した。



 「……オイ! お前……俺の事を覚えてないのか? いい加減わかれよ。」

 「俺はモークタンの知り合いは……。」



 俺はモークタンの知り合いは居ないぞ?と言いかけた瞬間、モークタンは言葉を更に重ねる。




 「お前は一応、俺にとっては恩人だな。懐かしいなぁ、10年前だっけ? あの頃のお前は【臆病者】じゃ無かったな? 人間で言うところの4月18日。お前は居たはずだ。あの【臆病者】と言われた場所に。確か、()()()()()()()()()()()()()()()【初心者教育所】だったっけ?」




 え?


 何で俺が10年前は【臆病者】じゃないと言うことを知っている?


 どうして10年前の4月18日に俺が【初心者教育所】にいた事を知っている?


 ※【初心者教育所】については第1話、第11話参照。




 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よな。まさか、俺達モークタンを殺せない人間がいるとは一切思わなかった。」




 俺は知っている。


 

 10年前の4月18日


 俺が【初心者教育所】でモークタンを殺せなかった。その日から俺は修羅の道に足を踏み入れる羽目になった。


 そして、俺が殺せなかった所を見ていたのは、4人と1匹。


 1人目は前の村長(イグナル村長の前)。

 2人目は俺の父さん。

 3人目は後のいじめっ子。

 4人目はアンナおばさん。


 あと1匹見ていた。

 それは、俺が殺す予定だったモークタン。



 まさか……。




 「まさか……俺が殺す予定だった、あのモークタン?」

 「ピンポーン! 大正解! 10年振りだな! 【臆病者】!」


 「えええええっ!」



 俺は仰天する。


 殺せなかった10年前のあのモークタンが、突然俺の前に姿を現ると、驚くのは当然だと思う。


 どうして突然俺を尋ねたのかが気になる。


 俺は取り敢えず質問する。




 「俺を探しに来た目的は?」

 「あの理由を聞きたかっただけだ。」


 「あの理由?」

 「草原で屈強な冒険者達の餌食になってな。本来はあんたに殺される所だった。俺のモークタン生が終わったと思ったら、何故かお前は剣を振らないんだよ。どうしたのかな?とか思ってたら、あんたは剣を置いて降伏したんだ。どうしてだ? 俺が見たところ、あんたは剣士の才能は若干あった。俺を殺せたハズだ!」




 モークタンは飛びつきながら俺に問いつめるようにいう。


 俺はすぐさま反対する。




 「逆に聞くけどさ。何でお前は()()()()()()で話を進めてるの? さっきから勘違いしてないか? 少しは逃げようと思わなかったのか?」

 「何が言いたい?」


 「生きたかったのか? 死にたかったのか? はたまた、奴隷にされたかったのか?」

 「それは……」


 「俺は少し前から何となく知ってたぞ? モークタンにも、人間とほぼ同等の感情を持ってると。あの時にお前が向けた視線は、『殺してください。奴隷にしてください』の目線だったか? 俺は()()()()()()()()()()だと感じたぞ?」

 「……。」




 モークタンは少し沈黙を貫いた。

 またまたぺったんこの状態になって考えこんでいる。


 俺は更に言葉を畳みかける。




 「少しは【生きたい】と言う意志はあったんじゃ無いのか? そうじゃなかったら、お前はどうして此処にいる? 俺が殺せなかったからって、他の奴らがお前を襲ったハズだぞ? 【生きたい】から、逃げて来たんじゃないのか?」

 「確かにそうだった。でも、あれは偶然だろ? それに、俺はランクGの魔物なんだろ?」




 うーん、確かにランクGと言う事実は否定出来ない。


 そうだ!

 此処でサングラスの出番だな!

 俺は収納魔法からサングラスを取り出し、サングラスをかける。


 背の短い枯れ草の黄色が、一気に緑色にチェンジする。



 サングラス、このモークタンのステータスを調べてくれないか?



 《申し訳ありません。それはしばらく時間がかかるでしょう。》



 はぁ?

 何で?


 多分そんなに時間かからないハズだぞ?


 サングラスもモークタンのステータスは調べてるハズだろ?



 《勿論です。しかし、このモークタンは()()()()()()()()()()()()()()()なのです。》



 全くの別物?

 どういう事だ?



 《マスターは【特殊魔物(ユニークモンスター)】と言う魔物の種類を知っていますか?》



 まあ詳しくはわからないけど、ある程度なら知ってる。



 《【特殊魔物(ユニークモンスター)】とは、通常個体よりも何らかの理由で強くなってしまった魔物の事です。通常個体よりも体が大きく、凶暴な性格が多数です。》



 まあ、モークタンが凶暴になっても……。



 一瞬思考を止めて真剣に考えて見た。


 ……(喋り方)は確かに凶暴だな。

 あながち間違っていないような気がします。



 《確かに、間違ってはいないみたいです。マスターを侮辱する暴言の数々、()()()()()()()()()()()()()()()



 イヤイヤイヤイヤ!

 そんな事はしなくていい!


 やるなら……あれだ!

 ()()()()()()()()()()()()にしてくれ!



 《……了。マイマスター。》



 (このサングラス、万が一俺が許可出してたら本当にモークタンを成敗してただろうな。)


 じゃあ、今度は通常のモークタンのステータスを調べてくれ。



 《(()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。)はい。こちらです。》


 なんか小さな声で聞こえた気がするが、閑話休題(それはおいておこう)



 緑色のレンズからは通常個体のモークタンのステータスで埋め尽くされた。


 ふむふむ、


 なるほど、


 へぇー。 


 凄く詳しくてしばらく見ていたい所だったが、そんな暇は無い。



 ステータスを見たら全魔物の中で最悪だ。


 何よりも致命的なのは、攻撃力が数値上では0()()1()なのだ。


 これは、どんなに急所を攻撃しようが痛みを感じられないレベルだ。


 つまり、モークタンが誰かを倒す事など……




 不可能。




 そういう事を示しているのが、この最低最悪のステータスである。




 それから20秒たった後、モークタンがぺったんこの状態から、通常のスライム状態に戻った。



 「ん? 何そのサングラス? ただの()()()()? わざわざ俺に見せなくていいから。」



 コイツ……。


 流石の俺もほんの少しイラついてきたな。


 でもな、()()()()()()()()()()()()のは何故なんだろう?


 「俺の事について深くは触れないでくれ。」そんな感じの言葉を本当は伝えたいような気持ちがあるのではないか?



 そんな事を考察しているといつの間にか、小さな怒りが冷めてくる。



 「違うよ。これはある人からの大事な贈り物だ。取り敢えず、このサングラスを余り侮辱はしないでね。後で後悔する(お仕置きされる)かも知れないから。」

 「へぇー。そんなに大切な物なんだ。わかった。隠し事ならしょうがないか。」



 モークタンはあっさりと挑発を諦めている。

 そして、モークタンはすぐさま俺に問い掛ける。




 「確かに俺は【生きたい】。そもそもよっぽどの事がない限り、誰だって生きたいだろ? 俺は、俺達モークタンをこんな羽目に合わせた奴らに復讐するつもりだ。」

 「復讐して何になる?」


 「? どうして? 復讐をするのは当然でしょ? こっちは過去1000年にも渡って地獄の日々を味わってきたんだ! 俺はいつか、もっと強くなって、人間どもをぶっ潰す。」

 「『()()()』って何時? 復讐でお前たち1000年の恨みは晴れるのか?」


 「そんなすぐに晴れるなどとはこれっぽっちも思ってはいない。だから、俺達が今まで受けてきた地獄を1000年分償ってもらう事に……。」



 モークタンはギラギラと目を輝かせている。


 輝かせているのは期待とかではなく、()()()()()に取り憑かれた目だった。


 そんなモークタンの様子を見ていた俺は大きな溜め息を漏らす。


 (人間も人間だが、魔物も魔物だな。その後どうなるのか考えずに、目先の利益ばっか求めてる。こんな事だから、人間と魔物は理解し合える事が出来ないのかもな)



 「どうした? 俺を止めるか? さっさと俺を止めてみろよ!」



 モークタンは俺を煽りまくっている。


 怒らせて平静を乱そうとしているようだが、そんなのは俺には通じない。


 結局魔物は魔物で、何も進歩しようとしていないのか……。


 俺は大きな溜め息を2度漏らした。そして、




 「くだらんな。」




 といった。


 モークタンは驚愕した。

 コイツは俺に何と言ったのだ?


 そんな目だった。


―――――――――――――――――――――――


※不備(詳細は省略)修正 加筆あり

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