第24話 あのモークタンがあらわれた 前編
《案の定、こうなりましたね。だいたい予想していました。それにしても、あの状況から逃走なんてBクラスの人でも至難の業ですよ。》
……誉めてくれてありがとう。
そんな訳で俺は町から一応出ることに成功した。
だが、今いるのは草原の草むらに潜んでいる。
イケザキ村からおよそ150メートル。
何故こうなったかというと……。
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5分前【商業エリア】【イケザキ入出門】
「ん? ちょっと仮面を外してくれませんか?」
やっぱりそうきたか、俺は堪忍して仮面を外す。
「俺が誰だかわかったでしょ? さっさと此処から追い出してください。」
「お、お、お……【臆病者】? そんな、何かの間違いだ!」
検問員は驚いている。そしてすぐさま銅の剣を取り出した。
「……あんたが【臆病者】か。村の人達全員の指示で、あんたを無期懲役にするらしい。大人しく捕まってもらおう!」
検問員は銅の剣を持って、俺に向ける。
門のすぐ近くにあった小さな小屋から人が続々と出てきて、俺に銅の剣を向けた。
全員で8人。
……えっ?
ひょっとして俺と戦うつもり?
正直、冒険者がいる時に戦いたくはない。まあどっちにしろ、面倒くさい。
逃げるのが得策だな。サングラス、検問員は本当に指示されたと思うか?
《少し嘘を言っている気がします。と言うより、無理矢理こじつけた感じがします。》
無理矢理こじつけた感じ?
つまりどういう事?
《本心で言っていませんね。恐らく、ここで【臆病者】をそのまま通してしまうと、【臆病者】を庇ったと誤解されるからでしょう。》
正直、戦いたくないと言うことかな?
《はい。以前あなたがチンピラから逃げ切ったと言う噂を耳にしたのでしょう。口では威勢良く言っていますが、内心はごまかせません。》
やっぱり逃げた方が良いな。
《言葉で解決は恐らく無理でしょう。逃げるのは少し難しいですが、それでもいけると?》
うん。
この検問員達は正直、チンピラ達より弱い。
父さんに迷惑をかけてしまうかもしれない……。
ごめんなさい父さん!
検問員達は俺から一定の距離を保ったまま、円になって俺を囲む。
これは魔物を討伐するのに最適な布陣だ。
(ってか俺を魔物扱いだよね?勘違いにもほどがあるぞ!)
俺は心の中で愚痴る。
すると検問員は、ほぼ同じタイミングで剣を俺に向かって振りかざしてきた。
連携は良いな。
確かに大半の魔物なら何も出来ずに緑色の液体を当たりにぶちまけていただろう。
だが、俺は魔物じゃない。人間だ!
オマケに超ハイテクサングラスを付けた人間だ!
サングラス、この中で一番ステータスが弱そうな人は?
俺はそいつにタックルして突破する。
《右斜め前方の人がこの中で一番ステータスが低いです。勢いがあればほとんど成功します。》
俺は比較的近くにいた検問員をタックルする。
勢いを強くしたため、タックルされた検問員は1メートル後方に飛ばされた。
俺は踏まないように軽くジャンプする。飛距離3メートルは少しイマイチだがしょうがない。
だが、包囲から突破は出来た。
後は逃げるだけ……。
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……という感じで取り敢えず草原の中に隠れている。
何で隠れているかって?
逆に聞くけど、周りがほとんど見渡せる草原に逃げたって、どこに逃げれば良いの?という話だ。
検問員達は冒険者に頼んだらしく、今60人程の冒険者達が俺を捜索している。
取り敢えず、草原の地面を腹ばいになって、そこら辺にいる魔物のスライムにわざと乗っかってもらっている。
スライムは倒れた人間がいると、自分のものだといってしばらく背中に止まる習性がある。
ちなみに敵意を向けなければ、95%のスライムは襲ってこない。
残りの5%に含まれる悪いスライムは、どんな状況でも必ず襲いかかってくる。
(その習性、何でそうなるかイマイチわからないんだよな)
以外にスライムは重い。
スライムの成体1匹で20キロは意外だ。
今、背中の上にはスライムさんが乗っているこの状況。
バレないだろうか?
俺はスライムさんを乗せたまま、ほふく前進する。
重い……。
これ、ゴブリン投げるより辛い……。
俺の数十メートル先には、林がある。
最低でもそこまではほふく前進しないといけない。
……。
……。
……。
ふぅ~。
スライムさん。どいて。
俺は一生懸命体を揺らしてスライムさんを背中から離した。
死体が突然動き出したと勘違いスライムは、一目散に逃げて俺の視界から消えていった。
ここは俺が訓練していた【試練の森】に一番近い林。
イケザキ村からおよそ200メートル。
冒険者達は、まだ俺が100メートル以内にいると思っているようで、草原辺りを懸命に探し回っている。
我先に!という勢いがまじまじと伝わってくるほどだ。
(これ、俺がそこにとっくにいないとわかった瞬間に落ち込む奴だな。)
そんな哀れな目で見ていた俺は、背後から僅かながらガサガサと言う雑草を掻き分ける音がした。
冒険者達の包囲から抜けたばかりの俺は焦って後ろを振り返る。
今日は少し反応が遅いな。
俺は今、人間と同じ視線の高さを警戒している。……がしかし、誰もいない。
気のせいだったかな?
「オイ! おい、お前! 俺だよ! 10年前の俺だよ。忘れたのか?」
ウワッ!
どこからか声が聞こえる。
俺は辺りを見回す。
今までこんな事は初めてだ。
どっから声を出しているのか俺にはサッパリわからない。
……いや、実はわかっている。
俺の下辺りから声がするのはなんとなくわかる。
だが、下を向いていると言う油断を誘い込み、上から奇襲して来る可能性だってある。
何年も【試練の森】に行っている人間だからわかるのさ!
「オイ! ここだって! 人の話聞いてんの?」
聞いている。
だけど、そんな言い方は無いだろう。
魔物は人間の言語を話せないんだし。
人間の言語を話せるのは人間しかいない。
……早く出て来てくれよ。
いい加減、こんな茶番疲れてきたって。
「茶番やってんのはあんたじゃないか。お前の足元を見てみろって! 俺はちゃんと此処にいるから!」
「うるさい。そんな手は何回もみたからお見通しだよ?」
「……(ダメだコイツ)。」
「なんか言ったか?」
「何も言ってないよ? それより、一瞬だけでもいいから自分の下を見てみなよ!」
何で俺がこんな茶番に付き合わなければいけないのか?
サッパリわからない。
いい加減この茶番にも飽きてきた。
《……マスター。そろそろ私も大茶番に飽きてきました。》
そうだろ?
だから、相手が何処にいるか特定してくれ。
《あの……私を信じて、マスターは下をほんの少しだけ見てくれませんか? ハッキリ言いますけど、茶番を演じているのはあなたですよ。》
え?
相手じゃなくて俺?
取り敢えず、本当に信じていい?
《はい。もしそれであなたが危険になったら、このサングラスを壊しても良いです。それほど私は自信(というより、れっきとした事実)があります。》
そんなバカな。
俺の目が届かない奴でしかも、人間の言葉を理解する奴なんて……。
そう言いながら俺は一瞬下をみた。
…………。
(いたわ……)
俺はずっと会話している奴が人間だと思いっきり勘違いしていたから、ずっと俺の足元辺りにいるのに全く気がつかなかった。
さっきまでの大茶番が恥ずかしくなって赤面しだした。
これは恥ずかしすぎる。
俺の【黒歴史】の中に入りそうだ。
「オイ、テメー! よくも俺っちをガン無視してくれたじゃねーか! 人間は俺達を散々殺したくせに、知らんぷりか? 覚悟しろ! 【ストライクガン】!」
茶色のスライムのようなその魔物は数メートル後方に下がった後、全速力で俺のお腹にタックルする。
全速力とは言っても、実際は俺の全力の走りより遅い。
だが、俺はついつい茶色の魔物の話に気をとられていたため、回避が少し遅れた。
「しまった!」
俺はギリギリ回避しようとしたが、左の横腹をかすった。
いや、かすったと言うより……。
モフッとした感触を感じる。
優しい毛布を体に当てた感触だ。
ケガはしていない。
(これでケガする人いるの?)
「アァーーーーー!!! 何で俺達はこんなに弱いんだ! 誰が僕達の力を奪ったのだ?」
茶色い魔物はピョンピョン跳ねながら悔しがっている。
魔物ってこんなに人間とほぼ同等の複雑な思考してたっけ?
俺はこの魔物の種類がなんなのか、下を向いた瞬間からわかった。
種族名モークタン。
唯一のGランクの魔物。
体長はおよそ50センチ。
スライムのような流線形の体をしており、そこに冬でも耐えられるあったかそうなもふもふした茶色い色の毛を身にまとっている。
この世界最弱の動物。
小さいけれどぱっちりとしたおめめで、俺を見つめていた。
この目は俺に少し怒っている。
さっきガン無視されたのが鼻についているのだろう。
(ゴメン、わざとじゃ無かったんだ……)
俺は心の中で真剣に謝る。
それにしても、人間の言葉を話せるのは以外だな。
頭のてっぺんに白い斑点がある。
あれ?
この魔物、どっかで見たことがある気がする。
どこで見たっけ?
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突如として【臆病者】の目の前にあらわれた最弱の魔物モークタン。
このモークタンとの出会いが、【臆病者】の人生に、非常に大きく関わっていく事になる。
さらに、此処辺りで会う魔物達は【臆病者】の人生を大きく変えた。
後に人々は彼らをこう呼ぶ。
【臆病者】と【運命の魔物たち】。
もちろん【臆病者】は、この事をまだ何も知らない。
予言も出来ない。
運命とはそう言うものである。
※スライムの説明シーン
遅い→襲いに修正
不備(詳細は省略)修正 加筆あり




