第23話 SpecialEpisodeユッケ 【臆病者】にあった俺 1.
イケザキ村上空およそ200メートル。
そこに、この日【臆病者】を監視していた人間がいた。
いや、人間というのは少し間違っているかもしれない。
彼は食事をあまり取らない。
排泄などしたこともない。
全ての栄養が有効に使われる。
欲求は人間の1/100程度。
世界をあちこち飛び回っては、強き人間に勝負を挑んでいる。
29625勝2敗1分。
彼は魔法を使って飛んでいる。
その魔法は、人間が用いている魔法よりも遥かに高度な無詠唱最上魔法だった。
大きさは人間と全く同じ。
身長174センチ。
体重60キロ。
黒色の半ズボン。
綿で出来ている灰色の長袖。
がっちりとした黒色の分厚いセーター。
武器装備はある。
左手には大きな4本の爪状の武器。
腰には剣を携えている。
後は己の拳と足、それと多彩過ぎる魔法。
防具装備は、ふくらはぎ辺りに鋭い針が数本付いている鋼鉄の防具。
頭には異世界人の【にほん】が昔付けていた【戦国時代】の兜の用なもの。
後は己の体そのもの。
この人物の名はユッケ。
ランクS-。
このランクの領域ともなると、国一つ滅ぼせる可能性が50パーセントほどになるという。
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~ユッケ視点~
ハッハッハ!
あの【臆病者】はやっぱりスゲェな(あの時たまたま通りがかってた時にアレを見ちまってから興味が湧いたぜ)!
昼間は何時もの高さだったら流石に人間にバレるから、上空500メートル程度であの【臆病者】をずっと鑑賞してたんだが……。
数千年生きてきてなかなか楽しい光景だったぞ!
俺はあの糞野郎に、面倒臭くて退屈極まりないオーラ直接かけられて以来、ずっとこの有り様。
滅茶苦茶強くなったのは良いけど、おかげで生徒達にに会えなくなった。
こんな醜態を生徒達の前で晒すのは校長として辛い。
……て言うか彼奴、回避能力が以前よりパワーアップしてるな。
俺の全力の範囲攻撃、ギリギリ回避できるんじゃないか?
(それよりこの日の出来事多すぎだろ。町でるまでに色々な経験し過ぎだろ彼奴。)
て言うか、この町の門番かなり性能が良すぎるぞ?
上空200メートルほどで飛んでたら、いきなり俺を見つけて魔法妨害放ってくるし。
この町、何か隠してる気がするんだよな……。
それより、彼奴がこの日に起こった出来事についてまとめていこうかな。
まず、父さんと別れた(よくある話だよな)。
冒険者商店町にて薬を大量購入。
チンピラに金をせびられたけど逃走。
逃げ切った彼奴は住宅街で迷子。
しばらく迷った後、この町の村長に出会う。
村長に案内されながら色々村長と何か話していた(会話はイマイチ聞こえなかったな)。
村長と分かれた後、逃げている時にぶつかったそば屋の店員の所へ。
(透視魔法使ってみて、)そば屋の店員と何か損害賠償と言うので少し話した。
その結果、銀貨2枚でソバ代金とナイフ代金という形で終わった。
で、この村で一番良いと言う宿屋で一泊予約。
部屋の中を色々物色したあと(あの【どえろ純愛の本って何だったんだ?】)、暇だからと一旦宿屋を出た。
宿屋を出た【臆病者】はサン・グラースって言う如何にもサングラス大好きオッサンと出会う(以外にこのオッサン、俺が今まで戦ってきた人間よりも強い気がする)。
サン・グラースが作ったサングラスを眺めていると、別格の奴を気にとめる。
試着したが、黒ずくめの人間に奪われる。
責任を感じた【臆病者】は、サングラス奪還作戦をサン・グラースに提案?(サン・グラースが怒っていた理由がイマイチわからない)
※第17話参照。
その後サングラスを奪還し、褒美に鉄とサングラスを、サン・グラースは【臆病者】にプレゼントした(サングラスとサン・グラースがいいづらっ!)。
【臆病者】はその後、【バイキング形式】の夕食を堪能(昼食食べてからそんな時間経ってないけどな)。
案の定、そんなに食べずに自分の部屋へ。
ざっとこんな感じか。
俺が【臆病者】を知ってる理由はたまたまだ。
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数年前、11月16日。
暇つぶしにイピル山の山鬼に会ってみたいと言う理由で空を飛んでたら……。
森で凄まじい魔物との戦闘をしている奴がいたから気になって森の中に入ったんだ。
で、こっそり戦闘を遠くから見てたんだが……。
Sクラスの俺でも衝撃を覚えた。
今でも、【臆病者】の戦い方は鮮明に覚えている。
【臆病者】と言うのは彼奴の愛称らしい。愛称が【臆病者】なのは、他の奴らがコイツの恐ろしさを知らないからだ。
謎の理由で進化した魔物200体との戦闘。
ランクは一番高くてC+。
それでも、人間が使っている弓をある部隊はいとも簡単に使いこなし。
ある部隊は【臆病者】に向かって槍を突く。
挙げ句の果てには数メートルの棍棒を持ったダークボブゴブリン数体が【臆病者】に向かって全力で襲いかかる。
普通の冒険者なら数秒もたたずに死んでいる。
矢の雨で体中に赤の花と羽を咲かせ、槍で至る所の内臓をくり抜かれ、数メートル級の棍棒で思いっきりに殴られ、ぐちゃぐちゃに潰れる。
こんなへんぴな森にこれほど強い魔物がいるなど聞いたこともない。
しかし、【臆病者】は違った。
矢の雨をいとも簡単に回避。交わしきれない場合は近くの石で活路を開く。
槍をいとも簡単に奪い、魔物をザクザクと突く。
ザクザクと突く事に緑色の花を強制的に咲かせ、魔物は為すすべもなく倒れる。
棍棒で襲いかかってきたダークボブゴブリンの攻撃をあっさりと回避し、持っていた槍を目に目掛けて全力で投げる。
目に刺さったダークボブゴブリンは大きな悲鳴を上げ、倒れていった。
(槍に毒が塗ってあったか……此処は狂気過ぎるぞ。)
その後、あっさりと包囲を抜け出した【臆病者】は周りに追撃して来る魔物を次々と撃退する。
魔法やスキルを一切使っていないのに、足が一般の冒険者達と比べものにならない。
その光景は、戦場で暴れまわる武器無しの猛者のようだった。
キノコの魔物が放ってくる毒には全く効いておらず、逆にキノコは根から引きちぎられる始末。
「今日の飯だな。」
と言う独り言を【臆病者】は呟きつつ、死んだキノコの魔物を左手で鷲掴みして強引に持って行く。
(そのキノコ、猛毒持っている奴だけど……。)
そして、町の方向へ走りさっていった。
その後の惨状は言うまでもない。
【臆病者】の手によって殺された魔物60ほど。
血生臭い臭いが俺の鼻にツンとして来る。
殺された魔物が多すぎて、血を見慣れているハズの俺が複雑な心境をしている。
魔物達は静かに【臆病者】の去った方向をただ見つめるだけだった。
(いや、流石に毎日こんな戦いしているはずは無いだろう。)
翌朝、一旦イピル山の山鬼に会った俺はあっさりと勝利した。山鬼はレアな魔物なので敢えて生かしている。
だが、その直後、俺は嫌な予感がしたので急いであの森へ向かった。
また、あの森から同じような悲鳴が聞こえたのだ。
また俺は森の中に入る。
昨日食べたであろう猛毒のキノコを食べてなぜ生きているのか?(毒耐性のスキル持っているのだろうけど、毒耐性を所得する条件は毒物をひたすら食べる、それだけ)
どうして、命懸けに近いあの壮絶な戦いをわざわざ自分から仕掛けに行くのか?
俺は疑問で仕方がなかった。
【臆病者】は今にも襲いかかりそうな魔物たちの軍勢を恐れず、ただ堂々と歩く。
魔物たちは【臆病者】に向かって前日と同様に、矢の雨を降らせたり、槍を投げたちと善戦した。
もうほぼ人間と同レベルの知能である。
しかし、【臆病者】は当然それをあっさりとかわす。
敵の弱点をすべて熟知しているのか、的確に近くにあった木の棒や鏃で相手の急所を突き、倒していった。
全く死を恐れないその姿に、少し恐怖した。
同じ人間の筈なのに、修羅の道をただ真っ直ぐ突き進む勇気に圧されたのだと今になって思う。
すると【臆病者】は、突然かがみこんで何かを探し始めた。
こんなヤバイ条件でよそ事を考えられるほどの余裕があるというのか……。
緑草だ。
回復薬の代わりになると言えばわかりやすい。
「全然まだまだあるんだな。」
とか言ってた気がする。
正直俺は緑草を見分ける能力は持っていない。
と言うか、わざわざ持つ必要が無いのだ。回復魔法が何千回も出来るレベルになって今更、低級の回復薬に頼る必要も無いのだ。
見たところ、【臆病者】のステータスは……。
「【能力可視化】!」
俺は、いつも使っている魔法を唱える。
【能力可視化】と言うのは、単純に言えば相手のステータスがわかる。
自分より格下の相手であることと、【能力可視化】の対抗魔法。
【不可視の心得】
……。
……。
……え?
何で?
ステータスは問題無く見ることが出来た。
以外だが、それはどうでもいい。
でも、何でそんなにステータスが低いのに機敏に動けるんだ?
俺にはサッパリわからない。
スキルによる効果というの可能性しかないが、一体どんなスキルだ?
そんなスキルあったか?
その日から俺は【臆病者】の事が気になった。
もしかしたら、コイツは大物になる。
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明日、彼奴が旅立つようだ。
あってみようかな?
旅仲間になって、あの理由を何時かは聞いてみよう。
ついでに彼奴と軽くドンパチしてみようか。
数千年間、さっきもいったように俺は暇な時間を独りで過ごしてきた。
こんなに興味を持ったのは、これで4人目だな(正確には、3人と1匹だが)。
明日の朝、首を洗って待ってろよ。
……それにしても暇だ。
なんか気が抜ける事が起こらないかな?
ん?
黄色い球がこちらに向かって……。
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ユッケがそう思った瞬間、黄色い球はユッケに直撃する。
ぢゅどーんという爆発音の後、凄まじい熱風がユッケを襲う。
ユッケの体には傷一つ無い。
しかし、それが魔法妨害ならどうだろう?
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~ユッケ視点~
ぎゃああああああああ!
あのヤロー!
空飛んでる人間に魔法妨害放ってくるなよ!
おかげで無詠唱の飛ぶ魔法が使えなくなったお陰で500メートル下の地面に真っ逆さまに落ちてるよ!
俺の守りでダメージは無いけど俺は高い所から落ちるのが大嫌いなんだァーーー!!!
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「ドーーーーン!」
凄まじい衝撃で中心から40メートルほどの地面がくぼんだ。
ユッケが落下してから地面に激突するまでおよそ13.5秒の間、嫌いな落下を味わった。
そして、そこそこ大きな石や砂が空中に舞い上がる。
パラパラという崩れた音が鳴り響きながら落ちた後、ユッケは自力で起き上がった。
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ああー。
全く酷い目にあった。
まさか上空500メートルにいる俺を見つけて、正確に魔法を当ててくるとは予想もしなかった。
ダメージは1という所か。
少し当たる所が悪かったな。
(それより、俺は落とされる時間が長すぎて嫌になったんだけど。)
俺は空を飛ぶのを、当分諦める事にした……。
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※此処まで読んでくれたあなたに感謝します。ありがとうございます!(まだ終わらないですよ!)
これにて、第1章 臆病者の旅立ち編が終了しました。
ちなみに、此処まで来るのに費やした文字数は……。
159720文字!(ルビ挿入、傍点挿入は含みます。空行は含まれません。)
その中で、会話率は20%を切っています(【臆病者】の気持ちが多分60パーセントほどを占めている気がします。)。
正直、たった1日の近所の町歩きに100000文字をあっさりと越えたことに私もビックリしています。
あれもいい、これはダメと試行錯誤しているうちにこんな文字数になってしまいました。
まだまだ小説を書くのが未熟な私の小説を読んでくださる読者さん、(まだ続くけどね!)ありがとうございました。
今後とも宜しくお願いします!




