第22話 さらばイケザキ村!
俺は一般食堂ルームからでた後、客室の方へ戻る。
収納魔法から鍵を取り出し、085と書かれたドアの鍵穴に差し込む。ガチャンという器具音の後、ドアが開いた。
中に入る。
そして、ドアをあけた後、すぐさま頭からベッドに突っ込む。
疲れた……。
今日は色々有りすぎて大変な一日だった。
(もうたぶん今日は此処から出ないな。何かしらの面倒な争い事に巻き込まれたくないし……)
今日の朝起きて、父さんに「今日この町から出ます!」といった自分を少し責めたい。
《正直あれは仕方がないと思います。チンピラ達との戦闘か逃走のどちらかでした。逆にあれほどの被害で済んだことは奇跡と言う他無いでしょう。》
そのお陰で俺は、3時間位住宅街で迷うとかいう被害を受けたのだけど……。
……てか今はサングラス出して言いよね?
《はい。一件私の見た所、監視カメラは発見出来ません。無いと思います。》
監視カメラって何?
《異世界では防犯に使用されています。しかし、一部の発展した国ではスパイ防止の為に使われているのだとか。とにかく、監視カメラはかなり厄介な存在です。》
俺は軽く辺りを見回した後、収納魔法からサングラスを取り出した。
そして、俺はサングラスを付けようとし……。
《ちょっと待ってください。あなた、シャワー浴びてませんよね?まさかシャワーも浴びずに私という高潔なサングラスを付けるのでは?》
ウワッ。絶対こういうウザイパターンは無いと思ってたのに!
(絶対サン・グラースが付けたな。)
《否。サブマスターが過去、サングラスをよく付けるのですが、鉄の汚れ塗れの手でサングラスをしつこく付けて来ましてね。腹がだったので勝手にプログラムで変更不能の機能にしました。》
それほとんどサン・グラースが機能をつけたのと一緒の事になるじゃん!と俺は心の中で、全力で突っ込んだ。
《心配しないでください。ちゃんとシャワーを浴びてこれば、普通の声になります。また、緊急時の時は汚れていても、構いません。》
でも、今は全然緊急時じゃないからあのウザイ口調になったと?
《はい。今日は此処から出ないとあなたが申したからです。》
うぅ……。
全く反論が出来ない。
確かに俺はそう言った。
(しかも、マスターって言わずに、あなたって言うのが若干強調口調っぽくなるのが嫌何だよな……)
《何か頭の中で考えてませんでした?あなた。》
ナニモカンガエテマセン。
シャワーアビテキマス。
俺はサングラスに完全論破され、渋々シャワーを浴びる事にした。
(まあ、言われてみれば確かにそうなんだけどね。サングラスの言いたい事も否定出来ないな。)
シャワーを浴びる直前、俺はサングラスに一言聞いた。
裸の状態だから正直寒い。
(なあ、サングラス。俺の頭に付いてる【ミニチャン】だったっけ?それ、水に濡れても大丈夫なの?)
《はい。防水加工しているので少なくとも、あと10年は大丈夫です。安心して入浴してください。》
凄いな。
【ミニチャン】って言う名前を馬鹿にしてたけど、機能は全然褒める所が多い。
俺はシャワー室へと入る。
シャワー室とは言っても、そんなに広いスペースでも無い。
1人入るのがギリギリのスペースだ。
内装は普通だ。
少しボロ付いているが、シャワー無しよりは全然マシ。
シャワーもそこそこ大きい。
勿論大きければ大きいほど、お湯が多く出せる。
此処までは異世界と余り変わらない。違うのがいくつかある。
まず、シャワーの蛇口を捻ると、必ずお湯が出てくる。
体感で41℃。
冷え切った体にとっては少し熱い。
事前に読んでおいたこの宿屋のルール(お願い)に書いてあったな。
確か夏の時は38℃、冬は41℃、それ以外は39か40℃だった気がする。
《おそらく、元々熱い状態のお湯をそのまま宿屋内で循環しているのでしょう。》
それしか考えられない。
俺は最初、そこそこ熱いお湯を我慢して、シャワーを浴びる。
我慢するのは数十秒程だ。
その後、ほっこりとする時間が訪れた。
俺は今日起こったことを丁寧に思い出す。
10分後、シャワー室から出た後、タオルで体を拭いて、夜間着(宿屋備え付け。薄っぺらいけどタダで借りれる)を着る。
ベッドに座った俺は収納魔法から大きくて分厚い本と、鉛筆を取り出す。
大量生産が今の所なく、10本で銀貨1枚する鉛筆。
わざわざ買ったのは、冒険した日記を記したいからだ。
俺は日記の最初のページを開く。
そして、こう記した。
勿論、学校で習ったのはこの世界での文字だ。
カルナ文字と言う少し面倒な文字だ。独特過ぎて覚えるのに苦労した。
(最初位、長く書いておこう。)
~【臆病者】の日記(実際に書いた内容は、これよりおおざっぱな感じ)~
暖冬終期、11月26日 名前 愛称【臆病者】
今日、遂に【臆病者】と言う愛称を抹消できるかもしれない冒険の旅立ちの日だ。
父と別れた俺は、冒険者商店町で薬を購入した。
ところが、薬を大量に購入したせいで、チンピラ達に金持ちと勘違いされた。
残りのお金を払っても隠しているとか言われそうなので、逃げ出した。
元兵士と言う事もあって、一瞬危なかったけど何とか逃げ切った。
……のは良かったのだが、逃げ切った先は迷宮の住宅街で1時間さまよってしまった。
イグナル村長に出会った俺は案内される途中、モークタンが残虐に殺される原因を調べるのと、俺の足りないものが何かをこの冒険で見つけてくることを約束した。
イグナル村長と別れた俺は、チンピラ達から逃げる時にぶつかった出前店長さんの店を訪れた。
損害賠償は【海老天ぷらそば】、ナイフ2本、迷惑料を足した銀貨2枚と言う形で終わった。
そして、混雑するだろうと予想した俺は宿屋を早めにチェックイン。
暇だったので宿屋をでた俺は偶然サン・グラースのサングラスに興味を持った。
泥棒に盗られたけど、取り返したお礼にサン・グラースから鉄とサングラスをもらった。
そして、宿屋の夕食を食べて、現在に至る。
俺は10分少しの間、日記を書いた後、収納魔法で鉛筆と本をしまった。
(今日はぐっすり眠るとするか。)
【腕時計】はすでに20時30分位だ。
俺は全ての電気を消して就寝した。
……。
……。
……。
……。
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【夢の中】
「……相棒。出番だぜ!」
《最後まで頑張りましょう!勿論、私もマスターに付いて行きますよ?》
「……アイリス! 負けないで!」
「兄貴! 頑張ってください!」
「よお! すまんな。我が息子よ!」
「アイリス。お前は最高だな。」
「ミーはユーのスペシャルなフレンドデース。」
「アイリス。最後まで希望を持つのです。」
……ん?
なんだ……。
流れるように……頭がクラクラする。
動けない……誰だ?
アイリスって?
聞いたことも無いぞ?
でも、サングラスとオッサンの声が聞こえたな……。
……まあ、いっか。
夢というものは自分の妄想の世界なんだ。
きっと……きっと…………。
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……。
……。
……。
……ん……んん。
朝……かな?
現実世界から戻ってきたかな?
なんて酷い夢だったんだ……。しれっと金縛り食らったし。
俺は【腕時計】の短針長針を確認する。
7時35分。
俺は夜間着から普段着の服に着替えて、朝食会場へ向かう。
勿論仮面を付けたり、サングラスを収納魔法に入れたりとそこそこ大変だ。
一般食堂ルームでは大勢の宿泊客でごった返していた。
冒険者の朝は早い。
(それにしても……昨日は余り居なかったのにどうして?)
《実は、夜の一般食堂を利用する人が多く無かったためです。イケザキ祭では、露店が非常に多くありました。そちらの飲食店を選んだ冒険者は多いです。》
なるほど、夜店を楽しみたかったからか。確かにそっちを取るわな。
しかし皆、朝早いな。
俺なんて……ふぁーあ、そこそこ眠いし……。
《早寝したのに何故なんです?しれっと11時間寝て、それでも眠いと言うことは、生活習慣のバランスが崩れていますよ?》
違う違う。
単に夢がひどかっただけ……。
それが不気味で不気味で……。
町の外に出たら、じっくり話すよ。
《期待しています。それより、あなたはこの村を何故わざわざ『町』と例えるときが多いのですか?ここが『町』では無いことは、あなたは知っているハズです。》
まあ、確かに【AI】には気になる疑問だな。
確かに俺はここが『村』だとは知ってるよ。
《だったら何故?》
ここ、村の割には広くない?下手したら都市より広いよ。暇つぶしにこの世界の地理の本を見てたんだけど、この村は世界で20の中に入るんだよ。
広さランキングと言う茶番の奴では。
しかも、財政では村の中ではダントツトップ。
下手したら普通の街の財政を楽に超える位なんだ。
《なるほど、『村』というより『町』という言い方をしたほうがむしろしっくりくる、そう言う事ですか?》
うん。
そんな感じ。
いつか本当に都市になりそうな気がするけどね。
《否定出来ませんね……。確かに、この村は他の村とは大違いです。では、私も『町』という捉え方の方が良いですね。》
村と言っても全然オッケーだと思う。掲示板では、国に町への申請をしているんだけど、門前払いらしい。
《どうして?この町はかなりの財政力がありますよ?》
それは俺にもわからん。
担当した人に話したらわかると思う。
《なるほど……わかりました。》
フゥー。
やっぱり話相手がいると会話が弾むな。
そんなこんな話を続けていているうちに、俺はとっくに席に付いて朝食【バイキング】を堪能していた。
パン(ジャム付き)
スクランブルエッグ
【ソーセージ】
【ハム】
【ゆで卵】
【唐揚げ】(今日のメインらしい)
【コーヒーゼリー】
サングラスと会話を続けながら、【バイキング】を堪能していた。
制限時間70分。
時間を全部使った結果……。
《集計します。パン4枚、スクランブルエッグ3つ、ソーセージ18本、ハム6枚、ゆで卵4個、唐揚げ8つ、コーヒーゼリーそこそこ。食べ過ぎです。》
昨日食べなかった分を挽回するように食べたため、かなり豪快に食べ過ぎてしまった。
他の宿泊客からは、
「あの人凄くね? もう俺の分を越えちまったよ。」
「あの食べ物、どこへ流れて行くのかしら?」
「やれやれ、若いもんは愚かだねぇ。そんなに食べ過ぎたら、魔物との戦闘中で全部戻してしまうんじゃないかな?」
「あの人。凄い。」
「すげぇなあいつ。こりゃあ俺も少し興味が沸いたな。」
とかいうひそひそ話が聞こえたのは、【ミニチャン】でほとんど全部聞こえている。
食べ終わった俺は、一旦部屋に戻って忘れ物が無いか確認した後、ドアの鍵を閉めた。
そして、鍵をフロントに預けた俺は、宿屋を出る。
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【商業エリア】
【商業エリア】にも、この町と外を繋ぐ門がある。
俺はそこから出ることにした。
冒険者達は、俺と一緒の方向に向かって歩く者と、この町に入って来たものとバトンタッチだ。
……門の前に来た。
外から出るときは、入るときと同じ様に、検問がある。
ここで、外を出ることが出来る証明が無いと、この町から出ることは禁止されている。
(まあ、俺は……そんな事をしなくても平然と町から出れたけどね。よい子はマネしちゃダメだ)
俺は収納魔法から、アレを取り出す。
少し騒ぎになりかねないが、仕方がない。
そして、検問を並ぶ冒険者達の列に並んだ。
20分後。
「ハイ、合格。幸運をお祈りしております。次!」
俺の前の客が検問を合格したようだ。
俺は検問員のそばに進む。
チェックは色々ある。
身体検査、身体異常調査、身分証明書。
それくらい?
だが、その中で一番俺にとってヤバイ奴があった。
身分証明書。
※此処まで読んできた読者の皆様はお察しください。身分証明書が【臆病者】にとって、どれほどヤバイか。
「身分証明書を提示してください。」
俺は少しビクビクしながらアレを出す。
アレというのは、冒険者組合という組織から出される一人前の冒険者になれる試験。
新米冒険者卒業試験<通称・冒険者認定試験>に合格した証だ。
これで通ることが出来る。
最後の関門を除いては楽勝なのだ。
「ん? ちょっと仮面を外してくれませんか?」
やっぱりそうきたか、俺は堪忍して仮面を外す。
(こうなるのはわかってたけどね……)
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※追記※
第1章残すところ後1話です。
最後の1話は少し前に遡ります。全く別人の視点です。
この話の続きは、2話後に続きます。
決して欠落している訳ではありません。




