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願わくばそれが、愛でありますように
彼女は涙を溜め、くしゃくしゃになった表情で「お願い」と僕に縋りついた。
「わたしを、あいして」
震える声。ぽろり、と涙の玉が頬に落ちた。
それと同時に、僕の胸が熱く震える。
ああ。
ああ、
なんて酷いんだろう。
君はボロボロになっているにも関わらず、僕は歓喜に震えた。
君は酷い女だ。
僕が君にどんな想いを抱いているか知っていながら。
残酷な願いを僕に頼むのか。
歓喜に震える僕が憐れじゃないか。
「お願い」
君に頼まれるずっとずっと前から愛していたのに。
僕の気持ちなんて君は知らない。
きっと、そこは重要じゃないんだ。
「わたしを」
睫毛が涙に濡れる。
「あいして」
もう、君を愛してる僕にどうしろと?
「愛してる」
それでも僕は言わずにはいられない。
愛してる。
愛してる。
君を愛してる。
例え、君の傷ついた心を癒す一つの道具であろうと。
君の望む本当の『愛してる』ではないとしても。
僕は君を愛している。
「わたしもあなたをあいしてる」
君のその嘘っぱちの愛さえも、胸が震えるほど嬉しいことを、君は一生知ることはないだろう。
それでもいい、と思う僕は本当にどうしようもない。
でも、今は――少なくとも今は、君の嘘に喜んで身を呈するよ。いつか本当に愛してる、と君が言ってくれると信じて。
「あいしてる」




