第3章:蝕まれた世界 第22話:因果の断絶
サクの放った一閃の極光が、黒と青が禍々しく交差し脈打つ「核」を真向から断ち割った。
瞬間、地下空洞のすべての音が途絶えた。
直後、核の傷口から放たれたのは、眩いばかりの純白と青の混ざり合った衝撃波だった。壊れた音源から漏れ出す不協和音のような高周波が空間を激震させ、核に繋がれていた無数の黒い触手と青い脈管が一斉に跳ね上がり、次々と爆ぜていく。
「あ……あは……っ!?」
肉の塊の上に横たわるカワの口から、青い体液とともに悲痛な叫びが漏れた。
核から解き放たれた圧倒的な破壊のエネルギーが、カワの肉体そのものを内部から破砕していく。皮膚を覆っていた真珠色の鱗が剥がれ落ち、浅い地黒の肌に蜘蛛の巣のような不吉な亀裂が走り始めた。
「僕の……僕の歌が……壊れていく……。サク……君が、君の手で……僕を消すというのか……!」
カワが絶望と愛執の混じり合った瞳で、血塗られたサクを見つめる。
だが、サクの眼差しには、もはや一切の迷いも揺らぎも存在しなかった。右目の半分を侵食の真珠色に染め上げたまま、サクは膝をつきそうになる身体を鋭く踏み込み、核へ深々と突きたてたナイフの柄を、さらに強く押し込んだ。
「言ったはずだ……お前の勝手な戯曲に、僕たちを巻き込むなと!」
「サク!! 水路がもたない! 早く離れろ!!」
サムの大声が落石の爆音を切り裂いて届く。
天井の巨大な石造りアーチが限界を迎え、大梁の如き巨石が次々と崩落し始めていた。地下水源の中枢を支えていた肉の塊が急速に縮み、黒い泥となって水面へと溶けていく。水都の街全体を支えていた地下大水路そのものが、埋没に向かって怒濤の勢いで落没を始めていた。
「ツカ! アキ! マキ! 退路を確保しろ! サクを回収するぞ!」
「了解っ!」
アキとマキが崩れ落ちる巨石の隙間を滑り抜けるように走り、サクの左右へ駆け寄る。二人は血と汗に塗れたサクの両腕を強引に抱え上げると、核の崩壊が巻き起こす強烈な引き波からサクの身体を引き剥がした。
「行こう、サク! カヤの……僕たちの生き直す場所へ!」
アキの叫びに、サクは最後に一度だけ振り返った。
黒い泥の深淵へと沈んでいくカワの姿。その胸からは真珠色の光芒が溢れ出し、崩壊の最中でありながら、どこか寂しげに薄い唇を動かしていた。
『……また……会おうね……サク……』
声なき言葉を残し、カワの肉体は膨大な水の波紋の中に完全に呑み込まれ、姿を消した。
「走れぇぇぇっ!!」
サムの先頭を切る咆哮とともに、五人の少年たちは迫り来る土砂と崩落の嵐を振り払い、地上へと続く唯一の階段——鉄扉の残骸めがけて、全力で泥を蹴った。




