第2章:侵食の季節 第20話:核脈
蠢く肉塊が、鞭のようにしなる関節を振り下ろしてきた。
石畳が破裂し、濡れた破片が飛び散る。
「引くな! 周りを囲め!」
サムが前に飛び出し、肉塊の振るう歪な腕を盾で受け止めた。重い衝撃に骨が鳴るが、歯を食いしばって押し返す。その隙を突き、ツカが弓を引き絞った。
「狙いは……あの青いところだけだっ!」
放たれた矢が肉塊の隙間を縫い、脈打つ青い臓器の直前へ突き刺さる。肉塊は不快な体液を撒き散らしながら暴れ狂うが、アキとマキが左右から同時に肉片を削ぎ落とし、核の露呈した中心部を剥き出しにさせた。
「サク、今だ!」
マキの叫びに応え、サクは地蹴り跳んだ。
粘液と鱗の混ざり合う腐臭の中、サクの視線はただ一点、明滅する青い核だけに注がれていた。
肉塊から生えた不気味な指先がサクの頬をかすめ、血が吹き飛ぶ。だが、サクは躊躇うことなく順手に握り直したナイフを、青い臓器の中心へ深く、深く突き立てた。
「ガ、ぁ……ッ!」
臓器が大きく痙攣し、刃の根本から青い発光が溢れ出す。サクは両手で柄を掴み、体重をかけて一気に刃を抉り抜いた。
瞬間、肉塊の動きがぴたりと止まった。
脈打っていた青い光がサーッと急速に失われ、ドロドロとした黒い体液へと変わっていく。再構成する力を失った肉塊は、そのまま二度と形をなすことなく、崩れ落ちたまま沈黙した。
「はぁ……はぁ……倒し……たのか……?」
ツカが肩で息をしながら、濡れた床に膝をつく。
だが、安らぎは訪れなかった。
核を破壊された衝撃に反応するように、神殿の床や壁を這っていた青い水脈が、激しく波打ち始めたのだ。ゴボゴボと不気味な気泡を立てながら、青い液体はすべて奥の闇へと一斉に逆流していく。
「水脈が……奥へ引き寄せられている」
アキが灯りを掲げ、奥へ続く漆黒の通路を睨みつけた。
「この先に……全部を操っている何かがある!」
サクはナイフにこびりついた体液を払い、静かに立ち上がった。
頬の傷から流れる血をよそに、
5人は言葉を交わすことなく頷き合い、水脈が収束していく神殿の最奥の重く開かれたホールへと足を踏み入れた。




