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食事2


 アリッサの言葉に、カイルの表情は途端に険しくなる。


「〝こちらの親切心で〟〝あげている〟だと?」


 怒気を孕んだ声と、鋭い視線に、アリッサはびくりと肩を揺らして続きの言葉を詰まらせる。


「ーー貴方がたが、今までどう言うつもりでいたのかは良く理解致しました。

その上で、誤解を解くためにお伝えさせて頂きます。


エミリアは正真正銘、俺の婚約者であり、次期伯爵夫人です」


 カイルの発言に、アリッサは絶叫した。


「カイル!何を言っているの?

私が次期伯爵夫人になった方が、各々の家に都合も良いってわかってるでしょう?」

「エミリアに落ち度が無いのに、メリットがある家柄から縁談話が来たから婚約破棄をするなど聞いたことが無いが」


「あるわよ!だってその子の家は没落していて、貴族とは言えないじゃないの。跡形も無いと言っても過言では無いわ。その状況で捨てられた令嬢なんて、ごまんといるのよ!」


「それは何とも外道な話だな。

ブラウン伯爵家は婚約者の後ろ盾の有無で傾く様な軟弱な家紋ではないし、由緒正しい騎士道を持ち合わせている家系だ。

こちらから何かを打診したわけでも無いのに、決めつけて婚約者を排除する様仕向けるとは、非常識極まり無いと思わないか?」


「な…な…。あ、貴女!

さっきから黙っているけれど、そもそも貴女が身の程を弁えてさっさと婚約者を辞退していればこんなことになっていないのよ!?」



 唐突に話題を振られたエミリアは、おろおろしながら言い淀む。


(仰るとおり過ぎるから何も言えないわ…実際、カイルの婚約者はアリッサ様の方が各方面にとって良い)


 そんなことをエミリアが思っていると、遮る様にカイルが言い放った。


「それを言うなら、アリッサも俺じゃ無い方が都合が良いんじゃないか?」

「そんなこと…カイルのお父様は王家に覚えも良いし…私、昔からカイルのことがーー」

「俺が、卑しい鑑定能力持ちでもか?」


 皮肉をこめた表情で、両手を広げたカイルに瞼をまたたく。

 いつぞやの晩餐で、自分が鑑定能力持ちは商人に多くて卑しいと蔑んだことを思い出した。


「あれは、まさかカイルが鑑定待ちなんて思わなくて…」


 アリッサが言い募るのを止める様に、カイルは片手を前にかざす。


「ーー以上の流れから、家政の一切を降りてもらうことにしたが…何か異論はありますか?侯爵夫人」


 俯いて、膝の上で手を握り締めている侯爵夫人に目配せをする。


 夫人は項垂れた様に目を瞑り、ポツリと呟いた。


「…ないわ」

 

「お母様!」



「今日が、最後の晩餐になりますね。


亡き母を思うと心苦しいですがーーもう、伯爵家には来ないで頂きたいのです」


「……」


「カイル!待ってよ、よく考えて「アリッサ、もうやめなさい。これ以上は、侯爵家と伯爵家での争いに発展してしまうわ。この様なことで、双方の主の手を煩わせる訳にもいかないでしょう」


 侯爵夫人はそう言ってカイルを見据えた。


「…侯爵夫人、俺は夫人に一つ感謝していることがあるんです」

「…?」



「本当に恐ろしいのは強い敵ではなく、味方のふりをした味方で無いものなのだと。今回の一件で俺は学びました」


「ーーっ」



 歪んだその表情に、かつてカイルの母の友人であった頃の顔を覗かせた気がした。




 


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