表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/26

銀狼と聖女

「銀狼と聖女?

知っておりますわよ。


何を隠そうわたくし、先程、孤児院にラファエル・アウレリスを探しに来ておりましたの」


「ラファエルを…探してた」


 エミリアは、腕の中にいる仔犬に、ぎゅっと力を込める。


「此処の孤児院には居ませんでしたが…その小説の話を持ち出すと言うことは、貴女も知っているでしょう?


将来この国に起こる事を」


 

「はい…」


「わたくし、これでも公爵令嬢ですから、貴族の義務として最低限将来の災厄の目を刈り取らなくてはと考えておりましたの。


…出来れば穏便に。

因みに、ヒロインである聖女の赤ちゃんはもう神殿から回収して、乳母に育ててもらってますわ」


「ーーラファエルが見つかれば、どうするお考えですか?」


 額から汗が伝う。

 仔犬を隠す様に抱きながら、息を呑んで、問いかけた。


 イザベラは、一白置いたのちに、答えた。



「本来ならーー国に災いをもたらす火種は消すべきでしょうね」


 イザベラは何の抑揚もない声で、ただ事実を述べた。


「ですが。


赤ん坊を殺せば、戦争は終わりませんわ」


「……」


「むしろ、隣国は怒り狂い、戦は激化するでしょう」


 淡々とした声だった。


「だからこそ、生かすのです。

保護し、国へ返す。

そして、その時に和平を持ち出す」


 エミリアは息を呑んだ。


「それが、一番〝得〟ですもの」



 イザベラは、まるで盤上の駒を眺めるような目で微笑んでいた。


 話を深掘りしてみると、彼女は前世二十八歳。


 今世では二十歳になるのだと言う。ご結婚の前にやっておくべき事が山積みで困っているらしい。


「わたくしが王妃になる頃には、戦争など終わっていてほしいのです」


 一瞬だけ、イザベラの声が柔らいだ。


「……平和な国でなければ、文化は育ちませんでしょう?」



 イザベラの数多ある主張を聞きながら、赤ちゃんに視線を落として、考えた。


 そして。


 これまで年上で頼り甲斐のある大人の女性が周りにいなかったエミリアは、イザベラのあけすけな話を聞いているうちに、現在の状況について相談しようと思えてきた。



「…イザベラ様、出会ったばかりで申し訳ないのですが…どうしても、正解がわからないご相談があります。

イザベラ様ならば、どうされるのか、教えて欲しいです」


「相談?ぇえ、わたくしでよろしければお伺いしても宜しくてよ。


先程から、わたくしが一方的にお話ししておりましたから」


「実は、今ーー」 




♢♢♢





「そうでしたのね、それは大変なところへわたくしと遭遇してしまいましたわね。

その仔犬…(狼だと思うけど)がラファエル。

…どうりで、この辺りの孤児院から何の情報も得られなかったわけですわ」


「…すみません。

結局私はーー何も出来ないくせにでしゃばっただけでしたね。イザベラ様がいらっしゃるとわかっていれば、迷いなく孤児院に預けましたのに」


(ラファエルったら、話の流れで仔犬化を解いて良いってわかって。…ないのかな?言葉が通じてる時と通じていないときがあるからなぁ…)


 イザベラが幾ら「ほ~ら、こっちを向いてごらんなさい」と促すが、エミリアにしがみ付くように背を向けたまま動こうとしない。





 こうして、イザベラの今後の展望を含めて深い話し合いが出来たときーー御者から声がかかった。




「イザベラ様、前方から何やら変な生き物がーー馬車の行く道を阻む様に立ち塞がってます」



(変な生き物?ーーまさか!)



 馬車の小窓から顔を出すと、前方にフェレ助が両前脚を広げてたっていた。


 その横には、カイルが手を前にして何やら魔法の盾を出している。




「エミリアを誘拐したら怒るフェレーー!」



 叫ぶフェレ助を、エミリアと逆の小窓から見ていたイザベラは瞳を輝かせた。


「あれは!ノケモンのフェレ助ね!!凄いわ!実態になっている。どうやって!?」


「あはは…」

(ラファエルの能力とはまだ、言えない…よね)


「あらあら。それにしても、何か誤解されてるみたいね。


馬車を止めて頂戴。これ以上進むと、あの盾の魔法で馬車を絡め取られて厄介なことになるわ」


「畏まりました」



 馬車が止まると、勢いよく扉が開いてカイルの姿が見えた。




「エミリア!無事か!?」


「うん、この通り。

誤解しちゃったかもしれないけれど、この馬車はお嬢様のお忍び用の馬車で…人攫いのものじゃないんだよ」

 



 おろおろしながら答えたエミリアに、カイルはほっと胸を撫で下ろした。 




(……そんな、心配しててくれたんだ…)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ