第四話 施設探検
「ここが学生寮、意外と広いんだな。」
学校付属の学生寮に無事に着いた。
一階から順にランクで分かれているようだ。
一階は受付や食堂、公共施設が整っているな。
二階はDランク用の部屋、三階はCランク〜、のようにランクで分けられてある。
Aランクが案の定5階にある。
階段の横に、水魔法を利用して作られた昇降機がある。
これならわざわざ階段を登らなくて済む。
昇降機の中は思っているよりも広く、人はおよそ13人は乗れそうだ。
「ひとまず荷物を置いて、もう一度施設探検とでも行こうか。」
昇降機に乗り込んで、4階のボタンを押す。
水魔法のせいなのか、足元が少しゆらゆらとしているが壊れることはないだろう、多分。
自分の部屋に着き、ドアノブを捻り開けた。
「これが…Aランク寮…。」
中は想像を絶するほどだった。
白いフカフカのベッドに、綺麗なクローゼット、ランプ付きの勉強机。
というよりかはそもそもの部屋が広い。
Aランクは他のランクとは違って部屋自体が大きくされているらしく、自分で装飾も可能ということだ。
特にこだわりが無いので、そのままにしておいた。
荷物を置き、もう一度昇降機に乗り込み施設探検へ向かう。
その前に、これからお世話になる食堂へと向かってみようか。
食堂は学生寮の一階に位置しており、ランク帯によって席や料理の内容も変わってくるらしい。
利用時間は朝の7時から夜の9時までとのことだ。
さっき試験が終わったばかりで、昼ご飯も摂っていない、ここで小腹を満たすにはちょうどいいだろうな。
どうやら食堂はバイキング制らしく、好きな料理を取れるみたいだ。
例えばDランクは、豚肉や魚、野菜まで、Cランクは果物やサンドイッチが食べられるようになるし、Bランクは大鯛のカルパッチョや、厳選された魔物肉を食べられる。
Aランクは肉の気象部位や「高級」と一目でわかる料理が食べられるようになるみたいだ。
魔物肉って食べていいものなのか?
そういうことは置いておいて、まずは気になるメニューをどんどん取ってみようか。
やはり魔物肉が一番気になるな、そもそも何の魔物なのか分からないが。
魔物はゴブリン、オークなどが食用肉として広まっているのだが…流石はロイヤルアカデミー、その二つのどちらでもないみたいだ。
まさかの大ムカデの肉とのことだ。
そんなもの料理として出していいのか?
結局ムカデの肉やローストビーフ、カルパッチョなど当たり障りのない料理を取って食べた。
美味いが、元々村で生活していたのでこんなに食べる必要が無かったと思う。
食堂を出て前からずっと気になっていた巨大図書館へと向かうことにした。
どうやら入学式は三年、二年生は登校日ではないらしく、来たい人は来ていいよ、という方式みたいだ。
よく廊下ですれ違うのはそういうことなのか。
「図書館はここか…。」
中に入ると、大量の棚、大量の本、木の匂い、まさしく図書館というところだ。
「凄いな、2階まであるぞ。ここなら風魔法の書類を見つけられるかもしれないな。」
案の定風魔法に関する書類は少なかったが、確かに存在していた。
一冊を手に取り、俺は読み始めた。
「古代から風魔法はあらゆる魔法の平凡、もしくは最下層として扱われることが多かった。それは何故か。風魔法使いで歴史に残る人物が誰1人いないからである。」
読み終わるのに10分ほどはかかっただろうか、大体の内容は把握できた。
もうちょっとこう、魔法のこととか教えてもらいたかったなぁ、という部分はある。
どうやら風魔法使いで強い人物が存在せず、古代より弱いままとして扱われているみたいで、そのまま現代へと進んだらしい。
確かに困った、風魔法使いで歴史に残る人物が少ないということは、現代に残す価値が少ないと同時に、書物に関することも減少することになる。
周りを見ると炎属性、水属性のものは棚一つ埋まるくらいには存在しているのに、風魔法だけ少ない。
どうやら魔法の開発は自力でするしか無いみたいだ。
学園の鐘が鳴る、どうやら夕食どきみたいだ。
「読んでいたらお腹が空いたな、食べに行こう。」
食堂には1〜3年生がごちゃごちゃに存在している。
年功序列というものは大きいらしく、基本的に3年生から食事を取っている。
「俺の分残るのか…?」
一抹の不安は残るが、とりあえず列に並んだ。
俺の番が来る時には人気料理は全て食べ尽くされていた。
渋々パンや野菜を手に取り机に向かい、席に座る。
「ねえねえ、アンタ、名前何?」
隣に座った赤毛の女子が話しかけてきた。
見るからにコミュ力が高そうな女子だ。
「俺の名前はアラン。アラン・トニックだ。」
赤毛の女子は満面の笑みで話す。
「アラン…これからアランって呼ぶわね!あ、言い忘れてた。アタシの名前はミア。フルネームはミア・ホリックよ。」
「ミアか、どんな魔法を使うんだ?」
「アタシは炎属性の魔法を使うわ。昔からホリック家は炎属性の名家として有名なのよ?」
知らなかったとは口が裂けても言えないな。
「ホリック家か、いいところに生まれたんだな。俺は辺境の村で生まれたからな。」
「そんなの関係ないわ、この学園に来れているだけで才能があるのよ?」
「…そうかもな。」
やれやれ、と言うふうにミアは俺に話してくる。
「『かも』じゃなくて『そう』なのよ。てかアラン、人に魔法を聞いておいてアンタは言わないの?」
「俺は風属性の魔法を使う。」
「風———っ、ごめ、デカイ声出るところだった。待ってアンタ、風魔法でここまで来たの?」
ミアはギリギリ口を手で抑えた。
「ああ。」
「なんでそんな素っ気ない反応なのよ。風魔法って…あー、その、1番弱い魔法でしょ?しかもアンタ、名家で生まれたわけでもないのに、よくここまで…。」
「俺が頂点になれば風魔法に対するイメージも変わるだろ?」
「…それは、そうだと思うわよ。でもアンタ、アタシがいるのよ?風魔法は炎にも水にも弱いのよ?」
「まあそうだな。」
「…本当に大丈夫かしら。」
「なんとかなるって。」
「なんとかなるで済んだら苦労してないのよ?」
額に手を当てるミア。
どうならミアはかなりの心配性みたいだ。
「そんなに心配なんかしなくてもいいって。」
「心配してないわよ!」
耳の先が赤くなりながら否定している。
「そろそろ食事の時間が終わる、早く食べるぞ?」
食べ終わり、トレーを返却口に渡す。
「聞くの忘れてた、アンタ、ランクは?」
「俺はAだぞ。」
「…ん?」
ごめん、もう一度?のように耳を傾ける。
「Aだ。」
「AってあのA?」
「そうだな。」
「…風魔法でAとか行けるものなのね。」
「ここにいるからな。」
「信じられないわ。」
ミアは額に手を当てて、ため息を漏らした。
「何がそんなにおかしいんだ?」
「風魔法ってそんなに威力も出ないし、見た目も地味だし、強いて言うなら取り柄は『見えにくい』だけなのよ?普通入学試験で威力測定の時にDかCまで弾かれるのよ。」
「でもここに俺はいるぞ?」
「アンタが規格外って話なの、こんな状況、教師も把握できてないわよ。」
「何はともあれいいランクには入れたんだ、損はないだろ?それに俺をバカにしてきた奴に見返す機会ができた。」
全く、というように微笑みながらミアは話す。
「……そう、なら、好きにしなさい。アタシは止めないわ。アラン、いい?これからアンタの敵はアタシだから!」
「負けないように適度に頑張りますよー。」
「これだけ約束して。アタシと戦う時は絶対に本気でやってちょうだい。」
「…しょうがねぇな、約束だ。」
「決まりっ!」
ひょんなことから名家の女子と友好関係を築くことができた、学園に友達がいない俺から見ればかなり大きな進歩だと言える。
食事を済ませ、自室に向かう。
「そういえば、風魔法なんかとつるんでて嫌じゃないのか?」
「アンタねぇ、最弱がAランクよ?それも村生まれの。アタシみたいに幼少期から修行をしてきた奴を出し抜いてAランクなのよ?アタシの好奇心が爆発しそうよ!」
やはり風魔法が一番上という事実は誰から見ても不思議みたいだ。
これからの学校生活の話や、様々なことを話しながら歩いていると、十字路にたどり着く。
「俺東側だから、また明日な?」
「アタシ西側なの、また明日ね!」
いい敵もできた、施設探検もした、テストもした、流石に濃ゆすぎる1日だった。
「ベッドに飛び込みたい…。」
身体的にも相当疲れているらしく、ベッドに入ってすぐに寝てしまった。
明日のことは、また明日考えよう。




