第三話 運命のテスト
やはり施設の中で一番気になるのは図書館であった。
風魔法について、何か書かれてることもあると思うからな。
その後、学園を一通り探検して、運命のテストの時間がやってきた。
風使いの俺としては、ここでいい成績を残してインパクトを残しておきたい。
教師からも舐められることは少ないだろう。
このテストが終われば、学生証が発行できるらしい。
説明を受けてきたが、学生証の色がランクで変わるみたいだ。
Aランクでは金色、Bランクでは灰色、Cランクでは青色、Dランクは赤色らしい。
DとAが一番目立つ色をしている。
立場が一番わかりやすいように、という意味なのだろう。
学生証のランクでも使える機能が段違いになるという話を入学式でマテリアからされていたな。
どちらにしろ、Aランクが一番いい機能が使えるらしい。
テストの場所は学園にある訓練場で行うみたいだ。
遠くから見て、審査員はおよそ三名ほどと言ったところだ。
訓練場は意外と広い。
どうやらどんな魔法が来ても耐えられるように、マテリア自身が設置した結界によって頑丈にされているため、なのだとか。
テストの形式としては、的に魔法を当てるだけ。
およそ7mほど離れた的にあたるだけなのだが、当てれる人は一発で当てている。
当たらない人はとことん当たっていない。
あれが所謂Dランクの生徒なのだろう。
テストのために並んでいる生徒がかなり多い。
俺は中盤くらいに並んでしまったから、一時間くらい経たなければテストには向かえないのだろう。
周りを見ると、時々新入生以外の姿を多く見かけることもあるな。
どうやら期待の新人がいるかどうか判断をしにきた、2年生、3年生などの先輩達らしい。
俺の番号は217番。
もうしばらく呼ばれることはないだろう。
そうして俺の順番が来た。
部屋の方から、野太い声が聞こえて来た。
「217番、アラン。入りなさい」
「失礼します。」
試験管は髭を丁寧に整えた老人、目元がキリッとした若い女性、屈強な体格の男性の合計三人だった。
真ん中に座っている、屈強な男性が話し始めた。
「君は風魔法を使うと聞いているが。」
「ええ、まあ、そうです。」
「少し期待しておくよ。風魔法でどこまで行けるのかを。何故なら、風魔法でこの学校に来たものは数少ないからな。」
俺が先例になってやるさ。
今回は絶対にAランクに入って見返してやる。
たとえ弱くても「風魔法だからな」、強ければ「風魔法如きが」の二択だ。
だが俺はもう強くなったんだ。
もう昔の俺じゃない。
たとえまぐれだとしても、俺はもう実力がついたんだ。
「あの的に向かって、魔法を打てばいいんですか?」
女性が淡々と話す。
「ええ、そうよ。的を射抜く位置より、的に『当てる』のが最重要よ。その後に威力や精度で判断するからね。」
なるほど、この試験の攻略への糸口が見えてきた。
つまるところ、的をぶち壊せばいい。
ただそれだけの話だ。
なら木っ端微塵にしてやろうさ。
「いつでも始めていいんですか?」
「ええ、貴方のお好きなタイミングでいいわよ。私たちはここでちゃんと見ているから。」
「風速圧縮」
風速圧縮は単純に風速を圧縮して、一度の魔法でより速く、勢いを強くする風魔法の上級バフ魔法だ。
次の一撃はダメージと弾速が桁違いの速さになるというわけだ。
「風刃」
目に見えないほどの斬撃を高速で繰り出す。一つ一つのダメージは本来少ないが、風速圧縮を使用している今なら話は違う。
「はぁっ!!!」
的に魔法が当たって、轟音と衝撃波が順番に来た。
目を開けるとそこには、見るも無惨な「元」的が存在していた。
俺の魔法で的が盛大に真っ二つに砕け散った。
いや、真っ二つどころではないな、的の付近も少し消し飛ばしてしまったようだ。
「嘘だろ、あんな、風魔法で…?!」
「……正直、私も嘘だと思いたいわ….。」
爺さんは目をこする。
「これほど長く生きてきたが、風魔法であの的を壊すものは見たことがないぞ。文句なし、わしはAランクで推薦しようと思うのじゃが…いかんせん驚愕すぎてな。」
風魔法は見た目が地味だ。
だからああやって盛大に壊すことによって、風魔法の「威力」と「強さ」を同時に相手に伝えることができる、唯一の手段なんだ。
女性は立ち上がり、二人に問いかける。
「でも、風魔法よ?ずっと昔から『最弱』と呼ばれる…」
そんな女性を受け流し、男が爺さんに語りかける。
「俺もそう思うぜ、ホランの爺さん。前例がないだけで、別にAランクをダメだとは言っちゃいねぇ。こいつは俺から見ても本物だ。」
「ちょっとガルド、正気なの?」
ガルドと呼ばれている屈強な男は「強ければなんでもいい」という精神らしく、女性の性格とはあまり合っていないようだ。
「ああ、正気さ。そういうミシアこそ、あいつの魔法を見てなかったのか?」
「っ、それは違う、けれど…。」
ミシアはどうしても認めたくないようだ。
自分の先入観が間違っていたという証明がプライドを傷つけるらしい。
「じゃあAランクでいいじゃねぇか。」
ガルドが俺のところに近づいてくる。
「おい坊主。アランとか言ったか?俺の名前はガルド。この学園で体術をメインとした授業をしている。風魔法でここに来るやつは意外と多かったが、この試験でここまでやったのはお前が初めてだよ。」
「ありがとうございます…?」
ガルドは微笑んで肩を叩いてくる。
「それでいい。若い頃はもっとどっしりと構えておけ。それとアラン。お前はこれから『唯一』の風魔法の『Aランク』だ。先輩達が聞いたらどうなるかな。」
そうだ、前例がなかったんだ。
「覚悟しておきます…。」
「いい言葉を聞けた。今はそれで十分だ。学生証、受け取りに行ってこい。お前は強い。俺ら三人から見てもな。」
「そうじゃよ。」
「認めるしかないわね…。」
「ガルドさん、行ってきます。」
そうして試験会場を後にした俺は、学生証を受け取りに一回のフロアに戻った。
受付がニコニコと微笑みながら対応をしてくれる。
「おはようございます。学生証の発行でしょうか?」
「先程試験を受けたばかりで、学生証を発行しにきました。」
「了解です。今から資料と水晶を準備させていただきます。資料にはご自身のことを、水晶では推定魔力量を測定させていただきます。」
数分後、受付が書類と水晶を持ってきた。
水晶は淡く紫色に光り輝いており、手のひらサイズより少し大きいくらいだった。
「先に書類の方をお願いいたします。」
書類には名前、生年月日、自身の所属している学年、そのクラス、使用する魔法、など一般的に書くものと同じであった。
書類に記入する上で、受付が話しかけてきた。
受付は、少し声を抑えて、しかし、少し興奮気味で話し始める。
「風魔法って、本当なんですか?あ、その、どうしても気になりまして…風魔法を使う人は珍しくて、あまり戦闘をしているところを見たことがないんです。」
「ええ、本当ですよ。周りにも風魔法がいませんし、どちらかといえばマイナーな魔法なんです。」
ああ、というように受付は納得したらしい。
「そうでしたか、少し勉強になりました。ありがとうございます。」
書類を書き終え、受付に渡した。
「次は水晶で測定していただきます。水晶の上に軽く手を置いて、そのまま動かないでください。動いてしまうと、ブレてしまいますので。」
「分かりました。」
言葉通りに水晶に手を置いた。
「それでは、測定いたしますね。」
水晶が光り始めた。
「何この反応…見たことない…!」
パリ、と水晶にヒビが入った。
「ま、魔力量…推定…1万超え…。」
「1万って、どのくらいすごいんですか?」
鼻息を荒くしながら話しかけてくる。
「すごいなんてものじゃないんですよ…!一年生の平均の魔力量がどれほどあるか知っていますか?」
「いえ、全く…耳にしたことも。」
「1000です。」
耳を疑った。
そんなに早く歳をとった覚えはないのだが?
「すみません、聞き間違いでしょうか。」
「1000です。大事なことなので2回言いましたよ?」
どうやら全世界での平均的な魔力量は1000〜2000の間らしい。
魔法使いとして戦場に立つものは3000〜4000。
賢者や大賢者になると6000が平均となるみたいだ。
「賢者超えの魔力量が一年生から…歴史的瞬間なのに…水晶にヒビが…。」
「それって結構…高いというか、在庫があまりない感じですか?」
「国から貰ってるんですよ!こんな簡単に破壊されたらダメなんです!」
「す、すみません…。」
「…貴方に怒っても、筋違いですね。話は戻るんですけど、これから五分後に学生証をお渡しできる予定なので、しばらくお休みください。」
五分後、金色の学生証を貰った。
「本当に金色なんですね。」
「ええ、Aランクだと基本的な施設はもちろん使えますし、Aランク専用の施設もございます。是非一度はお立ち寄りください。」
学生証も発行できた。念願のAランクにもなれた。これ以上にないくらいに幸先はいいが、これから転落していく可能性もある。
十分注意しなければならない。
風魔法は最弱だ、他に強い魔法が来た時、特訓していなければ負ける。
今日は一度、学生寮へと向かい休むのだった。
風刃:風魔法中級の魔法である。アランは幼少期に風魔法で剣の素振りを真似していたところ身についた魔法である。
風圧圧縮:風魔法上級の魔法である。幼少期、向かい風が強くて前に進めないことを疑問に思ったアランが一年研究して辿り着いた魔法である。




