21 収束
ブルームとの停戦が確かなことになっていく。
今回の戦いは双方痛み分けだが、明らかに非はブルームにあった。
我が国の王太子には婚約者がいたが、急遽ブルームの姫が輿入れに決まる。すげ変えだ。
つまり彼の国の王女は人質。
他にも開戦派の子息が人質として送られ、賠償金の分割払いが決まった。
私たちはまだ領地で戦後処理と復興にいそしんでいる。
こちらは落ち着いてきたが、向こうの国は大変そうだ。
クロードは兄を退け玉座に座るが、貴族をまとめるのは大変だろう。
「密約の借りを返せと言ってきたぞ」
ある日、兄が手紙の相談に公爵邸までやって来た。
「え、王権につける協力はするけど王権維持に協力する約束はしていませんよね」
「協力は1年だ。まだ期間が残っているから、支持率の向上を頼まれた」
国内にはまだガナルゾ派が根強いらしい。中央教会の力も残っている。
そして未だに他国と交戦中。治政が安定するのはまだまだ先になるだろう。
「それなら王女様との縁談でしょうか。後はプロパガンダかな」
小説や劇で王弟の活躍を披露し元王太子をおとしめる。
「デイジー様なら小説を書いていたから、頼んでみますか?」
私はサロンに彼女を呼んでもらう。
「デイジー様は小説を書いていたと思いますが、聖女が偽物で本物は別にいる話は書けないでしょうか?」
頼んですぐできるわけじゃないのは知っている。でも使えそうな手は使わないと。
「さすがに1から考えるのは時間がかかるわ」
やっぱり。
「せめて王太子の元婚約者で今は辺境に嫁いでいる方を聖女にするのならともかく」
あれ? 何か聞いたことあるな。ちょうど良い話を知っているんじゃね?
その設定で頼んだら、デイジー様はたった6日で小説を書き上げた。
(え、物語ってそんな簡単にできるものなの?)
題名はやたらと長く、『辺境に追いやられた元婚約者ですが、どうやら真の聖女は私だったみたいです』とか言う。
「民衆への分かりやすさを重視したのだな」
「なるほど、それならしょうがないですね」
兄は喜んでいる。さっそく印刷に回し量産させ、隣国に送った。
「内容が面白いし、我が領でも販売してみるか」
「え、わたくしの薄い本が、出版?」
ローアン様の提案にデイジー様は目を丸くして喜んでいる。
クロードからは感謝の手紙が届けられた。小説はかなり喜ばれている。
『私が前面に出ていないため反発も少ない。中央教会の勢力は二分できそうだ』
もう一つの戦争も冬季に入ったことで休戦が成り立ったとか。
そして私には上質な絹が贈られた。
『もし婚礼が執り行われるのなら使って欲しい。お前には世話になった』
ありがたく受け取る。
そしてダッシュは騎士爵を取った。
今回の戦功を表彰されたのだ。
兄も伯爵位をたまわり領地が増える。
父と2人でも大変そうだから、私にも補佐として働かないかと打診が来た。
「新居にも困らないので受けようかと思っています」
デイジー様に伝えたら、困らせてしまった。
「そんなぁ、ブライアがいないのはつまらないわ。旦那様のかん違いをもう楽しめないだなんて」
もう十分に楽しめたでしょう。




