20 報告
「ブライト良く戻って来た」
ローアン様にも迎え入れられて、報告を始める。
聖女を口説こうとしたが失敗したこと、クロード王弟と話をつけたこと。
「敵軍はどうなりましたか?」
「ああ、お前の追撃に王太子が加わっていたらしくて重症らしい。爆発はこちらからも確認した。王弟殿下とは停戦の協定が結べそうだ」
兄は爆発を合図に進軍を決めた。今回の戦闘は私が逃げる時間を稼ぐ形だけの予定だったが、勝機をみすみす逃がす兄ではない。
我が軍にも公爵家の勢力が加わり、ギリ1000を超える兵が集まったのだ。
クロードの軍はそれでも善戦したが、乾いた草原全体に炎が広がる。混乱はさけられない。
そして炎は陣営地を囲む木柵にまで燃え移る。基地に残っている兵が少ないせいで、消火しきれず陣営地は全焼した。
兵が少なかったのは王太子が私の追撃に大勢連れ出したから。
私たちを獲物に、狩りでもするつもりだったのだろうか。騎兵だけでなく従者も後ろを追って来ていたのだけれど、もれなく熱風の餌食に。
後詰を残しておくのは常識なのだが。
つまりは私たちの圧勝。停戦に一番必要な条件が成り立った。
聖女ビビアンは逃げ出せたが、私の爆発に巻きこまれた騎兵に強硬派が多かったらしい。
王太子も戦線離脱したことから、クロードはひとまずの停戦をまとめる。
しかしまだ停戦であって終戦ではない。
戦争とは始めるのはたやすいが、終わらせるのはとんでもなく大変なのだ。
王太子1人を倒すだけではうまく行かない。悪者を倒せばそれでめでたしめでたしになど、現実では絶対に起こらない。
私は公爵領の代官屋敷を襲撃したことも正直に伝えた。
「一刻も早い連絡が必要かと、馬を奪ってしまいました」
「なんと‥それはこちらの落ち度だ、お前が謝ることはない」
よし、あの代官クビになるな。
汗をかきながら詳細な報告を済ませると、兄はダッシュと肩を組んだ。
「で、何もしていないよな」
私はつい目をそらしてしまう。
兄は目をとがらせた。
「不可抗力だけです。お気になさるようなことは何も」
「まったく何もないわけじゃないんだよな、きっちり報告はしてもらう」
兄から漏れ出る殺気がヤバい。
「何があったんだ」
ローアン様はいつも通り分かっていない。
今は上司より兄の説得だ。
「別に、ケガの手当てで足にさわったことと、添い寝しただけでしょ」
ふむ、と兄はあごに手を当て私たちを交互に見る。
「嘘は行っていない、が全部は話していないな」
「ま、まあハグくらいは」
「寒かったので。それ以外は特にありませんよ」
ダッシュさん、あなたよく真顔で言えるよね。
私は恥ずかしさで顔をおおっちゃうのに。
「せっかく婿に向かえてやろうとしているのに良い度胸だ」
「その程度のことで?」
兄はうなる。
「必要なのは分かった。だが下心がないとは言い切れないだろう!」
ダッシュは兄を振りほどき、私をそっと抱きしめた。
「ちょ、ちょっとここでしなくても」
耳まで真っ赤になる。私の狼狽など気にも留めず、ダッシュは兄へ不敵に笑った。
「ふふ、下心があるのはお互いのようですから」
「ぐぬぬぬ」
バン、とダッシュが殴られた。兄がいる方向とは逆側から。
殴ったのはローアン様。
「ブライトのことを弄ぶんじゃない! こいつの心は乙女なんだよ!」
‥心だけじゃなくて正真正銘の乙女です。
兄とダッシュは驚いている。状況が分かっているのは私だけかもね。
ローアン様からしたら、ブライアと結婚するつもりのダッシュがブライトも口説いている状態だろう。




