19 お家に戻るまでが任務です
町にたどり着いたからと言ってまだ仕事は終わっていない。
家に帰って情報を渡すまでが斥候なのだ。
まず代官所に向かったがボロボロの姿に門前払いされそうになった。
「お前らのような風体の者を通すわけにはいかん」
「戦地から来たのだから当たり前なんだよ。それとも何か、私たちを追い返すと? 公爵家の使用人にしてはしつけがなってねえなあ、ああ゛?」
少々ドスをきかせたら通してくれた。
扉をくぐっても取次をしてもらえない。
「代官殿にご予約はおありか」
ここまで来て何なんだ注文の多いホテルか。
私は勝手に屋敷をうろつき、それっぽい場所を探し当てる。
「誰だ貴様は」
「センタリオン子爵家のブライアと申します。至急ローアン公爵令息と連絡を取りたく戦場から参りました」
その代官だが、こちらを一目見て顔をしかめやがった。
小者感が半端ないな。
「公爵家か子爵家の証はおありかな」
「ローアン様に確認を取ってくれればいいでしょう」
「ふ、貴族の令嬢だなど分かりやすい出まかせ、信じられませぬなぁ」
私の言葉は聞き入れてもらえなかった。すっごい上から目線で馬鹿にされる。
(相手の力量を一目で見ぬけない奴、嫌い)
警戒されるのは分かるが、確認すら怠るだと?
戦時中なのに情報をおろそかにするなど、考えられない。
大河で隔てられた安全地帯にふんぞり返りやがって。
こんな奴と交渉を続ける必要性ってないよね☆
「分かりましたわ。後で公爵家から怒られることにいたします」
イラっとしたので実力行使させてもらおう。恋と戦争は全てが許される‥はず。
腹パン一発で代官は気を失った。剣を分かりやすく首筋に当て、周りの人間に命令する。
「馬と食料の用意を。金も寄こせ」
やっと必要な物が手に入った。
その後は街道を急いだ。追手がついて来たけれど気にしない。公爵邸まではその日のうちにたどり着けたのだから。
「代官屋敷だけでなく公爵邸も襲うつもりか、賊め」
馬から下りたところで攻撃されたけど、とってもゆっくりな動きだったから適当にのしておく。
「ブライア!」
屋敷に入ると、デイジーやオスカーが出迎えてくれた。
王都から人員が送られているようで、広い邸宅が人であふれている。
「こちらで負傷兵の看病を行っているの」
「ブライアもケガしてるじゃん、大丈夫?」
やっとまともにケガの処置をしてもらい、衣服も改めた。
「こちらの方々は、ケガをなさったようには見えませんが」
「お気をつけください、賊が侵入しまし‥あれ?」
身だしなみを整えた私に、代官の家来はアタフタしている。狼藉者と断定した相手が本物の貴族令嬢だったのだから。ザマア。
私たちは馬を替え城塞に向かった。
「ライ、無事だったか!」
ここでは超スムーズに指揮官の元へ通される。
「まあ何とか」
「人質になった時は生きた心地がしなかったぞ」
(嘘つき)
兄の言葉に私は苦笑いする。
「いざと言う時は私が魔法を使うことを狙っていましたよね」
兄が私の潜入を許し、人質交渉に乗り気じゃなかった理由。
もし私が命とか貞操とかの危険におちいったら、制御不能の魔法を暴発させていただろう。
たぶん敵の基地はそれで全滅だから。
「そんなことは‥考えてはいたが」
「でしょうね」
妹じゃなかったら自爆を命じられていたかもしれない。
注文の多い~お話や恋と戦争は~みたいな格言は似たようなものがあるとします。




