18 暗闇で、2人きり
眠れるとは思わなかったが、多少の睡眠は取れたようだ。目が覚めたことで気がつく。
(寒いし足が痛い)
しかしまだ辺りは暗く、起きる時間ではない。痛みをこらえながら寝返りを打った。
「眠れませんか?」
隣から声がかかる。
「まあ傷口が痛くて」
「じゃあ魔法をかけ直します」
暗い中、私たちはモソモソ起き上がった。
ダッシュは呪文を唱えている。
見えないからか、彼は昼間よりゆっくり足をさわっていた。
彼の温かい手が傷の場所を探り当て、痛みが治まる。
「これは‥マズいですね‥」
「そんなに重症だった?」
痛みが楽になった私は眠気でボンヤリするが、ダッシュの声色から緊張が取れない。疲れたのか息遣いも荒くなってきた。
‥いや、これは疲れたんじゃないな。
傷がない場所までなでられ始めて、さすがに鈍感な私でも気がついた。
(‥あーあれか? あれなのかな?)
『わたくしの姉が結婚してね、』
学生時代、姉のいる同級生が夜の寮でコソコソ教えてくれた、あれ。
『あらブライアは知らなかったの? そっち方面はお子様なんだから』
目を丸くした私を友人はおかしそうに笑ったものだ。
今の私なら知識くらいはある。
町で襲われかけた少女を助けたり、同僚たちの卑猥な会話を聞いているのだから。
しかし当事者になったらあせるのは仕方ないじゃん!
(どうしよう、このまま流されたいけどでも嫌だし)
どっちなんだ自分。
ダッシュだっていつもは飄々と私のアプローチをかわす癖に、こんな予期しない時にグイグイ来ないでよ!
「もう平気。やめていいから」
私が声をかけると、ダッシュはハッとしたように手を離した。
‥超気まずい。こんな時どうすればいいのか、誰からも教わってない。
「冷えてしまいましたね」
「日の出前は寒いからね」
私は毛布を巻きなおしてぶるっと震える。
「危機を乗り越えたと思ったら気がゆるんで、その‥申し訳ありません」
「ま、まあ私も本当に嫌なわけじゃないけど‥で、でも今じゃないって言うか、その」
「はい分かっています」
物分かりの良い彼にホッとすると同時に少しだけさみしい。
恋ってどうしてこう感情がままならないのだろう。
私はポスンと藁の上に体を横たえる。
ダッシュの影は肩にかけた毛布を両手で広げていた。
「これくらいなら許されるでしょうか」
「え、なに」
彼のつぶやきが分からなくて聞きなおそうとした瞬間、彼の息が私にかかる。
(あったかい‥)
私は毛布ごとダッシュに包まれていた。
「も、もちろん!」
許す。誰が何と言おうと許す。
正直彼との関係はもちょっと進展したって良いのだから。
「おはよう、よく眠れたかい」
おじさんの声で起こされた時はもう日が昇った後だった。
温かいミルクと冷めたイモをもらい、町の位置を聞く。
近場の町までは距離があるが、頑張れば行けるだろう。
そしておじさんはボロボロだけどズボンをくれた。
「そんな乞食みたいな恰好じゃあかわいそうだしな」
「ありがとうございます。さすがに町までこれじゃ恥ずかしかったんで」
「本当に助かりました」
私につづきダッシュまで深くお礼を言っている。
「良かった。これで目のやり場に困りませんね」
移動を始めて、彼のつぶやきに顔が赤くなる。
(そうだったスネむき出しだった。ストッキングもはいてない生足見られたし触られた!)
ケガをした方の足には包帯を巻いただけ。
どうしても必要な場合は恥ずかしさを感じないけど、窮地を脱した後は急激に来るものなんだな。
HPとMPを大量消費すれば私にだってイチャイチャシーンが書けるのですよ!




