15 手紙
「君って人は‥とんだ人たらしですね」
聖女と別れると、ダッシュにあきれられてしまった。
「このくらい我が家では普通だよ?」
人を魅了できない者に軍を率いることはできない。
コミュニケーション力は幼い時よりたたきこまれていた。
負傷兵が次々と帰還する。
やはりただの白兵戦では我が家の精鋭にかなわないだろ。
クロードも戻って来た。
クロードの天幕は王太子と聖女に譲ったので、一般兵と同じ天幕だ。
私とダッシュも連れこまれる。
「くそ、何なんだあの城塞。ああ、そっちの優勢だよ」
クロードはボロボロにされ悪態をついている。
「で、どうだった聖女様は」
「仲良くはなれましたが、説得はまだです」
詳細を伝えると、クロードの眉が上がった。
「私がお前を気に入っているのか‥なら今夜はここで休むか?」
それは構ないが、隣から殺気がもれるのはどうにかしたい。
「寝首をかきましょう」
ダッシュが私にしか聞こえないようささやくし。
「あー従者同伴で良ければ」
私としては妥協点を提示したのだが、男2人は微妙な顔をする。
「まあ何かあったら俺が‥」
寝る時は毛布を体に巻き付けての雑魚寝。色気のカケラもありはしない。何もないんだから何もしないでくれ。
念願である好きな人との添い寝なのに、ドキドキが違う意味になってしまった。
翌日、クロードは軍を立て直すため砦を歩き回っている。
昨日大人しく帰りを待っていたからか、基地内行動の自由も認められたまま。
(このまま逃げたい~)
でも有効な作戦があるのならやりとげたい。
「お早うございます、聖女様」
聖女を見つけたら、はかなげにほほ笑む。
ビビアン嬢は隣の王太子より私へ顔を染めた。
「なよなよするな、気持ち悪い」
王太子は無視して聖女にのみ話しかける。
「聖女様と王太子殿下は仲がよろしいのでしょうか」
「ふ、愛し合っているに決まっているだろう」
王太子は大げさに聖女の肩を抱いたから、私はすぐ悲し気な表情を作った。
「やはり高貴な身分でないと、聖女様のお相手は務まらないのでしょうね」
「当たり前だ!」
意気揚々なガナルゾ王子は聖女の困り顔に気づいていない。
その日はそれ以上聖女へ接触できなかった。
クロードの天幕に戻ると、若き将軍はビクッと持っていた手紙をかくそうとした。
「なんだお前か」
私を見てホッとしたと言うことは‥
「王太子に不利益な手紙でも来ました?」
問いかけは否定されない。
手にした紙をくしゃくしゃにして火を点けようとしていたから奪い取ってみた。
「何をする!」
私が文面を読んでいる間、ダッシュがクロードをけん制してくれる。
王太子側にバレたくないようで、クロードは少し暴れたが声は出さない。
手紙は反戦派筆頭の辺境伯が、クロードを持ち上げようとしている内容だった。
彼の屋敷には元王太子の婚約者が身を寄せていて、彼女を真の聖女とすれば王座はたやすく手に入るとかなんとか。
「真の聖女だなんて話、うまくいきますかねえ?」
「民意の操作はたやすい。教会の方は自領の司祭でも丸めこむのだろう」
「民意か‥娯楽にしてしまえば流布はすぐできるかな。芝居とか小説とか」
クロードの渋面は深くなった。
「でも国は二分されますね」
敵国の人間に弱みを見せたくはないのだろう。
私は彼の説得を再開する。
「以前提案しましたが、私たちは停戦をしたいんです。受け入れてくれるならあなたが王座を狙うのも応援しますよ」
「お前に決める権利はないだろう」
まあそれはそうだが。
「兄やオールデン公爵への口利きはできますが」
「家族は分かるが、公爵に意見が言える立場なのか?」
「はい、私令息とマブダチなので」
ドヤ顔で言い切ったらあきれていた。
雑魚寝を添い寝と言い切る主人公でした。




