10 捕虜に
「何をしている!」
ゾワっと背中に悪寒が走った。
私は殺気にふり返る。豪華な甲冑に身を固めた背の高い男が私に向かって駆けて来た。
全機壊すのはさすがに時間がかかりすぎたようだ。
私も剣を構えたがすごい力で打ってくる。力だけなら兄に匹敵するだろう。
剣筋は単純だが腕がしびれた。数合打ちあう間に他の兵士も呼び寄せられる。
「動くな」
剣の切っ先が複数せまり、私は拘束されてしまった。
「それで貴様が魔導士を殺し、我が軍の兵器を台無しにしてくれたのだな」
銀色甲冑の男は私を天幕の1つに引きずりこむ。
ガタイが良いのは分かっていたが、兜を脱いだ顔も整っていた。
(おそらくこいつが指揮官だな。見惚れられるわけだわ、声も低くて良い。黒髪に金色の瞳が光っているのもきれい)
最悪の状態なのに心はくだらないことを考えてしまった。
「名は?」
熱を一切感じさせない冷徹な声が私に降りかかる。
黙秘したらすぐ殺されるであろう圧と共に。
「ブライア・センタリオン」
正直に答えた。私が子爵家の娘だと知らせればすぐには殺されないはず。
「子爵家の者か」
銀色に光る鎧の戦士は私に殺気を向けた。
「あそこの息子はウォルトだけかと思ったが、ブライアンなんて次男もいたか?」
下調べは済んでいるのだろうが、嘘を言っていると思われた? あれ、私本名教えたよね?
「ブライアンじゃなくてブライア! 次男じゃなくて長女!」
戦士は「えっ」と私を二度見する。
「女?」
「そう!」
お前もか愚か者め。
武装解除と性別の確認が女性戦士の担当にしてくれて助かった。
私は彼女たちの天幕で一晩を明かす。
思ったより好待遇だ。
ただ食事だけは粗末だった。周りの騎士も同じ内容だから、食料の不足は深刻なのだろう。
食後は予想通り尋問タイム。
「子爵家の兵数はどれくらいだ」
素直に答えるか、馬鹿め。
「私を無傷で返し、兵を退いてくれれば食料援助くらいはできます」
「それはできぬ」
「ガナルゾ王太子の命だから?」
男はあきらめたような笑みを浮かべる。
「それ以上無駄口をたたくのであれば、無傷では返せぬな」
やべ。
「えっと兵の数でしたっけ? いっぱいいたからよく分かんないですね」
パンっと音を立てて私の横っ面が張り倒された。
目の前が一瞬真っ白になる。
「命が惜しかったらまともに答えることだな」
うぉ、目がヤバい。しょうがないか。
「200人くらいですよ~」
「たったそれだけだと? 偽りを申すな!」
怒号が響くけど、嘘ではない。
「本当ですって。うち子爵家だし、そんなたくさん兵を抱えておくのは無理ですから」
いぶかしむ司令官だが、常備兵の数はそれくらいだ。
それでも兵の維持に借金までしていたのだから、我が家にとって限界の数。
まあ、あの城塞にこもっている数、ではあるけれど
「そりゃ徴兵はしていますから、今頃はもっと増えてるんじゃないですか?」
「それでも我が軍の攻撃をそれだけで防ぐとは」
それが城塞の威力なのだよ。教えてあげないけど。
「知っていることは全て話すのが身のためだぞ」
う、バレてる。
私としては情報を小出しにしながら時間を稼ぎたいのだけど‥
「はあ、じゃあ私を大切に扱う方がそちらの身の為ですね。もうすぐ王都から大軍が到着して攻勢に切りかえますから」
「残念だが、大軍であれば進軍速度は遅くなる。来るのはもうすぐではない。こちらはその前に砦を落とせばよい」
はい、その通り。
「まあそれが簡単にできればですけどね。家の兄を舐めないで下さい」
尋問者にはまだ分かっていないようだが、数日であれば城塞の防御は鉄壁だ。
迂回して我が領に深入りしようとしても、同じような城塞がもう2つあり、そちらにも何十人かが守っているはず。
川を越えるのに適した地点は完全に抑えてあった。
「砦は簡単には落ちませんよ。大体、隣の公爵軍はもう到着する頃ですし」
ローアン様は人員をかき集めている。広大な公爵領から集めれば1000人くらいは来る‥はずだ。
ブルータスお前もかを使いたかったのですがこの世界にブルータスいないので、愚か者にしました。
ブルータスの元々の意味は阿呆だそうです。(ローマ人の物語Ⅰより)




