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女性嫌いの令息を護衛している男装女子ですが‥なんか思ってたのと違う?  作者: ノーネアユミ
2章

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9 破壊活動

 邪魔になる荷物は宿屋の馬小屋に隠した。取りに戻る余裕はあるのか分からない。

 星の位置で方角を確かめながら馬を進ませる。

 出城の明かりが見えてきたところで馬から下り、忍び寄った。


「柵越えできそう?」

「もちろん。浮遊魔法も使えますよ」

「うわ、万能じゃん」


 なら話は早い。

 私はダッシュの手を借りてジャンプし、彼は浮遊魔法で柵を登る。


「これじゃ公爵家にも忍びこめるはずだね」

「それはこちらの言葉です」


 2人、お互いに忍びこんだことを思い出す。

 無事帰ったら、公爵家の柵に魔力探知を施すよう進言しなくちゃ。



「ただ浮遊魔法は難しいので身体強化との併用はできないんですよ」

「じゃあ浮いている時に攻撃していたら勝てたかもね」


 雑談を続けるのはリラックスしている方が敵の注意を引きにくいから。

 陣営地の中は武装した兵や人足で混雑していて、私たちは簡単にまぎれられた。



「その荷物はこっちだ」


 人ごみを見つけ、後をついて荷物持ちに加わる。

 いくつもある小屋や天幕のすき間に隠れて話を聞いた。


「なぁ聞いたか? 今回の戦争はガナルゾ王太子の思い付きで始まったんだとよ」

「ああだから急に始まったのか。王族ってのは勝手なモンだな」

「周りは反対しなかったのかねぇ」

「反対派筆頭の婚約者は辺境に追いやられたって噂だぜ」


 開戦の事情はすぐ分かった。

 隣国ブルームの王族がヤバいとは知っていたけれど、そこまで愚かだったとは。



「食料はこれだけかよ」

「今、貴族たちから徴収させている、もう少し待つんだな」

「はあ、1500人もいるんだから初めから用意しておけよ」


 正確な兵数と、食料が足りないことも分かった。

 後は魔法使いの部隊をたたくだけ。




 私たちは魔力感知を高めながら陣営を動いた。

 

「ここですね」


 ダッシュにうなずき小屋に入ると男が2人で火矢に呪文をかけていた。

 まずダッシュが1人を不意打ちし、もう1人は声を上げる前に私のナイフが貫く。



「初めてでもないでしょうに」


 ハアハア肩で息をする私へ、返り血をぬぐいながらダッシュが問う。


「正面から倒すのとだまし討ちは違うから」


 さすがに暗殺はやったことがなかった。胃の中の物を戻しそうになる。



「魔法兵士がこれだけとは考えづらいですよ」

「そうだね。交代制なんでしょ」


 さすがに一塊では居てくれない。

 用意されていた火矢はたたき折ったが、せめてバリスタも破壊したかった。




「陽動頼める? 私はそのスキにバリスタを狙うから」


 他の魔法使を探して暗殺するより、武器を破壊する方が性に合っている。


「退路は?」

「あなたは私には構わず馬で逃げて。どちらでも情報を持って生還すれば良い」

「君を置いて逃げては俺の命が保障されません。兄君に殺されます」


 私はため息をついた。


「重い道具は砦の奥にはしまわないでしょ? 私は戦場側に向かう。あなたが反対方向で騒ぎを起こしてくれれば、私だって逃げやすい。それに危険性は同じだから」

「分かりました‥死なないで下さいね。俺のために」



 目立たないよう私は砦の前方に向かう。

 やはりバリスタはそちらにあった。

 もちろん見張りがいるからうかつには近づけない。


 待っていると煙の臭いが。

 ダッシュが火を点けたらしい。

 騒ぎが大きくなり、見張りも1人だけになる。


(今だ)


 私は残った見張りの前に躍り出て気絶させる。

 そしてバリスタの推進力の元である縄の束を切った。これですぐには使い物にならないだろう。


 炎はどんどん大きくなる。ダッシュはうまくやっているようだ。

 

(これなら私、余裕で逃げられるんじゃない?)



 しかしそれは希望的観測に過ぎなかった。


 バリスタの知識は主に英児童文学「ハイ・フォースの地主屋敷」から得ました。

 近代イギリスの田舎で少年たちがバリスタを再現しようとする話ですが、推進力用ロープだけはうまくできなくて、ゴムチューブで代用します。

 そのさいの言いわけ「ローマ人だってゴムが使えれば使ったさ」が自分的にツボ。


 博物館で実物大の模型も見ましたが、ロープの束はぶっとくて複雑で構造分かりませんでした。切るのも大変そうです。


 

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