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女性嫌いの令息を護衛している男装女子ですが‥なんか思ってたのと違う?  作者: ノーネアユミ
2章

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33/53

2 再開

 次の日は一日だけ休みをもらって自領に帰った。


 公爵邸とは比べ物にならないほど小ぢんまりとした我が家。

 返ってくるのは久しぶりで、懐かしさに胸がいっぱいになる。



「ブライア!」


 兄のウォルトが満面の笑みで迎えてくれた。

 この時期は両親が王都で社交を担当し、兄が領地の経営を受け持っている。


「お久しぶりです、お兄様」

「休みの日を教えてくれたら僕が迎えに行ったのに」

「馬で領地を駆けるのも良いものよ」


 私が単騎で訪れたのを心配したのだろう。


「今日はどうする? 久しぶりに剣の指導か?」

「お兄様との手合わせも楽しみですが、ダッシュにも会いたくて。彼はどうしています?」


 兄の顔が一気に厳しくなった。


「あんな魔法に頼りきりの奴など放っておけ。それより良い武器が手に入った。ライも気に入ると思うぞ」


 あからさまに話を替えようとしている。


「お兄様、ダッシュはどちらに?」


 語気強めでたずね、国境付近で作業中の情報を手に入れる。


「では先にそちらに参ります」

「お茶くらい飲んでいけよ」

「水筒とビスケットは携帯しております。ダッシュの様子を確認したら、また参りますわ」



 私は馬を替えて作業場まで進んだ。




 国境は常に敵襲にさらされているので、危険な土地には城塞を築いている。

 敵が侵略してきてもすぐ対応できるように。


 平時も常備兵をただ遊ばせておくわけにいかない。橋や道路の整備に駆り出す。

 子爵家の役割は大半が土木事業だった。



「隊長はどちらでしょうか」

「これはこれはお嬢様ではありませんか。たくま‥お美しくおなりで」


 責任者は大体顔見知りだ。私の男装にも慣れている。

 私はダッシュを呼び出してもらった。


「ああ、君でしたか‥」


 ボロボロにやつれたダッシュに私は唖然とする。

 

「何があった?」



 彼を観察すると、両手に魔力封じの腕輪がはまっていた。


「は? なんでこんな物が」

「おや、魔法を使って悪さをしないようにと若様からのお達しですよ」


 現場監督が嘘を言っている様子はない。


「魔法に頼らず筋肉をつけさせるって方針ですが‥最近は飯を食わなくなりましてね」


 それでこのありさまか。

 私は怒りを抑えてダッシュを支える。


「今日は彼に護衛を頼むから、私が預かるわ」




「助かりました」


 近くの農家に事情を話し、彼を休ませてもらった。


「何があったの」

「俺がここの仕事に耐えられないだけです。子爵家の普通がすごすぎて食欲もわかないんですよ。幻滅しましたか?」


 そんなことはありえない。

 おかみさんが作ってくれたミルク粥ならのどを通るようだ。


「お兄様に抗議します。あなたもついてきて」


 馬の後ろにダッシュを乗せて子爵邸に戻る。



「やあブライア、お茶の用意は整っているよ」


 私がギラリとにらみつけても、兄はどこ吹く風だ。


「ダッシュも一緒なら招待に応じます」

「ふーん。しょうがないね」


 椅子と茶器が追加される。



「ねえライ、そんなズタボロ相手にする必要ないだろう?」

「お兄様、ダッシュにいきなりベテラン兵の訓練を課しましたね」


 我がセンタリオン家は訓練がすさまじいことで有名だが、新兵相手にはさすがに手をぬく。体を壊さないよう最低限の気遣いはあるのだ。


「ははは、君が連れて来たのだから当たり前だろう」


 確かに身内の推薦の場合、いきなり上級の腕前を期待される。


「それなら魔法を制限するのはフェアではありません」


「悪いが、うちの妹を口説くような奴にはそれで十分だ」

「口説かれたのはこっちなんですけれど‥」


 ダッシュのボヤキは完全に無視された。



「お兄様、私と賭けをしませんか?」


 私がただ頼んだだけでは兄は対応を変えないだろう。なら勝負事に持ちこんだ方が早い。


「条件は?」

「ダッシュは私が預かります。10日休ませたのち、お兄様と木剣で対戦してダッシュが勝ったら、新兵と同じ訓練を要求します。もちろん身体強化魔法ありですよ」

「10日は多い。5日にしろ」

「分かりましたわ」


 期間は半分に削られたが、最初からそれをもくろんで多めに提案してある。

 十分だろう。

 ダッシュには口をはさませず、賭けは成立した。



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