幕の裏にある光
朝日が学園の廊下を照らし、建物の壁を伝い、窓から差し込む光が顔にまで届く。
コルヴィアンは目を開け、起き上がって窓の外を見た。
「今日は、ルーシーと一緒にエルメリストの街を散歩するだけにしよう」
コルヴィアンは起きて服を着替え、金貨の入った袋を鞄にしまった。
彼は狼の棟を降りていった。広場に着くと、リザンテが空を見上げているのが見えた。
「おはよう、リザンテ」
「ああ…コルヴィアン、おはよう」
「何をしているんだ?」コルヴィアンが尋ねる。
「いや…ただ一つ考えていたんだ。自分が神に勝てるのかどうかって」リザンテが小さな声で答える。
「俺の…印魔術は、自分より強い相手と戦う時に発動して、身体能力と相手の魔術に対する耐性を高めてくれるんだ」リザンテが付け加える。
「わあ…それってすごく強い力じゃないか」コルヴィアンが言う。
「でも…もし相手が自分より弱かったら、自分の身体能力だけを頼りに戦うしかないんだ」リザンテが答える。
「待って、俺の記憶だと、お前の印魔術は魔術耐性を高めるだけじゃなかったっけ?」コルヴィアンが言う。
リザンテは顔を上げて空を見つめた。
「そうだ…でも気づいたんだ。俺の印魔術は魔術耐性だけじゃなくて、力も高めてくれるって。ソノスっていう怪物を殺した時にね」
それからリザンテはコルヴィアンを見つめた。
「お前を殺したあの怪物だ。あの日から、お前に会うたびにいつも聞こうと思ってたんだ。コルヴィアン、お前は人間なのかって」
コルヴィアンはすぐに、オーレリオン山で自分が死んだあの出来事を思い出し、その視線は一瞬で虚ろになった。
(ようやく思い出した…あの影との約束を) コルヴィアンは心の中で思う。
「もちろん、俺は人間だよ、リザンテ。見てくれよ、何も変なところなんてないだろう」コルヴィアンは落ち着かない様子で言う。
(どうやら彼は何かを隠しているようだ。今日は彼を尾行してみよう) リザンテは心の中で思う。
「コルヴィアン、どこに行くつもりだ?」リザンテが尋ねる。
「エルメリストの街をぶらぶら歩いてみようと思って」コルヴィアンが答える。
「一緒に行ってもいいか?」リザンテが言う。
「よし、それじゃあ行こう」コルヴィアンが答える。
(ようやく彼が質問をやめた) コルヴィアンは心の中で思う。
「まずはどこに行く?」リザンテが尋ねる。
「ルーシーを迎えに行くよ」コルヴィアンが答える。
「彼女は君の妹なのか?」リザンテが尋ねる。
「違うよ…ただのキツネだ」コルヴィアンが言う。
「妹だと思ってたよ」リザンテが答える。
二人はクラウド宿屋へ向かって歩き始めた。しばらくして、ようやく到着した。
ドアを開けると、ベルの音が鳴った。
「いらっしゃい。あら、コルヴィアンじゃない。それに連れの人もね」とヴィヴィが言う。
「私はリザンテです」
「私もよろしく。私はヴィヴィ、この宿の女将よ」
「ヴィヴィ、ルーシーはどこ?」コルヴィアンが尋ねる。
「まだ私の部屋で寝てるわ。ちょっと待っててね」ヴィヴィが答える。
ヴィヴィはルーシーを迎えに部屋へ行った。
「コルヴィアン、ヴィヴィは君の妹なのか?」リザンテが尋ねる。
「違うよ、ただの友達さ」コルヴィアンが答える。
ヴィヴィが、まだぐっすり眠っているルーシーを抱えてやって来た。
「どうやら彼女はとても疲れているみたいだ」とヴィヴィ。
「休ませてあげよう」コルヴィアンが答える。
「うん、私の部屋に戻しておくね」とヴィヴィ。
ヴィヴィは部屋の扉の前で立ち止まった。
「コルヴィアン、メリはここに来るのかい?」ヴィヴィが尋ねる。
「ああ、図書館で本を読み終えたら来るよ」コルヴィアンが答える。
「ヴィヴィ、行ってくるよ」コルヴィアンが付け加える。
「うん」ヴィヴィが答える。
二人はクラウド宿屋の外へ出た。しかし、外に出た瞬間、何かを避けるように走っている人々が見えた。
「何が起こったんだ?」コルヴィアンが尋ねる。
「コルヴィアン、行ってみよう」リザンテが言う。
二人は人々とは反対方向へ走った。到着すると、ゆっくりと歩く怪物が見えた。その背中は爆発魔術で膨れ上がっていた。
「あれは「歩く災厄」じゃないか」コルヴィアンが言う。
怪物は二人を見つめ、ゆっくりと彼らの方へ歩き始めた。
(俺には魔術耐性があるけど、周りの人たちはどうなるんだ) リザンテは心の中で思う。
「コルヴィアン、お前の魔術で怪物を閉じ込めろ」リザンテが言う。
「わかった」コルヴィアンが答える。
コルヴィアンはすぐに何重もの空間魔術で怪物を包み込み、空へと投げ飛ばした。
ドォーン………
一瞬にして濃い煙が空を覆い、周囲はしばらく暗闇に包まれた。
「コルヴィアン、すごいじゃないか」リザンテが言う。
「ありがとう。爆発の範囲が大きいか小さいか考えてたんだけど、とりあえず上に投げたよ」コルヴィアンが答える。
エルメリストの街の兵士たちが、二人の背後からやって来た。
「ありがとう。被害を抑えてくれて助かった」と兵士が言う。
「当然のことをしたまでです」コルヴィアンが言う。
「お尋ねします。ここには怪物を寄せ付けない防護魔術があるはずなのに、どうやって侵入できたんですか?」リザンテが尋ねる。
「正確なところはわからない。ただ一つだけ確かなのは、召喚魔術を使った者の仕業だということだ」兵士が答える。
「それでは、我々はこの辺りを調査するので」と兵士。
兵士たちはその周辺へ散っていった。
「コルヴィアン、ムーンヴェイル歌劇場に行こう」リザンテが言う。
「そこはどんなところなんだ?」コルヴィアンが尋ねる。
「街の人々のための娯楽施設だよ。歌や演劇、古い伝説が舞台でよみがえるんだ」リザンテが答える。
「行こう」コルヴィアンが答える。
「きっと君も感動するよ」リザンテが言う。
「本当か?ますます楽しみになってきた」コルヴィアンが言う。
二人はエルメリストの南にあるムーンヴェイル歌劇場へ向かって歩き出した。
しばらくして、彼らは四本の石柱がそびえ立ち、古びた金の彫刻が施されたアーチ型の屋根を支える建物の前に到着した。かなり大きな木の扉があり、建物からそれほど遠くないところには噴水があった。
「とっても素敵な場所だな」コルヴィアンは目をキラキラさせながら言う。
「これくらいで感動してたらダメだよ。中での公演を見たら、きっと君もっと感動するから」リザンテが言う。
「入ろう」コルヴィアンが言う。
二人はムーンヴェイル歌劇場の中へ入っていった。中には赤いカーテンの舞台、整然と並んだ客席、そして客席の上にもいくつかの席があった。
「でも、なんでまだこんなに静かなんだ?」コルヴィアンが言う。
「公演がまだ始まってないからさ」リザンテが答える。
「なるほど、それでみんな外にいるんだな」コルヴィアンが言う。
「席を探そう」リザンテが言う。
リザンテとコルヴィアンは前列の席を選んで座った。人々が次々と入場し、劇場の席は埋まっていった。
窓が一つずつ閉められ、油ランプに火が灯され、舞台の上には光の魔術が灯った。
赤いドレスを着た女性が現れた。月のイヤリングを付け、バイオリンを抱えている。
(なんて美しい女性なんだ…) コルヴィアンは心の中で思う。
リザンテはコルヴィアンがその女性をじっと見つめているのに気づいた。
(きっと彼は劇場に来るのは初めてなんだろうな) リザンテは心の中で思う。
その女性はバイオリンを弾き始めた。皆、その音色に聞き入っていた。
(彼女が奏でる楽器の音色はとても美しい…) コルヴィアンは心の中で思う。
女性はバイオリンを弾き終えると、観客にお辞儀をした。拍手の音が響き渡った。
光の魔術がゆっくりと消えていき、そして再び光が灯ると、羽根の付いた帽子をかぶった男性が現れた。
「とある王国に…とても奇妙な印魔術を持った女性が住んでいました」
彼は数歩歩き、手を上げた。
「その印魔術はまるで太陽のようでした…」
白いドレスを着た女性が舞台の幕の陰から現れた。
「ある日、彼女の住む王国は、山のように高い怪物たちに包囲されてしまいました」
その女性は手に持った光の魔術で、舞台の上に浮かび上がった。
「その女性は王国の中央に舞い上がり、小さな光の塊が瞬く間に王国全体と怪物たちを包み込みました」
女性の手に持った光の魔術は劇場全体を照らし出すほどに大きくなり、そしてゆっくりと消えていった。
「その光は怪物と共に消え去り、兵士や冒険者たちを癒しました。その時から、人々はその女性を光の女神と呼ぶようになりました」
女性は再び舞台に降り立った。
「光の女神、ルーチェです」
二人は観客にお辞儀をし、舞台は再び暗闇に包まれた。観客からは盛大な拍手が送られた。
(すごく面白かった。はっきりと想像できたよ) コルヴィアンは心の中で思う。
「コルヴィアン、行こう」リザンテが言う。
「もう演劇は終わりなのか?」コルヴィアンが言う。
「次の演目は、通常は昼頃だよ」リザンテが答える。
「わかった。まだ行ったことのない場所を見て回りたいんだ」リザンテが言う。
二人はムーンヴェイル歌劇場の外へ出ていった。




