↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
PR
91/95

91 啓蟄

新浜(しんはま)だより

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」 2000年4月号掲載


91 啓蟄


 猫どもが床で何かをじっと見つめているのに気づいた。ゴキブリにしては色が薄いし小さい。なんと、小さなヤモリではないか。あおむけにくたっとひっくり返っていたが、暖房のきいた室内で小一時間もすごすと、活発に動くようになってきた。幸いどこにも傷はないようだ。当歳らしいごく小さな個体。ついにわが家でもヤモリが繁殖してくれた、とうれしかった。3月5日のこと。

 3月5日は啓蟄。この日、カエルや虫が冬眠からさめて動きはじめるということになっている。毎年のことだが、この時期になると立春や啓蟄といった言葉がリアルに実感される。3月4日には緩んだ寒気とひさびさの雨で、ヒキガエルが一斉に起き出してきた。7日にはキタテハが飛ぶのを見かけた。満開の梅がひかえめな香りを漂わせ、柳は芽吹き、街なかでは沈丁花も咲きはじめている。

「カエルがいました。寒いのでぺたっとへたばって、動けないみたいでしたけど」「アカミミガメ、今季初認です」「ムラサキサギゴケがもう花をつけてます」 保護区内の作業や調査で、春のニュースは刻々と伝わってくる。

 春先のトラクターがけが3月4日に終了した。2月15日のスタート前から乾燥した晴天に恵まれて、降雨の前に終わったのは本当に幸運だった。

 2月から3月にかけTの作業は、トラクターがけに加えていくつか欲張った内容があって、ひとつは県が材料を購入してくれた5m四方のカーポートづくり。もうひとつは堆肥まき。

 カーポートは柱や骨組みの位置出し・垂直・水平とり、基礎がため等、生まれて初めての作業ばかり。幸い友の会の森田昭次さんが一から指導し、リードしてくださったおかげで、2月22日に完成した。働き者のトラクターをもう雨ざらしせずにすむ。

 穴にためたアナゴのアラとおがくずを原料にして堆肥作りを始めたのは1月10日のこと。おがくずアナゴと刈った草をサンドイッチ状に積んで水をかけただけだが、これがみごとに変身した。わずか一週間で強烈な臭気は牛小屋のようなにおいに変化し、二度の切り返しを経た後には、油粕程度のにおいになった。これを昨年稲を作った場所に運んで全面にまき、トラクターですきこんだ。軽トラックに積み込み、積み下ろしで4往復、というのは半端な作業量ではないのに、大黒柱2号氏が大半をひとりでやりとげてしまった。さっさと応援を頼まなくちゃいけない、と、後でたっぷりお説教をしたけれど、手綱をとる私の責任大。

「足場がしっかりするまではひたすら待つ。はまらないようにやりましょう」と、昨年よりかなり慎重にスタートしたはずのトラクターがけも、予想より早いペースで着々と片づいていった。

 トラクターは、畑のように乾いた状態か、さもなければ全体に薄く水がついた状態で動かすのが楽だ。水たまりやぬかるみがあると、足をとられたり、泥が重かったりで、作業がはるかにたいへんになる。わが保護区のような湿地管理のトラクターがけは、水管理と天候が頼りだ。2年の経験から、タイミングのはかり方は少し楽になった。それにしても、昨春7,8回、秋には10数回にわたってはまりまくった大難所である上池部分については、全員がひそかにあやぶんでいた。

「上池にトラクターを入れました」 大黒柱1号氏に言われて心臓がひっくり返りそうになったのは3月3日のこと。予想より1週間近く早い決断だ。「意外に大丈夫そうなんですよ。まだわかりませんけど、すんなり行くかもしれません」

 わずか1日半で上池部分は終了した。泥の天地返しとアシのコントロールを主目的とした早春のトラクターがけはこれで一段落。あとは4月に入ってから、営巣場所整備の空き時間をみて、残る竹内が原部分とみなと池棚田をやればよい。

「はまらないと面白くないですよ」 本心からそう思っているところがこわい大黒柱1号氏だけれど、さすがにほっとした笑顔をみせた。よかった。

 さて、制度上、大黒柱1・2号氏が雇用できない3月後半、半月間の休止期間を経て、4月の二人の復帰からは、いよいよ本格的なコアジサシの営巣場所づくりだ。ものがうごめく啓蟄である。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。