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新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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85 実習・研修

新浜(しんはま)だより

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」1999年10月号掲載


85 実習・研修


「お客様です。私のおとな版と思ってください」

 実習生の有田恵美子さんがうれしそうに呼びにきた。彼女は青森県十和田市にある北里大学獣医学部5年生。8月2日から15日までの予定で傷病鳥舎の実習に来てくれている。実家の九十九里町から観察舎までの往復4時間を苦にもせず、毎朝9時にはきっちり作業服に着替えて下りてくる。週5日勤務と言ったのだが、小鳥の世話が好きでたまらない、という彼女にはここは「パラダイスです。ふだんはマウスしか扱えないもので。毎日来てもいいですか」 単調な汚れ仕事が続く傷病鳥の世話だが、ついに皆勤賞を通した。

 待っておられたのは、かっぷくのよい半白の紳士。「酪農学園大学獣医学部2年 一級建築士 岩田吾郎」 愛犬との写真入りの名刺内容に感動してしまった。会社をやめて1年間駿台予備校に通い、4月から獣医をめざして単身留学中、夏休みで帰省中なので、短期実習に来られたい旨。

 われらが野鳥病院では日常管理の餌やりや掃除が中心であり、治療行為の比率はごくわずかだ。参考になる面があるかどうか不明だが、体験ならいつでも可能なので、8月14・15日の2日間、プール掃除や餌やりに汗を流したり、保護区の観察会で環境づくりを見たりしていただいた。

 きわめつけは8月30・31日の2日間。勤続10年目の県立高校教師は、2日間のボランティア研修が義務づけられているそうで、農工大出身のわが後輩の三浦陽先生から5月に連絡があり、生物関連の教師グループ4名で研修に来たいとのこと。思わず二つ返事をしてしまった。

 7月初めに日取りが決まってからというもの、どういう仕事がいちばんよいかと相談をくりかえし、手ぐすねひいてカレンダーを眺めてきた。保護区の管理作業はお天気次第。人の配置や作業手順の工夫はできても、天気には逆らえない。1ヵ月前から予定はほぼ固まったが、きちっと計画を練り上げたのは前々日。

 予定の①は、45度もの急角度になっている三島池の岸の一角を削り、カモが上がれる緩傾斜の岸と、垂直に近い崖に改造すること。垂直の崖はカワセミの営巣場所を想定している。②は、南の竹内が原側がわずかに地盤が低く、北の上池側の地盤が高い竹内が原―上池の環境改良。水位を適正な低さに保つとシギがよく入るのだが、上池側が完全に乾いてしまう。地盤が高い上池側に水をため、地盤が低い竹内が原側はひたひた程度の微妙な水位を保つにはどうしたらよいか。簡単明瞭、水に段差をつければよい。予備の作業③として、2カ所ある岬の草を刈り、干し草集めをすることもつけ加え、前日は準備に費やした。

 準備は万端……と思っていたら、前日夕方遅く、いきなり空が暗くなり、激しい雨が降りだした。せっかく刈った干草の取り込みはどうなるか。「ちょっとくやしいよね」「ちょっとではないですよ。こんなに強く降るとは思ってなかった。」

 いよいよ当日、かんかんに晴れた上天気。9時すぎにはたくましい男衆先生4人が勢ぞろいしていた。当方も大黒柱1・2号氏に加えて、「天の使い」こと夏休みの学生助っ人、上原昌志君の3名と、総勢7名! 現場に着くまでにアゴを出しそうな暑さの中、一行は元気に出発して行った。

 干草返し、泥に足をとられながらの畔づくり、草刈りや崖掘り、水中でのガマ刈り取りといった作業が信じられない速さで進み、「手がある時に、勢いで一気にやってしまいましょう」と助っ人さんたちのアドバイスに意を強くして、翌日には予定外の塩ビパイプや松丸太運び、段ボール搬出、パン搬入、干し草の取り込みまで無事に終えた。さすがに全員が相当くたびれたようだったが、最後まで意気高いこと。「いや、お騒がせだけして役に立たなかったと言われやしないかと思って」「とんでもない。3ヵ月分くらいの仕事が片づいてしまったんですよ。来週また来てくださいよ」

 実習生さん・研修生さんとも、終始生き生き、にこにこと過ごされた。受け入れ側はもっとうれしい刺激を受けたように思う。8月は暑さがこたえたけれど、いやあ、ほんとうに楽しかった。



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