86 夏から秋へ
新浜だより
日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」1999年11月号掲載
86 夏から秋へ
セイタカアワダチソウの穂先が黄色く色づいてきた。ススキの穂が陽光に輝き、土手の斜面に昨年移植したヒガンバナも花をつけている。今年の秋の花の旗頭はみなと池棚田のミズアオイで、鮮やかな青紫の花が一面に咲いている様子は凄みがあるほどだ。イボクサもひろがり、ふちに赤紫の点がある3弁の小さな白い花を一面につけている。みなと池のトラクターがけは花が終わるまで待とう、と、あっさり相談がまとまった。
妙典土地区画整理組合からいただいたかつての蓮田の土から、水を入れた昨年、ハスが芽を出した。今年は一挙にひろがって勢いもよく、8月末、なんとつぼみが出たではないか。どれも白くて花弁の先端がうすくピンク色に色づいた上品な花だ。花が終わると花托ががふくらんではちすになる。ハスのまわりのアシやガマを鎌を使って水中で刈り、運び出すきつい作業をこなしたボランティアの武田さん、伊藤さんとスタッフ一同にひたすら感謝。
10月に入って一挙に気温が下がり、秋らしい気候にひと息ついている。この夏は気温や湿度が格段に高いとか、記録的な熱帯夜続きというわけではなかったが、ともかくこたえた。
8月8日の耕運機出動以来、秋のトラクターがけは上池、下池、竹内が原、④系列、③系列とまずは順調に進み、無事に山を越えた。はまった回数こそ昨年一年分を上回ったが、常勤スタッフはダウンしなかったし、新人助っ人さんたちがありがたい戦力になり、更に新鋭の草刈機のおかげもあって、昨年より仕事ははるかにはかどっている。
千葉県購入の自走式の草刈機、オーレック社のハンマーナイフモアは、9月2日に到着。この手のものとしては一番小さい機種らしいが、背丈をこす草を刈り倒して、そのままかみこなしてしまうことができる。これまでは肩掛け式の草刈機でまず刈り倒し、倒れたところで自走式の芝刈り機を入れてこまかくしていたが、オーレック君だとそれが一度にできてしまう。水を干し、じゅうぶんに足場が固まるまでじっくり構えて待てば、草刈りとトラクターがけを同時進行できるわけだ。男衆の喜ぶまいことか。
「これは果樹園の下草刈り用の機械なんだから、アシやススキなんかを刈るにはきゃしゃにできている。じゅうぶんに気を使って、ともかく優しくていねいに扱ってやってくれ、とのことでした」
そう言っている口の下から、2mを軽くこす茂みに平気な顔で突っ込んでゆく。
「このくらいの草丈だと、一度に刈れるのは10㎝とか、20㎝くらいの幅になります。でも、いいですよ、これは」
保護区本土部の半分近くが湿地化してから2年目。昨年に比べると、管理作業も鳥の誘致もある程度うまく運んだような気がする。いちばん広い上池―竹内が原の湿地については、ぎりぎりのところまで水を干し、思惑通り淡水性のシギが入ってくれたことに大喜びした。何しろ、ここしばらく絶えて記録がないヒバリシギやウズラシギが見られ、アオアシシギ22羽の群れまで入ったのだ。ところが、9月に入って間もなく、弱ったカモや死体が目立つようになってきた。よく肥っているのに足が立たない、目がおかしい、といった症状は、ボツリヌス菌中毒そのものだ。ボツリヌス菌自体は無害・常在の嫌気性細菌だが、体外に毒素を出す。変温動物には無害だが、鳥や哺乳類にとっては神経毒になるものだ。気候や嫌気的な状態など、何らかの条件下でボツリヌス菌が大量発生し、こうした死亡を引き起こすことがある。気温が下がればおさまるはずだが、毎週のように10羽前後の死体や弱った鳥が見つかり、水位管理が裏目に出たか、と暗くなってしまった。もっとも水位管理のおかげで、50羽死ぬはずが10羽でおさまったのかもしれない、と考えたりもする。ボツリヌス菌中毒は河口域の鳥の生息地にはつきものの難問で、これといった解決法はたぶんまだない。
来週は稲刈り、今週はカモ用生息場所改良週間だそうで、スコップと草刈機が活躍している。きつい仕事や忙しさを誰も苦にする様子が見られないのが、私としては、ちょっとこわい。




