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新浜だより 1992年~2000年  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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66 ポンプ付き合い

新浜しんはまだより

日本野鳥の会東京支部(現在は日本野鳥の会東京)支部報「ユリカモメ」 1998年3月号掲載


66 ポンプ付き合い


「奥の2台って言ってたよねえ。だからどうしたってこっちの2台のことでしょう?」

 ははあ、なるほどね。読めた。何でこんな単純な混乱が起きたのか、さっぱりわからなかったのだが、「奥の2台」が決め手だったんだ。

 例によって例のごとく、ことポンプに関するトラブルである。昨年5月に工事を終えたはずが、連続稼働を開始したとたんにパイプがつぶれて使えなくなった大型のタービンポンプ。地上部にモーターがあり、吸い口が水の中にあるので、まず水を吸い上げ、そこから送り出す方式のものだ。

 予備用の小型ポンプを使って細々と水を送っていたのだが、12月末にようやくパイプの補修が終わった。12月28日から連続稼働を試していて、段畑状態の水質浄化・水鳥誘致用の広大な棚田に水がまわり、気をよくしていた矢先。

 タービンポンプは強力で、出力の割に揚水能力が高いが、吸い口とポンプ本体の間に空気が入ると水が上がらなくなる。水の中にポンプ本体があり、水でも空気でも押し上げる方式の水中ポンプとはこの点ではっきり違う。ポンプが設置されているのは、行徳地区の生活排水がいったん溜められ、海へと排水されるための遊水池だ。ほぼ毎日、超大型の排水機が動かされて水位が一挙に下がり、タービンポンプは空気を吸って止まる。このため毎日欠かさず朝夕に見回り、パイプの中の空気を追い出してポンプを復旧する作業が必要である。

 1月15日、横なぐりの雪のなかで復旧作業に取り組んでいた達ちゃんが、「動かせません」とメゲて戻ってきた。吸い口とポンプ本体をつなぐパイプのジョイント部に、水が噴き出すほどのすき間ができ、空気を吸ってしまっていたのだ。

 空気を吸わないように、水位が下がるとポンプが止まるようなスイッチの設置を5月から頼んでいた。1月20日、ポンプ修理とスイッチ設置を今日やると言われて、大喜びで一樹君をさしむけた。ところが、ところが。

「水中ポンプのスイッチだ、と言われたんですが」 お昼に戻った一樹君がけげんそうな顔で言った。12月末のポンプ補修工事の際、予備用の水中ポンプを2台とりつけている。しかし、スイッチは当然大型・小型の2台のタービンポンプ用のはず。

 午後、現場の一樹君から、困りきった口調で電話が入った。「現場の電気屋さんは、はっきり水中ポンプ用と言われてきたそうなんです」

 さあたいへん。工事の発注は千葉県自然保護課、受注は千葉建設。千葉建設からアライ照明が依頼され、それを松本電工が受けて現場で仕事をしている。頭越しでわけがわからない、という実態はさておき、ポンプを稼働させ、動かないとその日から困るのは、現場にいる観察舎のわれわれである。

 電話が飛び交った結果、千葉建設は入り口から「奥の2台」にあたるタービンポンプのつもりだったが、アライ照明では分電盤から「奥の2台」である新設の水中ポンプのつもりでいた、ということがわかった。とりあえず一件落着。

 しかしながら・・・・・・この時つけられたレベルスイッチは、テストをはじめた翌日、水位が高いのに「減水」のランプがついて動かずじまい。修理済みと言われた大型ポンプも、同じ位置で空気を吸って全く復旧できず。さらに、2台ある水中ポンプのうち1台も、配線の抵抗値の関係で動かせず。ここまでトラブルが重なると(それも、われわれの責任ではないもんね)、楽しくなってしまう。バンザーイ。

 水中ポンプ1台は、今のところ順調に稼働している。思ったよりも揚水能力が高いので、健康な水中ポンプが2台から3台あれば、必要な水量の確保はできそうだ。水をたたえた棚田の光景は好ましく、浄化の状態も申し分なく、ハヤブサ、タゲリ等、鳥もぼちぼち見られているのだけれど。

 ここ何日か、夕方おそくなると、丸浜川にクロツラヘラサギが入るようになった。もしかして、餌場にも上がっているのかしらん。カモはあいかわらず少ないが、ポンプのトラブルも含めて、毎日面白く過ごしている。


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