四肢を失った天才は、今日も勝手に改造する
王立魔導技術院の大審議室には、針の落ちる音さえ大げさに響きそうな静けさが満ちていた。
白い石壁。磨き上げられた長机。壁際に並ぶ歴代院長の肖像画。その中央で、エリス・クロイツェルは被告席に座り、自分の右手を分解していた。
正確には、右手の形をした魔導義肢である。手首の外装を膝の上に置き、露出した銀色の骨格へ細い調整針を差し込む。指先を曲げるたび、淡青色の魔力光が関節の内側を走った。
「エリス・クロイツェル。聞いているのかね」
正面に座る審議官が、こめかみを引きつらせた。
「聞いています。無許可の人体接続式改造が十二件、許可範囲を超えた魔導出力試験が七件、立入禁止書庫への侵入が三件、機密記録の持ち出しが一件です」
エリスは顔を上げずに答えた。
「最後の一件を除けば、すべて私の身体に対して行ったものです。被験者、術者、整備担当者、事後観察対象が同一人物なので、申請書も四枚ではなく一枚にまとめられると思います」
「そういう問題ではない!」
叩かれた長机の上で、銀の水差しが小さく跳ねた。
傍聴席の若い技師たちは息を呑み、そのうちの一人だけがエリスから目を逸らせずにいた。黒褐色のエアリーなボブ、白磁を思わせる肌、伏せられた灰褐色の瞳。黒い技師服を隙なく着こなした姿は、黙ってさえいれば名門貴族の令嬢か、近寄りがたい天才研究者に見える。
もっとも、彼女の膝には外した手首の装甲が載り、左の耳には小型レンチが差してあった。
「それに、出力試験は危険ではありません。旧式の四肢統合制御では三肢以上の瞬間駆動時に〇・二七秒の遅延が生じますが、私が開発した《四天連結・超越機装式エリスティック神経同調陣・改》なら――」
「長い」
審議官の隣に座る老技師が、疲れた声で遮った。
エリスは初めて顔を上げた。
「どの部分がですか?」
「名前だ」
「機構の目的と設計思想を過不足なく表現した結果です」
「名称に設計書の役割をさせるな」
「では《四天連結・超越機装式――》」
「繰り返さなくていい」
傍聴席のどこかで、誰かが咳払いに見せかけて笑いを隠した。エリスは不思議そうに瞬きをしたあと、調整針をもう半回転だけ回した。
審議官は深く息を吸い、机上の書類へ視線を落とした。
「君の技術力を疑っている者はいない。史上最年少で特級魔導技師となり、人体接続型義肢の同調率を飛躍的に向上させた功




