その19。新しいお仕事。
「コホン。御礼のお金をお支払いする前に…まず、アリタに会って?」
ビビっちを家の裏に連れていく。
ひひーーん。カツカツカツ!
足を踏み鳴らして喜ぶ羽根つきペガサスのアリタ。
もうツノも出してスタンバイだ!
「あら、ヒヒン。じゃなくてアリタ。元気そうじゃないの。」
ビビが頭を撫でてやる。
その時、タテガミの後ろから。
「こんにちは、ビビさん。」
アリスゴーストが顔を出す。
そして顔を顰めた。
「うん、やはりそうですわいな。」
ヒヒヒーーン!!ウオォン!!
「アリタもわかってる。だからこんなに訴えてるでありんすよ。」
うん、そうか。やはりね。
「ええっと?魔女様?この小さな女の子は??魔女様が作った幻?
そしてなんてアリタは涙目になって私に顔を擦り付けて…???
ぐいぐいと??――――わっ、鼻水ついたじゃん!!」
「アリタにもわかったのよ。あなたの運命が。流石に神馬ね。」
はあっ。思わずため息が出る。
「えっ?えっえええ?」
「とりあえず中で顔を洗って。タオルを貸すわ。」
アリスゴーストも中についてくる。
とりあえず身支度を整えたビビっちを座らせる。
「まず、このアリスはお化けです。」
「ええっ!!そんなっ。初めて見ました?というかハッキリ見え過ぎます??」
驚いてタオルを手から落とすビビ。
「そして…このアリスゴーストはね、あの水晶玉に取り憑いていたの。」
話を進める。
「マックの占いの時、最後に一瞬アナタが映ったのよ。すぐに掻き消えた。
気のせいかと思ったけれど…それなら良かったんだけど…。
シロフワちゃんやアリスゴーストも見ていたの。」
「えっ?何かマズイのですか?マックと結ばれる未来があったって事ですよね?
でも、最後に近づくほど可能性が無いとか…?
別にマックのことは好きじゃないから、構わないのですけど…」
「…うん。」
気が重いけどちゃんと話さないとね。
「ああいう未来の映り方は…とても良くないものなの。」
「え?」
眉を顰めるビビっち。
「掻き消えた未来…
このままでは貴女は命を落とす。水晶玉が告げている。」
「…え?御冗談でしょ?ははは。はははのは。」
虚を疲れて乾いた笑いを漏らす。
金色のポニーテールが揺れている。
「…だから念の為、アリコーンにも判定させた。あれであの馬は長いこと生きていて、未来を見ることが出来る神馬。」
「待ってくださいよ!ペガサスが出来るのは処○判定だけでしょ!
余命宣告できるなんて!」
「…貴女が未婚で乙女のまま、亡くなるのがわかっていたから懐いていたとも言ってますえ。」
アリスゴーストが口を出す。
アリタの言葉がわかるのだものね。
「な、何それ。」
ビビから表情が抜け落ちる。
「私、どこも悪くないし!あなたが思うより健康です!」
ガタガタ震え出して、どっかの歌のフレーズみたいな事を叫ぶビビ。
「待ちなさい。今カードでも占うから。落ち着いて?」
空間からカードを取り出す。
「え?また別の占い?お代必要??」
「そんな鬼畜じゃないわよ。無料よ。」
「お願いします!」
しゃっしゃっ。
カードを切る。
「うん、あなたはとても健康だと出た。」
「ほら!やっぱり!」
「死因は…病死ではありません。どっちかと言うと殺人?」
「は、はいいいいい?」
目を見開くビビっち。
一枚のカードを見せる。
「これからひと月以内に階段?もしくは屋上から突き落とされる…らしいわよ。」
「思ったより直近!しかも具体的!」
「犯人はティボーネ。」
「何ですってえええ?」
「カードのお告げだと…これから三角関係?横恋慕?で揉めると出てるわ。
王子様に脈がないとわかったティボーネは、マックに狙いを定めることになるわけ。
だけど、あのマックは考え無しに、
『オレ、無理っス。オレはずっとビビが好きで。ビビを虐めるアンタなんかお断りだ!』といらん事を言った。」
「あああ…アイツ言いそう。中途半端な正義感で余計なこと言いそうだわ。」
ビビっちが頭をかかえる。
その耳にはあの悪意避けの目玉のイヤリングが揺れる。
「そのイヤリングも万能じゃないのよ。強い衝動的な殺意には敵わないことがあります。
あなたが足場の悪いところ(階段もしくは屋上)にいる時、ティボーネの心にいきなり悪魔が忍びこむの。
そして悪の心に支配されたティボーネは、衝動に身を任せ、えええいっ!!とあなたを突き落とす。
…こんなん出ましたけどお。」
「アイツは常に悪魔です!いつでも人を傷つける全身トゲトゲのウニ、いや、ガンガセですっ!!」
叫ぶビビっち。
「よしよし。落ち着きなさいにゃ。」
その背中を撫でてやるシロフワちゃん。
たしたしと柔らかい肉球で。
尊い光景である。
あの猫好き王子なら昇天しそうだ。
「ねえ、主。こちらで保護しましょうよお。」
シロフワちゃんならそう言うと思った。
「え、匿って下さるのですか?嬉しいですけど働かないとお給金が…!」
「金で命は買えないわよ。」
「それはそうですけど…母の薬代とか…」
途方にくれるビビ。
うーーーん。仕方ない。乗り掛かった船だ。
ふうっ。
ため息を吐きながら提案する。
「お城勤めを辞めて、ここで働けば??」
「エッ?」
「家事手伝いや馬の世話をしてくれればいいわ。
そりゃあね?こんな森の中だから、若い娘さんには退屈だとは思うわよ。
でもねえ。」
「はい。」
考えこむビビ。
「住み込みで食事も出す。もちろん、作ってもらうことにもなるけど…。
こちら雇用条件ね。」
ピラリ。
紙を中空から出して渡す。
「えっ、なかなかの条件!えええ!休日もちゃんと…あるんですね?
わわっ?!生理休暇に時間外手当まで??」
お城ってそんなにブラックなの?
「今、いくら貰ってるの?」
「はい、大体コミコミで月に14万ギエンです。そこから食費と寮費が引かれて…11万かな。」
「休み無しで?」
「いえ全然無いワケじゃなくて、不定期にひと月に三日くらい。
(ヒソヒソ)何故かティボーネは十日くらい休んでますけど。
仕事時間は朝は夜明けから夜の九時まで。」
「エッ。貴女のお給料安すぎ!」
ティボーネの奴、ピンハネしてんじゃねえか?
「コホン。とりあえず月に20万出します。」
私は貯金もあるし、前任者のお金も貰ったし、投資でも儲けているから全然お金には困ってないのだ。
「ここで働きます!私も主様とお呼びすればいいですか?」
即決である。目が輝いているわよ、お嬢さん!
そして、ビビが仲間に加わった。
一週間後、念の為もう一度カードで占ったら死亡フラグは折れていた。
……良かった。




