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寿(ことほ)ぎの魔女は途方にくれる。  作者: 雷鳥文庫


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19/20

その19。新しいお仕事。

「コホン。御礼のお金をお支払いする前に…まず、アリタに会って?」

ビビっちを家の裏に連れていく。


ひひーーん。カツカツカツ!


足を踏み鳴らして喜ぶ羽根つきペガサスのアリタ。

もうツノも出してスタンバイだ!


「あら、ヒヒン。じゃなくてアリタ。元気そうじゃないの。」

ビビが頭を撫でてやる。

その時、タテガミの後ろから。

「こんにちは、ビビさん。」

アリスゴーストが顔を出す。

そして顔を顰めた。


「うん、やはりそうですわいな。」

ヒヒヒーーン!!ウオォン!!

「アリタもわかってる。だからこんなに訴えてるでありんすよ。」


うん、そうか。やはりね。


「ええっと?魔女様?この小さな女の子は??魔女様が作った幻?

そしてなんてアリタは涙目になって私に顔を擦り付けて…???

ぐいぐいと??――――わっ、鼻水ついたじゃん!!」


「アリタにもわかったのよ。あなたの運命が。流石に神馬ね。」



はあっ。思わずため息が出る。


「えっ?えっえええ?」

「とりあえず中で顔を洗って。タオルを貸すわ。」


アリスゴーストも中についてくる。

とりあえず身支度を整えたビビっちを座らせる。

「まず、このアリスはお化けです。」


「ええっ!!そんなっ。初めて見ました?というかハッキリ見え過ぎます??」

驚いてタオルを手から落とすビビ。



「そして…このアリスゴーストはね、あの水晶玉に取り憑いていたの。」


話を進める。

「マックの占いの時、最後に一瞬アナタが映ったのよ。すぐに掻き消えた。

気のせいかと思ったけれど…それなら良かったんだけど…。

シロフワちゃんやアリスゴーストも見ていたの。」


「えっ?何かマズイのですか?マックと結ばれる未来があったって事ですよね?

でも、最後に近づくほど可能性が無いとか…?

別にマックのことは好きじゃないから、構わないのですけど…」


「…うん。」


気が重いけどちゃんと話さないとね。


「ああいう未来の映り方は…とても良くないものなの。」


「え?」


眉を顰めるビビっち。


「掻き消えた未来…

このままでは貴女は命を落とす。水晶玉が告げている。」



「…え?御冗談でしょ?ははは。はははのは。」


虚を疲れて乾いた笑いを漏らす。

金色のポニーテールが揺れている。


「…だから念の為、アリコーンにも判定させた。あれであの馬は長いこと生きていて、未来を見ることが出来る神馬。」


「待ってくださいよ!ペガサスが出来るのは処○判定だけでしょ!

余命宣告できるなんて!」


「…貴女が未婚で乙女のまま、亡くなるのがわかっていたから懐いていたとも言ってますえ。」

アリスゴーストが口を出す。


アリタの言葉がわかるのだものね。



「な、何それ。」

ビビから表情が抜け落ちる。

「私、どこも悪くないし!あなたが思うより健康です!」


ガタガタ震え出して、どっかの歌のフレーズみたいな事を叫ぶビビ。


「待ちなさい。今カードでも占うから。落ち着いて?」

空間からカードを取り出す。

「え?また別の占い?お代必要??」

「そんな鬼畜じゃないわよ。無料よ。」

「お願いします!」


しゃっしゃっ。


カードを切る。


「うん、あなたはとても健康だと出た。」

「ほら!やっぱり!」

「死因は…病死ではありません。どっちかと言うと殺人?」


「は、はいいいいい?」

目を見開くビビっち。

一枚のカードを見せる。


「これからひと月以内に階段?もしくは屋上から突き落とされる…らしいわよ。」


「思ったより直近!しかも具体的!」

「犯人はティボーネ。」

「何ですってえええ?」


「カードのお告げだと…これから三角関係?横恋慕?で揉めると出てるわ。

王子様に脈がないとわかったティボーネは、マックに狙いを定めることになるわけ。

だけど、あのマックは考え無しに、

『オレ、無理っス。オレはずっとビビが好きで。ビビを虐めるアンタなんかお断りだ!』といらん事を言った。」


「あああ…アイツ言いそう。中途半端な正義感で余計なこと言いそうだわ。」


ビビっちが頭をかかえる。

その耳にはあの悪意避けの目玉のイヤリングが揺れる。


「そのイヤリングも万能じゃないのよ。強い衝動的な殺意には敵わないことがあります。

あなたが足場の悪いところ(階段もしくは屋上)にいる時、ティボーネの心にいきなり悪魔が忍びこむの。

そして悪の心に支配されたティボーネは、衝動に身を任せ、えええいっ!!とあなたを突き落とす。

…こんなん出ましたけどお。」


「アイツは常に悪魔です!いつでも人を傷つける全身トゲトゲのウニ、いや、ガンガセですっ!!」



叫ぶビビっち。


「よしよし。落ち着きなさいにゃ。」

その背中を撫でてやるシロフワちゃん。

たしたしと柔らかい肉球で。

尊い光景である。

あの猫好き王子なら昇天しそうだ。



「ねえ、あるじ。こちらで保護しましょうよお。」



シロフワちゃんならそう言うと思った。


「え、匿って下さるのですか?嬉しいですけど働かないとお給金が…!」

「金で命は買えないわよ。」


「それはそうですけど…母の薬代とか…」

途方にくれるビビ。


うーーーん。仕方ない。乗り掛かった船だ。


ふうっ。

ため息を吐きながら提案する。


「お城勤めを辞めて、ここで働けば??」

「エッ?」

「家事手伝いや馬の世話をしてくれればいいわ。

そりゃあね?こんな森の中だから、若い娘さんには退屈だとは思うわよ。

でもねえ。」


「はい。」

考えこむビビ。

「住み込みで食事も出す。もちろん、作ってもらうことにもなるけど…。

こちら雇用条件ね。」

 

ピラリ。


紙を中空から出して渡す。


「えっ、なかなかの条件!えええ!休日もちゃんと…あるんですね?

わわっ?!生理休暇に時間外手当まで??」


お城ってそんなにブラックなの?


「今、いくら貰ってるの?」


「はい、大体コミコミで月に14万ギエンです。そこから食費と寮費が引かれて…11万かな。」


「休み無しで?」

「いえ全然無いワケじゃなくて、不定期にひと月に三日くらい。

(ヒソヒソ)何故かティボーネは十日くらい休んでますけど。

仕事時間は朝は夜明けから夜の九時まで。」


「エッ。貴女のお給料安すぎ!」


ティボーネの奴、ピンハネしてんじゃねえか?


「コホン。とりあえず月に20万出します。」

私は貯金もあるし、前任者のお金も貰ったし、投資でも儲けているから全然お金には困ってないのだ。


「ここで働きます!私もあるじ様とお呼びすればいいですか?」


即決である。目が輝いているわよ、お嬢さん!


そして、ビビが仲間に加わった。






一週間後、念の為もう一度カードで占ったら死亡フラグは折れていた。


……良かった。


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