その20。いつか王子様が、ではなく王子はすぐにやってくる。
五月の頭。清々しい季節の風の中、金髪美形のミゲール王子様がやって来た。
「いらっしゃいませ。王子様。占いのお金貯まったのかしら?」
「いいえ、もう少しなんです。今日はね?私の護衛を占っていただこうと。」
…そしてマージンを下さいね?というのが見え隠れする。指で丸をつくってにっこりする王子様。
――――爽やかにおねだりをしているぞ。
「こんにちは、護衛のトムです。」「私はソーヤです。」
適当なネーミングの二人の青年が入ってきた。
護衛騎士か。シュッとした茶髪のお兄さん達だね。
王子様の側近ならルックスも選定条件なのかもねえ。
「二人ともね?昔から一緒に育った兄弟同然なんだよ。」
軽くウインクをしてくるミゲール王子様。
…ほほう。身内を売るのかい。
「お茶をお持ちしました。」
「あれ。君はビビじゃないか。ここで働いていたというウワサは本当なんだね?」
「ハイ。お局のティボーネにいびられましたから。」
はっきりと言い切るビビっち。
気まずそうなトムとソーヤ。
ふーん、ティボーネはやはり評判悪いんだなあ。
「おや!このクッキーは美味しいね。」
王子様がお茶請けのクッキーを食べて目を見開く!
「この濃厚なバターの風味!上品な甘さに素敵な歯応え!さらりと口の中で溶けてまったりとした後味を残す…」
蘊蓄はいいから。
「大将、いや、魔女様腕を上げましたね。うん、私が貰ったクッキーの中でもNo. 1です。お金とれますよ、コレ。」
誰が大将だ。それに勝手に格付けするな。
「…作ったのはビビよ。彼女には料理をやってもらってるの。」
「どうりで…あ、『威圧』はやめて下さいっ!!
いたた!失言でしたっ。」
頭を押さえてうずくまる王子様。
「コホン。ではキミたち占って貰いたまえ。」
「ハイ。」
恋占いかなあ?
トムがまず頭を下げる。切れ長の目はすっ、と吊っていて鼻筋は通っている。逆三角形の小顔の騎士さんだ。
懐から二枚の絵姿を取り出した。
「あの、私には二つ縁談がございまして。どちらが良いか占っていただきたいと。」
「なるほど。簡単なお仕事です。」
「では、こちらのカゴに5000ギエンをお願いします。
先払いですニャ。」
シロフワちゃんがカゴを咥えて出てくる。
「あっ!シロフワちゃん!会いたかった♡」
目が輝く猫好き王子。
「…キミ程の美猫は滅多にいないよ!」
「…どうも。」
塩対応のシロフワちゃん。
「御世辞は、いりませんよ!」
「御世辞なんて!」
「自分が、美しいのはちゃあんとわかっていますにゃ。」
ツンとするシロフワちゃん。
「流石だね!お猫様だね!うーん、その冷たい表情も素敵!」
「コラッ!どさくさに紛れて触ろうとするにゃ!」
ハーッ!カーッ!!
威嚇している。
「我が君…」
困惑している二人の騎士。
「そんなにお好きならお城で猫飼ったらどうっすか。」
「母上が動物嫌いなんだよ。」
「ああ…」
「…コホン。とりあえずお仕事させていただくわ。その二枚の絵姿をこちらに。」
「はい、お願いします。」
二枚の絵姿を受けとる。
栗色のセミロング。茶色の目のお嬢さん達だ。
うん?同じ人のが二枚?
「ええと?」
「双子なんです…」
あら、そう。
「親同士が仲良くて。時々顔を合わせるんですが…どっちか貰ってくれないか、なんて言われてしまって。
正直…家格も釣り合うし、嫌いじゃないし…他に付き合ってる女性も居ないから…構わないんですけど…。」
ふうん。
「二人からの好意は感じます。だけど…見分けが付かなくて。」
頭を掻くトム。
「なるほど…」
どっちでも良いってわけね。
「お前、それ、失礼だろっ、ちゃんと見分けが付くじゃないか!」
おや。
「ソーヤ、おまえには付くのか?」
「当たり前だろっ。
こっちが姉のアネッサ。こっちが妹のイモティ。
俺だって今年から会ったばかりなのに見分けがつくぞ!」
「ほう。」
王子様が絵姿を手にする。
「裏に名前が書いてあるな?凄いな、ソーヤ。当たってるぞ。」
「は、はい。」
「この子達は母上の専属侍女じゃないか。今年入ったばかりだな。」
「ええ、彼女達の母親が王妃様の御学友だったみたいで。行儀見習いがてらに。」
ソーヤが説明する。詳しいな。
「私もウワサでは聞いてます。そっくりな双子の侍女さんがいるって。
王妃様のお近くにいるし、貴族の名門の娘さんだから、ティボーネもちょっかい出せなかったとか。」
ビビが薄く笑う。
「それでそっくりだからご自分で選べないと。」
「はい。是非魔女様のアドバイスを頂きたい。」
「アネッサの方が美人で可愛いじゃないか。愛想もいいし、感じもいい。あのキラキラと輝く瞳ときたら!
見分けが付かないオマエの目は節穴か?」
ソーヤ君、熱く語るねえ?
なるほどねえ。キミは彼女に気があるのか。
「ま、とりあえず水晶玉で占って見ましょうか。」




