その18。水晶玉の未来は確定じゃないけど。
「では!魔女様。次はワタシの未来を占ってくださいませ!」
鼻息が荒くなるダナ。
「OKまたはオーライ、そして了解。」
前にダナを座らせて、手を水晶玉にかざす。
「あら?白い霧は今度出ませんね?」
眉を顰めるビビ。
「うん、一度あったまったから。」
「なんの暖機運転すか、それ。」
呆れ顔のマック。
「ええー…誰が浮かぶかしらん♡私の近くにいる人かしら?
なーんちゃって。うふふふ。」
チラリと横目でマックを見て、ワクワクしているダナ。その頬は期待に満ちて上気している。
「貴女おいくつ?」
「19です。」
「じゃあ結婚しても良い年だから…具体的に浮かびそうね?」
おお、影はひとつだ。
水晶の底から浮かび上がってくる。
「来い!来い!マック来い!来い来い、恋ーーっ!」
必死に叫ぶダナっち。目が血走っている。
手で綱引きの綱を手繰り寄せるようなジェスチャー付きである。
隣で青ざめるマック君の運命やいかに!
…そこに赤ちゃけた髪の男の姿がぼんやりと写る。
「マックと同じ色!!」
「えっ。やっぱオレとダナで決定なワケ??えええ…」
口を覆うマック。その顔色は、青を通り越して白である。
「何よ、マック。嫌なわけ??」
「そんなワケじゃないけどさ、オマエのことをそんなふうに思った事がなくて…ずっとビビの友達としか…」
「ワタシをビビのオマケみたいに言うなっ!」
このお嬢さん気が強いねえ。
「ほらあ。はっきりと画像が浮かんできましたよう。」
シロフワちゃんがお手で指し示す。
うん、肉球は今日もピンクでツヤツヤしているね。
男の姿がクリアになってくる。
…ん?
マック??
いや、ちょっと違わないかあ?
「この人って…」
ダナの足元がふらつく。
「アニキじゃん。」
マックの目が丸くなる。
「ホントだ。マックのお兄さんのロロックさんだわ。」
ビビが口元を手で覆う。
そこにはマックを10歳くらい老けさせて、ちょっと薄くしたような感じの男性が映っていた。
「…………。」
呆然とするダナっち。
「マック、お兄さんは独身なの?」
「ええ、魔女様。」
「じゃあ、問題ないわね?顔も似てるし。立派な大人だし。」
うんうん。
「…ええー、だって。そんな。えええー。」
ダナは頭を抱えた。
「ウチのアニキはキライか?アニキはいつもダナは良い子だって褒めてたぞ!愛想はいいし、ウチの手伝いはしてくれるし、差し入れのお菓子は美味いしって。」
ほう。ダナっち。頑張ってアタックしてたのね。
「それは!いずれ義理のお兄さんになると思ってたから…!!
お菓子だって、お手伝いだって、マックに会いたいから…」
ポン。
ダナの肩に手を置く。
「ダナっち。さっきも言った通り、今現在の相性なのよ。決められた将来というワケではないわ!」
「そうですわね!魔女様。」
私をすがる眼差しで見てくるダナ。
「ええ。」
半泣きのダナにハンカチを貸してやる。
「さ、気持ちを落ち着けてね?」
「ホラ、お茶のお代わりもありますよう!」
シロフワちゃんがちょいちょいと手をふってお茶をいれる。
ひとりでにカップとポットか動いていく。
「流石、使い魔さん。そんな事もできるのね?」
「ええ、ビビさん。私も長く生きて主につかえてますからねえ。
これくらいの魔法は、ね。」
「ありがとう、猫ちゃん。」
「私は女性には優しいんですから!」
ゴロゴロと喉を鳴らしてダナの膝に飛び乗るシロフワちゃん。
「ああ、猫ちゃんのこの柔らかさ。温かさ。可愛らしさ。このゴロゴロという音。
癒される…」
ダナっちの手はシロフワちゃんを撫でている。
「そういえば、主。このお嬢さんにおススメのアイテムがあるんじゃないですか?」
ナーイスですねえ。シロフワちゃん。
さっ。
空間からストロベリークォーツのブレスレットを取り出す。
キラキラと輝く薄紅色のクォーツ(レピドクロサイトが内包されております。)である。
「これはね?恋愛成就の祈りがこもったブレスレットなの。貴女の魅力を倍増すること間違いなし!
片思いのアナタに最適!今日はサービス特価で普段は5000ギエンのところを…4800ギエンで貴女のものに!!」
「買ったあっ!」
「思い切りの良い貴女には同じ石のイヤリングもお付けしちゃう!」
「わあーうれしー!得しちゃったあ!!」
パチパチパチパチ!
流れるような展開に目をパチクリしているビビっちとマック。
「このブレスレットをつければ好きな彼に思いが伝わるかしら。」
「ええ!請け合いますにゃ。」
「いや?ダナの気持ちは…もう、わかってるけど。」
苦笑するマック。
「(ヒソヒソ)この売り上げも…私にバックされたり?」
ダナがシロフワちゃんに聞いている。
「にゃー。(そうです)」
くるりとダナの方に向き直るビビっち。
「あらあ!素敵!アナタの為にあるみたいね!そのアクセ!」
「ビビ。調子いいわねえ。」
眉を顰めるダナ。
「アナタが要らないなら…私が欲しいわ。」
上眼使いのビビ。
「え、じゃあ俺がプレゼントしようか?ビビ。」
なんと。
ジャリーーン!!
「もう私が買ったから!ダーメ!ダメダメ!」
硬貨をテーブルに叩きつけるダナ。
お釣りなしでぴったりね。あざす。
「こちらいただきますわ!魔女様。
さ、マック帰りましょ!」
「お、おう。ビビも。」
「ビビさん。」
シロフワちゃんがビビの前に回り込む。
「ヒヒンことあのユニコーンのアリタに会って行ってくださいな。」
その目つきは真剣だ。
「わかったわ。私は後から帰る。(マージンも貰わなきゃだし)」
「そうか、またな。」
そしてビビは残った。
……気が進まないが、話をしなくてはならない。
ちょっとだけ途方に暮れる私だった。




