その15。
アリタもウチに馴染んできた頃。
ある初夏の日。
アイスが美味しい昼下がり。
「ふうっ、アレからお買い物に行けるようになったから、アイスも買えて嬉しいわ♡」
「ええ!主。アイスは正義ですにゃ。」
シロフワちゃんは使い魔だから、アイスも食べれるのだ!
おひげが白くなって可愛いぞ!
「あちきまで。すいませんねえ。」
アリスゴーストにもお裾分けしている。
お化けでも食えるんだなあ。口の中に消えるように見えるが。どう言う仕組みだ。
「こんにちは♫集金に参りました。」
ドアの外から声がする。
「うち、新聞も牛乳も取ってませんけど。」
「またまた。おふざけ。」
ため息を吐きながらドアを開ける。
そこには満面の笑みを浮かべた王子様がいた。
「ミゲール王子が見えーる。」
「アハハ。洒落なのかい?」
ミゲール・モルト王子様はにこやかに入ってきた。
「会いたかった猫ちゃん!マイスイートハニー♡」
いきなりシロフワちゃんを抱き上げようとする。
シャーッ!
威嚇するシロフワちゃん。私の肩に飛び乗って毛を逆立てている。
「ワタシはアンタのハニーにも、ハチミツにもなった覚えはニャい!」
「ああ…やはり猫ちゃんはいい!怒った顔もす・て・き♡」
「いちいち区切るなっ!キモイ!」
うおおおっ。フーッ!
本気で怒っている。
「コホン。それはともかく。先日私の侍女達がここのグッズを買っただろ?そのマージンを取りに来たのだよ。」
何故か両手を腰にあてて、えへん!のポーズを取る王子。
「ああ、ハイハイ。」
ボボン!
宙から封筒を出す。
「スゴイなあ。空間に収納が出来るんだね。」
「ハイ、二人分。領収書にサインを。うち、ちゃんと確定申告してるんで。」
「二人分?ビビも先日支払いに来たのだろう?」
美しい眉を顰める王子様。
「…現物で払ったのよ、ビビっち。
裏に来て。」
そこでは白馬が繋がれてノソノソと草を食べていた。
「これが代金なんだって。」
「ええええ。…しかし立派な白馬だな。」
カッ!カッ!カッ!ヒヒーン!!
王子様が近づくと足を踏み鳴らして怒っている。
「だーめですよー。コイツ男嫌いでありんすから。」
馬のタテガミからすっと姿を表すアリスゴースト。
いつのまにか移動していたらしい。
「えっ。なんだい?
この身長約10センチのロリワンピースの美少女は?
妖精?」
王子様が目を丸くする。
「ウフフ、嫌ですよう。御冗談おっしゃっちゃいけません。」
身体をくねくねさせて喜ぶアリスゴースト。
「あ、それ。ただのお化けだから。」
「えっ!ここは心理的瑕疵物件だったのか!恐ろしや!
つるかめ、つるかめ!つるは千年、かめは万年!」
パニックになって訳がわからない事をいいながら、顔を真っ青にして後退りをするミゲール王子。
「うふん、本当にお美しい王子様でござんすなあ。デイジーナ様がご覧になったらお喜びになったでありましょう。」
せつなげなため息をつくアリスゴースト。
「デイジーナ?」
「私の前任者よ。」
そう。ミゲール王子様にそっくりの、彼の先祖の王子様に惚れ込んでいた。
カツン!カツン!
相変わらず足をふみならして
「やんのか?おう、やんのか、コラ!」
と王子様を睨みつけるアリコーンのアリタ。
「あ、そうだわ。」
私がアリタの頭を撫でる。
にゅっ。
ツノが飛び出す。
「えええええ!まさかのユニコーン?!」
「ねえ、王子様。現物支給でどうよ。このツノを代金の代わりに持って行くってのは?」
ヒッ?ヒヒヒン?!
「あら。ツノが引っ込んでしまったわ。」
「そ、そりゃ。ユニコーンのツノは万病に効くというが…でもそれは!海獣のイッカクのツノで…伝説の生き物が何故ここに?」
またまたパニックを起こす王子様。
「ビビが連れてきたっていったじゃん。代金の代わりにここにいるのよ。」
ヒヒヒン!ブルルッ!
「怒っているなあ。」
「そうでありんすよ、王子様。アリタはね、美形の男が嫌いなのですえ。清らかな乙女をたぶらかすから、だそうですわいなあ。」
「なっなるほど。乙女…」
「おっと。セクハラ発言はそこまでだ。『威圧!』」
王子に威圧をかける。
「くっ!頭が重いっ!まだ何も言ってないじゃないですかあ…でもユニコーンのツノじゃなくて、現金でお願いしまっす…」
「しょうがないなあ。
500ギエン上乗せして払うから、またお客様を寄越してよ。」
とりあえず中にいれて(アリタがうるさいので)冷たい飲み物を振る舞う。
「ああ、美味しい。このアイコー。」
「レイコーではないのですかにゃ。」
「あんたらはいつの時代の人だ。」
アイスコーヒーを妙に訳す王子様とシロフワちゃん。
「魔女殿。姉妹達はあのブレスレットで夫婦仲が深まったそうです。ありがとうございました。」
1500ギエンを受け取り、ほくほく顔で王子様は帰っていった。




