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こだま憑き  作者: ブルージャム
第四部 平成編
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森林の剣  協力会のペナルティ

「あなたがたの団体のことは、我々も把握しておりました。――しかし、まさか、見知らぬ学生の団体に出しぬかれるとは、思いもよりませんでしたな」

 兵頭栄作が、冷え切った低い声で話し出した。


「罰とは、何をやらせるつもりか?」

 茂(偽庵)は、再び訊いた。


 どうやら、兵頭家は、かなりの権力者で、命令をきいた方がよさそうだった。武は、腹が立っているようだが、このふたり――特に老婦人からは、異様な気が発せられていた。

 偽庵の生きていた時代にも、この種の人間はいた。無視したり、軽んじたりしていると、あとで、とんでもなくひどい目にあった。


 老婦人が、身を乗り出した。

「いま、ある土地で、霊障害が発生しておる。それを解決してほしい。……無報酬でな」


 ――無報酬!?

 武は、耳を疑(うたが)った。


 冗談じゃない。霊障害を解決しろ、とはどういう意味なんだろう。無報酬でなんて、今回のことで(過去の経験もあるが)、霊(〝こだま〟)に対峙すると、命を失うほどの危険性があることがわかった。絶対に、割に合わない。


 武は、茂(偽庵)の方をうかがった。茂(偽庵)は、腕を組み、老婦人をにらんでいる。

 茂(偽庵)は、腕をほどき、大きく息を吐いた。

「――見返りなしで、危険なお勤めを果たせとな? 無体なことを命じる輩(やから)は、いつの世もおるんじゃのう……」


 斎藤さんが、震える声で、茂(偽庵)を説得しようとした。武はともかく、偽庵がその気にならなければ、どうしようもない。

「――申し訳ない。この方たちは、ある意味、総理大臣より力のある方々なので……立腹されるのはわかりますが、慎重に……その、慎重に……」

 斎藤さんが、うわずった声で、茂(偽庵)を、なだめようとする。斎藤さんにも、茂がいまは「偽庵」になっていることが、わかったらしい。


 武は斎藤さんの言葉を聞いて、あわてた。

 このひとたちは、日本の裏側を牛耳(ぎゅうじ)っているんだろうか? ひょっとして裏社会の大物?

「政治家の方々も、職業柄、霊障害を体験されることが多いらしく……この方たちは、彼らの救世主となっているのです。――兵頭家のいうことに従わない政治家は、まず、いません」

 斎藤さんは、さらに恐ろしいことをいう。


 武は、真っ青になった。まだ、実社会に出ていないせいもあって、兵頭家の持つ力が、どれほどのものか、見当もつかなかった。

 武の頭のなかに、兵頭家のせいで、大学卒業後、就職もできず、実家も衰退して、住むところもなく、腹をすかせて、路地裏で野たれ死にしそうになっている自分の姿が浮かんだ。


「どういう障害を解決したらよいのか、話だけでも聞こう。――なっ?」


 武が茂(偽庵)の肩に手をかけると、茂(偽庵)は片眉をあげ、ふり返った。武に何かいおうとして口を開(あ)けたが、武の顔をみて首をひねったあと、口を閉じ、何もいわず、また前を向いた。


「どのような、お勤めかな・・・? 引き受けるかどうかは、中身(なかみ)を聞いてから決めたいんじゃが」


 兵頭栄作は、老婦人――かなえの方をみた。 かなえは、ゆっくりとうなずいた。

 高齢のせいだろうか? 動作のすべてが、ヒトより遅い。


「瀬戸内の、ある地域で、霊があばれているのです」


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