森林の剣 危険な依頼
茂(偽庵)が、すぐに訊き返す。
「瀬戸内のどこですかな?」
瀬戸内といっても、広い。本州側、四国側、どちらだろうか?
「……瀬戸内海の、ある島です。日乃入島、というところです」
「ええと。そこは、何県です? それと、そこへの行き方は? 橋を渡って行けるんですか?」
武は、あせって訊いた。
島の名前だけでは、さっぱりわからない。本州から、橋を渡っていけるのだろうか? 船は苦手なので、乗らなくてよいなら、助かる……。
「――橋は、かかっていません。愛媛県の宇和南市から、小型フェリーで行くしかありません」
兵頭は、カバンから地図らしきものを取り出し、細長いテーブルのうえに広げた。
武と茂(偽庵)は、地図をのぞき込んだ。斎藤さんも、横にまわって、同じような姿勢でのぞき込んだ。
その島は、瀬戸内海といっても、四国と九州のあいだの海域にあった。北へ行けば伊予灘、南へ行けば日向灘に行ける、瀬戸内海と太平洋の潮流が入り混じる地域だった。
地図上でも、豆粒のように小さく、兵頭が、指でその部分を押さえていなければ、なかなかみつからなかっただろう。
「……その、霊が暴れているというのは、大勢の者に害を為している、悪しき霊がいるということか?」
「非情に強力な霊と思われます。昔、その辺りにいた海賊の霊ではないかと……」
「……ふむ、何という人間か、わかってはいないのだな」
「幾人か、候補はいるのですが、この人物だと、はっきり特定されては、いません」
武も身を乗り出して問いかけた。
「どのくらいの被害が出ているんですか?」
兵頭は、ため息をついた。
「地元の漁師が、幾人も倒れています。島にある村落のあいだの細い道を通っているときに、海賊の鎧をつけた、日焼けした顔の男が襲ってくるそうです。逃げようとして背を向けたところを切られて、そのまま昏倒し、道から転がり落ち、大けがを負った者もいるそうです」
「……その者は、切られて、血を流しておったのか?」
「いいえ。被害者は、確かに切られたといっているのですが、傷跡は残ってませんでした。ただ、被害者は、皆、切られたといっているのです。――切られた者は、三日間ぐらいは、動けないそうです。医者が調べても、動けない原因は、わからないそうです。我々の調査では、明らかに霊障害だと思われます」
武は、安全のため、念を入れて確認した。
「亡くなった方は、おられないのですね!」
「――まだ、いません。が、被害の頻度は増えています。最初は、3か月に一回ぐらいだったものが、いまは、月に数回に増えています。四国地域に住む祓い師が、数人でお祓いを行ったのですが、歯が立たず、寝込んでしまっています」




