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こだま憑き  作者: ブルージャム
第四部 平成編
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森林の剣  霊障害対策協力会

「この方たちが、今回、〝こだま憑き〟の件で、尽力してくださった方々です。宮田さんと松田さんです」

 斎藤さんが、武たちを紹介してくれた。

 尽力したのは、武たちだけではない。藤原さんや、岩瀬も活躍した。自分たちだけめられるのは、居心地が悪かった。


 兵頭かなえと紹介された老婦人が、険しい眼でにらんだ。

「今回、お前たちがやったことは、お祓い師や霊媒師、修業をつんだ僧たちが行なってきたことと同じじゃ――」


 武と茂は顔を見合わせた。

 いったい何がいいたいんだろう。


 黒い背広の男が、一歩、前に出た。

 口に手を当てて、一回咳をしたあと、

「我々は、日本全国の霊や悪霊――言いかえれば、魑魅魍魎ちみもうりょうを払ったり、鎮めたりする者たちを、束ねています」


 ああ、そうか。だから、霊障害対策協力会なのか。

 武は、納得した気持ちでうなずいた。


「あなたたちが今回やったように、無断で霊障害をおさめるようなことをされては、困るのです」

 無断でって……何をいってるんだ、このおっさん――。

 鎧武者が暴れて、困っていたから、対処しただけじゃないか(半分、興味本位ではあったけれど)。感謝されても、いいくらいだ。

 茂もあきれたのか、口をポカッと開けて男をみている。


「――この方たちは、古くから活動しておられる、霊を払う仕事の元締めというか、ほとんどのお祓い師が所属する団体のトップなのです」

 斎藤さんが、遠慮がちに口をはさんだ。


「――つまり、面子をつぶされたということか?」

 茂が、妙にしゃがれた声で問いかけた。

 武は、ハッとした。この声は茂ではない。友松偽庵が、おもてに出てきている?


 男は、目を細めた。

「――ほう、若いのに、理解が早いですね」

「鎧武者の件は、地方版とはいえ、新聞で報道された。解決すれば、名が売れたし、それなりの報酬が、役所や大学から出たかもしれん。誰かが、あなたたちに、高額の報酬で依頼をしようとしていた、いや、依頼済みだったのかな。……それを、我らのような若輩者が、横から割り込んで解決してしまった」

 茂(偽庵)は、落ち着いた口調で続けた。


「専門家の我々が、素人に出しぬかれたという噂が、霊障害対策の業界内で囁かれているのです」

 男は、武たちを非難する口調だった。


 斎藤さんが、武と茂をかばうように前に出た。

「――彼らに、悪気はなかったのです。あなた方のことも、何も知らなかった。――ここは、経験の乏しい若人のミスということで、ご寛恕かんじょねがえませんか?」


 斎藤さんの口添えに、武は感謝した。

 茂(偽庵)は、斎藤氏とこのふたりの関係が、一体どういうものなのか、考えていた。

 『歴史探訪の会』が、いつ頃、結成されたのかわからないが、過去に何か別件で、この団体を頼ったことがあったのだろうか?


「お主らを、このまま放っておいては、下の者に示しがつかぬ!」

 それまで見守っていた老婦人が、ついに声をあげた。

 さらに続ける。

「お主らのような者たちは、何度でも同じようなことをやる! 今までも、そうゆうことが、繰り返されてきたのだ!」


 男が老婦人に抑えて、と両手で押しとどめるような仕草をして、改めて口を開いた。

「あなた方には、協力会のペナルティが課されます」


「ペナルティ? 」

 茂(偽庵)が、いぶかしげな声を出す。


 ――罰、罰則のことだよ。

 小声で、武が茂(偽庵)にいうと、老婦人が嘆きの声をあげた。

「やれやれ、最近の若い者は、横文字に強いと思っとったが、意外に語彙が少ないんじゃのう……」


「そのペナルティ、すなわち罰とは、どういうものか?」

 茂(偽庵)は、腹が立ちながらも、冷静に尋ねた。


 武は、まだ納得ができなかった。何らかの違反があったのなら、ペナルティもわかるが、霊障害対策協力会とか、聞いたこともない団体の仕事を、偶然に奪ってしまったからといって、何で罰を受けねばならないのか? この協力会とやらの、会員でも何でもないのに。


 斎藤さんの様子をみていると、このふたりの事を、かなり警戒――怖がっているようにみえる。そんなにヤバイ団体なんだろうか?


「そのペナルティ、やる必要はないんじゃないか?」

 武がいうと、斎藤さんが悲し気にこたえた。

「こちらの方々に逆らうと、二度と霊障害対策を行なえないことになるんです。――日本全国、誰も来てくれません。今回の件のように、強力な霊による事件――それが〝こだま〟によるものなのか、本当の霊なのかわかりませんが――は、どこでも起こります。『歴史探訪の会』の活動で、全国の遺跡や歴史的建築物をまわって、霊障害と思われる過去の事件のことを、何度も聞きました。その際、協力会が動いて、無事で済んだということも……。正直、今回の事件を体験するまで、霊については、半信半疑でした。しかし、今回のことで、やっと理解しました。今まで、聞いたことは、本当のことだったのだと……。我々の知らないあいだに、多くの霊障害が発生し、知らないうちに、協力会に救われていたのです。そのことを、肌身で感じました。――この団体のいうことは、聞かざるをえません」


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