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こだま憑き  作者: ブルージャム
第四部 平成編
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森林の剣  歴史探訪の会 9

 他の会員たちも、真実を話しても、オカルトのたぐいと片づけられて、とても信じてもらえないだろうと、このまま、噂が自然消滅するまで待とうということになった。


 かなりな騒動になっているし、社会的責任はどうなんだ、という会員もいたが、〝こだま憑き〟という現象を、科学的根拠をもって説明できない限り、謝罪をしても、ふざけているとしか思われないだろう。


 歴史探訪の会での出来事を、岩瀬と藤原さんにも、説明した。

 藤原さんと永山さんは、直接会って、永山さんが謝罪し、それを、藤原さんも受け入れたらしい。


 歴史探訪の会の人たちは、案外顔が広く、藤原さんは、彼らの紹介で、正社員ではないものの、職をみつけることができた。


 藤原さんの提案で、岩瀬や茂も、歴史展望の会の準会員として、会の活動に参加するようになった。

 もちろん、武も準会員として、〝こだま憑き〟の経験者として、藤原さんたちに協力している。


 永山さん、土浦さん、藤原さんの3人は、斎藤さんが、定期的に連絡をとっているそうで、いまのところ、あのあとに〝こだま〟が出現する状態になったひとは、いないそうだ。

 これで、誰が誰の〝こだま〟を持っているかが、明瞭になった。全員に、〝こだま〟が暴れて手に負えなくなったら、すぐさま武たちへ連絡をくれるように頼み込んだ。


 他の会員にも、あのあと、念入りに確認してみた。が、絶対に〝こだま憑き〟にはなっていないし、なろうともしないと、どのひとも確約してくれた。

 偽庵がどこまで協力してくれるかわからないが、必ず抑え込んでみせると、茂が珍しく、胸を張って宣言した。


 よろい武者が橋に出現しなくなり、噂が、ようやく聞こえてこなくなった頃のある日、斎藤さんから連絡があった。


 武たちに、会わせたいひとがいるのだという。

 断れない事情があるので、何とか都合をつけて会ってもらえないかと、遠慮がちながらも、声には、必死さがにじんでいた。


 のんきな学生だし、何の予定もなかった武たちは、指定された日に、斎藤さんの自宅を訪ねた。

 以前訪問したときと同じ部屋で待っていたのは、高齢の、80歳を越えているのではと思われる上品な白髪の老婦人と、こちらは年齢不詳の、真っ黒な背広を着てつやびかりする漆黒のカバンをかかえた、やけに肩幅の広い男だった。


「兵頭家の方々です」

 斎藤さんが、こわばった声で紹介した。


 兵頭家というだけでは、どういう人たちなのか、さっぱりわからない。

 かなり古い家柄のようにみえるけれど、会って話をしたい用件とは、何だろう?


「――これを」

 漆黒のカバンを持った男が、いつにまに取り出したのか、習字の訂正時に使う朱色に近い、オレンジ色の名刺を手渡した。

 ――全国霊障害対策協力会 専務理事 兵頭栄作 ――

 聞きなれない組織の名前があった。


「こちらの方は、会頭の兵頭かなえ様です」

 老婦人が、ふいに顔をくしゃっとさせて歯をむき出して笑い、ほんの少し頭を下げた。


 それを、みた専務理事の男も、あわてて頭を下げた。

 武と茂も、あわてて会釈した。武も茂も、日頃から会釈などしたことなかったので、ぎこちなかった。

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