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こだま憑き  作者: ブルージャム
第四部 平成編
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森林の剣  歴史探訪の会 8

「永山さん!」

 斎藤さんが、ひざまずいて声をかけた。

「永山さん!」

 べっこう製のメガネをかけた白石さんが、斎藤さんよりさらに大きな声で呼びかける。


「息は、しておるのか?」

 偽庵(ぎあん)がいうと、白石さんが永山さんの口の前に手をかざした。


「息はしてるわ」

「脈も、ありますよ!」

 斎藤さんも、早口で叫ぶ。少し安心したのか、声が明るくなっている。


 永山さんのまぶたがピクリと動き、ゆっくりと開いた。

 ぼんやりとした表情。眼の焦点がさだまっていない。


「何か、飲みますか?」

 永山さんは、うなずくと、手渡されたペットボトルから、お茶をごくりと飲んだ。

 しばらく放心状態だったが、みまわして塚本をみつけると、

「――先生にもバレちゃいましたね」

 塚本さんが、首を振りながら、

「いや、少し疑ってはいたんだ。もっと、君に詳しく訊くべきだった」

 永山さんは、立ち上がった。無意識だろうか、腰をパンパンと叩いた。


「――あのう」

 武が声をかけようとすると、

「もう、わかったでしょ! あなた方のいってた3人目の〝こだま憑き〟は、わたくし! 藤原さんの実験に協力してたのも、わたし!」


「噂で聞いていた恰好(かっこう)とは、違っておったんじゃが?」

 守口さんが、すごい謎だとでもいいたげに訊く。

「橋に立つときは、以前、探訪の会で行った『歴史・考古学なんでもマーケット』で買った古墳時代の模造よろいを着ていったわ。――ちょっとしたおしゃれのつもり」


 武の方を向き、震える声で説明を始めた。

「藤原さんの家が、古い家柄で没落した()族の血筋だということは、調べて知ってたの。――だから、会員のなかで、一番〝こだま〟を呼びやすいんじゃないかって……。だから、自分から近よって親しくなったの。藤原さんのやってる事を観察しているうちに、自分でもできそうな気がしてきて、いろいろ試してみるようになったの。……だから、あの日、また試したいからそばで観察してほしいと連絡が来たとき、用事があるからと断って行かなかったの。もう少しで成功しそうだったから、余裕がなくなってたの。――普段は、かくしゃくとしたご老人で、健康そのものにみえたから、まさか、あんな事になるなんて、少しも思わなかった」


 それでも、ひとりでは実験をやらないよう忠告すべきだったのではと、武は思ったが、いまさらいっても、しかたがなかった。

 元気な老人だったというのは、本当なのだろう。藤原さんの話では、叱られる時、首根っこを押さえつけられると、動けなかったそうだし、実際、ひとに心配されたくない、意固地な老人だったのかもしれない。


「……はて、はて、困りましたな」

 斎藤さんが、頭をかかえている。


「噂が自然に消えていくのを、待つしかないんじゃ?」

 いつのまにか、偽庵からもとの姿に戻っていた茂が、声をあげた。

「わたしも、それしかないと思います」

 白石さんも、しっかりした声を発した。

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