セレスタの魔術 ラムゼスの焦燥
空を埋め尽くす魔法陣と舞い落ちる花弁が頭から離れない。
あの魔術を見てからずっとこうだ。苛々する。
ユースティスが落ち着いているのが理解できない。
牽制だろうがマールアに対して武力行動を仄めかすような真似をしてみせた。
理由は説明されたが、納得はしていない。
こうして帰国する旅路のあちこちであの魔術の範囲の大きさを聞くほどにその思いは強まった。
魔法陣はおそらく円形に広がっているという予想し、広さを計算しているが、その範囲が桁違いだ。
セレスタの王都を中心にかなりの範囲が魔法陣の中に納まっている。
他国と国境を接する街とそこに隣接する街のいくつかが落ちるだろうが、仮に国を攻められるようなことがあってもこの範囲で結界を張ることができれば、セレスタの痛手はそれほどでもない。
単純な武力では戦いを多く経験しているマールアに軍配が上がるだろう。
しかし、魔術や魔道具を計算に入れたら……。この結果は覆るかもしれない。
最初に見せた炎や竜巻の魔術でさえ、戦場で相対する兵士は恐れるだろう。
魔術師一人に何人が倒れ伏すことか。
戦えばマールアが負ける。
理性ではそう判断する。しかし感情では認めたくない。
武力で他国に睨みを利かせてきたマールアには大きな問題だった。
セレスタへの敵意を糧にまとまっている臣下たちも今回の魔術の話を聞けば意見を変えるだろう。
そしてその中心にはセレスタの王太子と友好を結ぶと誓い合ったユースティスが立つことになる。
それが何より気に入らない。
一年前の事件のときもユースティスは上手く立ち回って支持を増やした。
反対にラムゼスは双翼に向かって攻撃したことで非難を受け、支持を減らしている。
ユリノアスに至っては言うまでもない。
焦燥が湧くが解決策などは浮かばない。
他国への影響力を減らすことも、ユースティスが名を上げるのも許しがたかった。




