第94話 小さな芽の確認
翌朝、リオは朝食を急いで食べ終えた。
昨日見つけた土の盛り上がりが気になっていたからだ。
記録帳を持って外へ出ると、朝の空気は少し冷たかった。
新しい区画へ向かい、しゃがみ込んで土を眺める。
「あっ!」
昨日盛り上がっていた場所から、小さな緑色のものが顔を出していた。
土の粒を押し分けるようにして、細い芽が伸びている。
リオは嬉しくなったが、すぐに触らず、まずは父を呼びに行った。
「父さん、芽が出たよ!」
「そうか。見に行こう」
ガイルと一緒に戻ると、父も芽を確認した。
「確かに、芽が出ているな」
「これが、昨日の盛り上がりだったんだね」
「そうだろうな。小さいから、踏まないように気をつけるんだぞ」
リオは何度も頷いた。
記録帳を開き、芽の位置と様子を描いた。
まだ一本だけだった。ほかの場所には、土の表面に変化がないところもある。
「全部、一緒に出てくるわけじゃないんだね」
「種によって、芽が出る時期が少し違うこともある。しばらく様子を見よう」
ガイルはそう言って、畑のほかの場所を確認し始めた。
リオは新しい芽を眺めた。
これまで育ててきた野菜も、最初はこんなに小さかったのだろう。
今の姿と比べると、ずいぶん違う。
昼前、エマたちがやってきた。
「芽が出たって聞いたよ!」
エマが駆け寄ってきた。
「うん。一本だけだけど、出てきたよ」
トーマとカイルも、少し離れた場所から覗き込んだ。
「本当に小さいな」
「踏まないようにしないとね」
カイルは地面に置いてあった道具を移動させた。
四人は芽を囲むようにして眺めたが、近づきすぎないように気をつけた。
「前に育てた芽と、形が違うのかな?」
エマが尋ねる。
「まだ小さすぎて、よく分からないね。もう少し葉が開いてから比べてみよう」
リオはそう答え、芽の絵を描いた。
今は、種の袋に描かれていた姿と同じかどうかも分からない。
それでも、土の中から緑色の芽が出てきたことは確かだった。
午後、リオは水やりを手伝った。
新しい区画だけでなく、ほかの畑も確認し、必要な場所にだけ水を与える。ガイルは、土の状態を見てから判断するように教えてくれた。
「芽が出たからといって、水をたくさんあげればいいわけじゃないんだね」
「そうだ。必要な量は、土や天気によって違う。多すぎてもよくない」
リオは、以前教わったことを思い出した。
水を運ぶことにも慣れてきたが、どれだけ与えるかを決めるのはまだ難しい。
だから、父の判断を見ながら少しずつ覚えていくことにした。
夕方、リオは記録帳を開いた。
『新しい種から芽が出た。最初に確認できたのは一本。ほかの場所はまだ変化が見えない。芽を踏まないように注意する』
書き終えたリオは、窓の外を眺めた。
新しい畑に、また小さな命が加わった。
これからどんな葉が広がるのか、どのくらい育つのか。
まだ知らないことばかりだったが、それを確かめていく時間が楽しみだった。




