第95話 葉が開くまで
新しい芽が出てから数日が経った。
最初に見つけた芽は、少しずつ伸びていた。土の表面には、ほかにも小さな緑色が見えるようになっている。
リオは記録帳を開き、最初に描いた絵と今日の様子を比べた。
「少し大きくなったね」
朝畑の観察を終えたあと、リオは新しい区画へ向かった。
芽はまだ小さいが、葉の形が少し分かるようになってきた。
以前育てた野菜とは違う形をしているように見える。
「これが本葉なのかな?」
リオは父に尋ねた。
「まだ、葉の様子を見ているところだな。芽の最初に出る葉と、そのあとに出てくる葉では形が違うこともある」
「じゃあ、もう少し待ったほうがいいね」
「そうだ。今は無理に名前を決めたりせず、成長を見ていこう」
リオは頷いた。
その日の昼、エマたちがやってきた。
四人で芽を眺め、葉の形をそれぞれ描いてみる。
エマは葉の先を丁寧に描き、トーマは葉の数を数えた。カイルは、芽と芽の間隔を地図に記録していた。
「同じ場所から出ているのに、少しずつ大きさが違うね」
トーマが言った。
「種をまいた日や場所は同じだけど、芽が出た日が違うのかもしれないね」
リオは記録帳を見た。
芽を最初に確認した日は分かっているが、ほかの芽がいつ出たのかは正確に分からない。
これからは、見つけた日を一つずつ記録しておくことにした。
「芽を見つけた日を書いておけば、あとから比べられるね」
エマが頷いた。
午後、ガイルは新しい区画の周りを整えていた。
芽が出てきた場所に人が入らないよう、目印を置いている。
リオは目印を運ぶ手伝いをした。
「これなら、間違えて踏まなくてすむね」
「そうだ。育っている場所が分かるようにしておくことも大切だ」
目印は、畑の作業を邪魔しない場所に置かれた。
その後、リオはほかの畑の世話をした。
新しい芽が気になるが、ほかの野菜も育っている。どれか一つだけを見ているわけにはいかない。
水やりを手伝い、収穫できそうな野菜がないか確認する。父や兄たちが作業している場所では、必要な道具を運んだ。
夕方、リオは新しい区画へ戻った。
朝よりも葉が開いているように見えた。
その様子を記録帳に描き、今日の天気と時間を書き添える。
芽が出てから、少しずつ形が変わっている。
最初は土の中から出てきた小さな緑色だったものが、今では葉の形を見せ始めていた。
「大きくなるのは、ゆっくりなんだね」
リオはそうつぶやいた。
それでも、毎日見ていれば変化は見つけられる。
そのことを、以前の畑で何度も経験してきた。
明日も、同じ場所を見に来よう。
リオは記録帳を閉じ、家へ戻った。




