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第91話 新しい種の名前

 市場から持ち帰った種の袋は、納屋の棚に並べられていた。


 リオはその中から、まだ名前を覚えていない袋を一つ取り出した。


 袋には、見慣れない文字が書かれている。


「父さん、この種の名前を教えて」


 ガイルは袋を受け取り、文字を読んだ。


「これは、葉を食べる野菜の種だな。名前はここに書いてある」


「どんなふうに育つの?」


「袋の説明を見てみよう。育てる時期や、間隔について書かれている」


 リオは袋を受け取り、文字を一つずつ確認した。


 難しい言葉もあったが、父に説明してもらいながら、必要な部分を記録帳に写していく。


 種の名前、まく時期、育てる場所、気をつけること。


 ただし、袋に書いてある内容が、自分たちの畑にそのまま当てはまるとは限らない。


「この種、育ててみたいな」


 リオが言うと、ガイルは頷いた。


「条件を確認して、場所を決めてからだな。今すぐ全部を植える必要はない」


「うん」


 リオは種の袋を元の場所へ戻した。


 午後、エマたちがやってきた。


「新しい種を見たんだって?」


 エマが尋ねる。


「うん。市場で買ってきた種の一つだよ。葉を食べる野菜らしいんだ」


「どんな形になるの?」


「袋には絵が描いてあるけど、実際に育てたらどうなるのかは分からないね」


 トーマは、袋の説明に興味を持った。


「育てる間隔が書いてあるんだな」


「そうみたい。種をまくときに、近すぎないようにするんだって」


 カイルは畑の地図を見ながら言った。


「どこに植えるか決めないとね」


 四人は、畑の空いている場所を確認した。


 雨のあとで土がまだ落ち着いていないところもあるため、すぐに作業を始めることはしなかった。


 ガイルにも相談し、どこなら植えられそうかを確認する。


 その結果、畑の一部を使って、少量だけ試してみることになった。


 リオは嬉しくなったが、父から一つ注意された。


「種をまく前に、記録を残しておくこと。何を、どこに、いつ植えたか。あとで分からなくならないようにな」


「分かった」


 リオは記録帳に新しいページを作った。


 種の名前と、植える予定の場所を書き、まだ実際には植えていないことも記した。


 翌日、畑の状態を確認してから、ガイルと一緒に種をまくことになった。


 その夜、リオは種の袋をもう一度眺めた。


 まだ土の中に入っていない種が、これからどんな葉を伸ばすのか。


 今まで育ててきた野菜とは違う姿を見ることができるかもしれない。


 その楽しみを胸に、リオは袋を棚に戻した。

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