第90話 雨上がりの道
翌朝、空はすっかり晴れていた。
リオは朝食を終えると、記録帳を持って外へ出た。昨日の雨で畑がどう変わったのか、確かめてみたかった。
家の前の道には、まだ水たまりが残っている。
歩くたびに靴の底が少し沈み、普段よりも歩きにくかった。
「リオ、足元に気をつけろよ」
後ろからノアが声をかけた。
「うん。昨日の雨で、道がぬかるんでいるね」
「畑の中も同じだ。今日は無理に入らず、外から様子を見るといい」
リオは頷き、畑の入口で立ち止まった。
畑の土は、全体的に濃い色に見えた。低いところには水が残っており、歩く場所によっては足を取られそうだった。
リオは記録帳に、畑の外から見た様子を書いた。
朝畑の葉には水滴が残っている。日なた畑の周りには小さな水たまりがあり、豆畑の端には雨で流れた土が少し集まっていた。
角の畑では、以前から気になっていた端の部分に水がたまっていた。
「ここは、雨が降ると水が集まるんだな」
リオは地図に印をつけた。
そこへエマたちがやってきた。
「おはよう。今日は畑に入らないの?」
エマが尋ねた。
「まだ土が濡れているから、外から見ているんだ」
「昨日は雨が強かったもんね」
トーマは道の水たまりを避けながら歩いてきた。
「この道も、いつもより歩きにくいな」
カイルは畑の周りを見て、土が流れた跡を見つけた。
「ここの土、少し道のほうに出ているよ」
リオは近くで確認した。
確かに、畑の端から細かな土が流れたような跡がある。
四人は、その場所を地図に記録した。
ただ、すぐに土を戻したり、道を直したりはしなかった。どのように手を入れるかは、畑を管理している大人に相談する必要がある。
リオは父に聞いてみることにした。
昼前、ガイルと一緒に畑の周りを確認した。
「雨が降ると、ここに水が集まるんだね」
「そうだな。場所によって水の流れ方が違う」
「土が流れているところもあったよ」
「よく見つけたな。今は大きく崩れているわけではないが、次の作業のときに整えておこう」
ガイルは、地面の様子を確かめながら説明した。
「雨が降ったあとは、すぐに畑の中へ入らないほうがいいの?」
「土の状態によるな。濡れた土を踏み固めてしまうこともある。必要な作業があるなら、状態を見て判断する」
リオは、その言葉を記録帳に書いた。
午後には、道の水たまりも少しずつ小さくなっていた。
エマたちは、広場で遊ぶことにした。リオも記録帳を家に置き、しばらく一緒に遊んだ。
雨上がりの空気は澄んでいて、遠くの山もいつもよりはっきり見える。
帰り道、リオは畑の前で立ち止まった。
昨日と今日では、畑の様子が大きく違う。
野菜そのものが急に変わったわけではない。土や道、水の跡が変わっていたのだ。
畑は、野菜だけでできているわけではない。
周りの道や土、水の流れも、畑を続けていくために大切なものだった。
リオは、明日も畑の様子を見に来ようと思った。




