↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
89/94

第89話 雨の日の過ごし方

 朝、リオが目を覚ますと、窓の外から雨音が聞こえてきた。


 昨日の夜から降り始めた雨は、朝になっても止む様子がない。屋根を叩く音が続き、庭の土には水がたまっていた。


「今日は畑に行けないね」


 リオが台所へ行くと、ミーナが窓の外を見ていた。


「雨が強い間は、無理に出なくていいわ。今日は家の中でできることをしましょう」


「記録帳を整理してもいい?」


「もちろん。せっかくだから、前の記録も読み返してみたら?」


 リオは頷き、部屋から記録帳を持ってきた。


 四つの畑の記録、収穫した野菜の記録、種の整理、道具の手入れ。ページは少しずつ増えていた。


 最初のころの絵を見返すと、芽の形も今とは違っている。字も、以前より少し読みやすくなっていた。


「ずいぶん増えたね」


 ミーナが隣から覗き込む。


「うん。最初は、こんなに書くと思っていなかったよ」


「続けているから、増えていくのね」


 リオは、記録の中で日付が抜けているところを探した。


 覚えているものは父に確認し、分からないものは空欄のままにする。以前の記録を無理に埋めることはしなかった。


 昼前、雨が少し弱くなった。


 しかし、外はまだぬかるんでいる。ガイルは畑の様子を遠くから確認しただけで、作業は行わなかった。


「雨の日には、何もできないの?」


 リオが尋ねると、ガイルは首を振った。


「外でできる作業は限られるが、家の中でできることもある。種の整理や道具の確認、これまでの記録の見直しだな」


「記録を見直すのも仕事なの?」


「次に何をするか考えるためには、前に何をしたか知っておく必要がある。そういう意味では、大切な時間だ」


 リオは頷いた。


 午後になると、ミーナがお菓子を作ることになった。


 リオは材料を並べ、必要なものを量る手伝いをした。リナも近くで見ており、母に頼まれて木の匙を運んでいた。


「今日は雨だから、お菓子の日だね」


 リナが嬉しそうに言った。


「いつも雨の日に作るわけじゃないわよ」


 ミーナは笑いながら答えた。


 お菓子が焼き上がるまで、リオは記録帳を整理した。


 畑の記録と料理の記録を分け、あとから探しやすいように目印をつける。紙の端に小さな色の印をつける方法は、ミーナが教えてくれた。


 夕方には、雨がほとんど止んでいた。


 リオは窓から畑を眺めた。土は濡れており、ところどころに水たまりができている。


 明日は、足元に気をつけながら様子を見に行こう。


 その前に、今日の雨のことを記録しておく。


『朝から雨。畑には行かず、記録帳を整理した。雨が止んだあとも土が濡れているため、作業は急がない』


 書き終えたリオは、焼き上がったお菓子を一つ手に取った。


 雨の日にも、できることはある。


 畑に出られなくても、農作業について考える時間は作れるのだと知った一日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。