第88話 道具を手入れする日
朝から、ガイルとアルドは納屋の前に道具を並べていた。
普段使っている道具を一度確認し、傷んでいるものがないか調べる日なのだという。
リオはその様子を見て、手伝いたいと申し出た。
「今日は道具の手入れをするんだよね?」
「そうだ。リオは、まず布を持ってきてくれ」
アルドに頼まれ、リオは納屋から布を持ってきた。
作業台には、鍬や小さな道具、籠、縄などが並んでいる。
ガイルは一つずつ状態を確認し、必要なものを分けていた。
「道具は、使っていると少しずつ傷むんだ。壊れてから直すより、早めに気づいたほうがいい」
「全部、毎日確認するの?」
「よく使うものは使う前後に見る。今日は、普段あまり見ないところまで確認しているんだ」
リオは、道具の持ち手を布で拭いた。
土がついているところは、先に汚れを落とす。木の部分にひびがないかも確認するように言われた。
しかし、リオには小さな傷と大きな傷の違いがよく分からない。
「父さん、これは大丈夫?」
道具の柄にある細い線を指さす。
ガイルは手に取り、状態を確かめた。
「これは木目だな。傷ではない。よく見ているが、何でも傷だと思わなくていいぞ」
「そっか。見分けるのも難しいね」
「使いながら覚えていけばいい」
次に、アルドが籠の手入れをしていた。
籠の編み目が緩んでいないか、持ち手が傷んでいないか確認している。
「籠も手入れするんだね」
「そうだ。野菜を運ぶときに壊れたら困るだろう?」
「確かに」
リオは、籠を一つずつ確認した。
見た目には同じようでも、持ち手の部分が少し違っているものがある。古いものは、編み目が緩んでいるところもあった。
昼前には、道具の確認が一段落した。
使えるものは元の場所へ戻し、修理が必要なものは別に置く。すぐに直せないものには、札をつけておいた。
リオは記録帳に、確認した道具の名前と状態を書いた。
午後、ノアがやってきた。
「まだ道具の整理をしているのか?」
「うん。手入れを手伝っているんだ」
「なら、こっちの縄も見てくれるか?」
ノアは古い縄を持ってきた。
縄の一部がほつれており、以前よりも弱くなっているように見える。
「これは使えるの?」
「重いものを固定するには、もう使わないほうがいいな。軽いものをまとめるときに使うか、状態によっては処分する」
リオは、同じ縄でも使い道を変えることがあると知った。
新しいものに交換すれば終わりではなく、まだ使える部分があるかどうかも確認するのだ。
夕方、作業が終わると、納屋の中はいつもより整っていた。
「きれいになったね」
リオが言うと、アルドが笑った。
「次に使うときに、探しやすいだろう?」
「うん。どこに何があるか分かりやすいよ」
ガイルは作業台を片づけながら言った。
「道具を大切にすることも、農作業の一部だ。使う人が気をつけていれば、長く使えるものもある」
リオはその言葉を記録帳に書き込んだ。
畑の世話をして、野菜を収穫して、道具を手入れする。
どれも別々の仕事のようで、実際にはつながっている。
今日もまた、知らなかったことを一つ覚えた。




