第9話 父の冒険者時代
次の日。
リオたちは村の外れで遊んでいた。
森の方へは行かない。
父から何度も言われているからだ。
「森って、どこまで続いてるのかな?」
カイルが言った。
「知らない」
リオが答える。
「父さんなら知ってるんじゃない?」
その言葉を聞いて、四人はリオの家へ戻った。
「父さん」
「どうした?」
「森ってどこまであるの?」
ガイルは少し考えた。
「この近くの森なら、ずっと奥まで続いてる」
「その先は?」
「別の道や山がある」
「父さん、行ったことある?」
「ああ」
リオたちは目を輝かせた。
父は昔、冒険者だった。
だから村の外を知っている。
「森の向こうには何があるの?」
「街がある」
「どんな街?」
「大きいぞ」
父は昔の旅について少しだけ話した。
たくさんの家。
人の多い通り。
色々な店。
遠くから来た商人。
冒険者が集まる場所。
リオは夢中になって聞いた。
「父さんは、そこに住もうと思わなかったの?」
「思ったこともある」
「じゃあ、どうして村に戻ったの?」
ガイルは畑の方を見た。
「色々あったが……ここが気に入ったからだ」
母が横で笑った。
「私もいたしね」
「それもある」
「それも?」
「一番大きい理由だ」
母が少し照れた顔をした。
子供たちは笑った。
その日の夕方。
リオは畑に立った。
村の外には、知らない世界がある。
街もある。
父が見た場所もある。
でも父は、ここへ戻ってきた。
畑の土を触る。
いつもと同じ感触だった。
リオはまだ、どこか遠くへ行きたいとは思わなかった。
今はこの村が好きだった。
家族がいる。
友達がいる。
毎日やることがある。
それで十分だった。
「リオ!」
遠くからエマの声が聞こえた。
「今行く!」
リオは走り出した。
明日もまた、ここで遊ぶ。
そんな約束があることが嬉しかった。




