第10話 明日も畑へ
季節が少しずつ変わってきた。
朝の空気が、前より冷たく感じる。
畑では、夏に育てていた作物の収穫が進んでいた。
リオも毎日、できる範囲で手伝っている。
「リオ、これを運んでくれ」
「うん!」
父から渡された籠を持つ。
以前より重いものも持てるようになった。
「気をつけろよ」
「大丈夫」
一歩ずつ歩く。
畑の端まで運ぶ。
「置いていいぞ」
「できた!」
「上手くなったな」
父に褒められて、リオは嬉しくなった。
少し離れた場所ではアルドが作業をしている。
ノアは途中で休んでいる。
「ノア、休みすぎ」
「疲れた」
「まだ始まったばっかりだよ」
「リオは元気だな」
「僕は大丈夫」
そこへエマたちがやってきた。
「今日も畑?」
「うん」
「じゃあ、終わったら遊ぼう」
「分かった」
トーマは畑を見るなり言った。
「今日のお昼、何?」
「また食べ物?」
エマが笑う。
「大事だろ」
カイルも頷いた。
「確かに大事だ」
四人は笑った。
夕方。
仕事が終わる。
リオは土のついた手を見た。
最初は畑のことなんて何も知らなかった。
雑草と作物の違いも分からなかった。
水の量も知らなかった。
種のことも知らなかった。
今だって、まだ分からないことはたくさんある。
でも、少しずつ覚えている。
明日は何をするのだろう。
新しい種を植えるかもしれない。
行商人がまた来るかもしれない。
エマたちと遊ぶかもしれない。
父から昔の話を聞くかもしれない。
家に帰ると、母が夕食を作っていた。
リナが小さな足で走ってきて、リオの服を掴む。
「おかえり」
「ただいま」
食卓には家族が揃っていた。
父。
母。
兄たち。
妹。
いつもと同じ景色。
けれどリオは、その景色が好きだった。
食事を終え、布団に入る。
窓の外には星が見えている。
「明日も畑行こう」
小さく呟く。
誰に聞かせるわけでもない。
ただ、自分に言った。
特別なことは何もない。
世界を救うような出来事もない。
大きな街へ旅立つこともない。
今日も畑へ行き、家族と過ごし、友達と遊んだ。
そして明日もきっと、似たような一日になる。
けれど、六歳のリオにとっては、それで十分だった。
明日の朝も、きっと母の声で目を覚ます。
父と畑へ行く。
小さな作物の成長を見る。
友達と笑う。
そんな日々が、また始まる。
リオは目を閉じた。
明日のことを少しだけ楽しみにしながら、静かに眠りについた。




