第8話 来年の畑
豆の収穫が終わった翌朝。
父は畑の端に座っていた。
「リオ、来年は何を育てたい?」
「来年?」
「ああ」
リオは畑を見る。
「豆」
「また豆か?」
「うん。好きだから」
「それもいいな」
父は笑った。
けれど、すぐに付け足した。
「他にも色々あるぞ」
「例えば?」
「トマト、芋、麦、葉物もある」
知らない名前がいくつも出てくる。
「全部育てられる?」
「畑には限りがあるからな」
リオは悩んだ。
その話を聞いたエマたちも集まってきた。
「何の話?」
「来年の畑」
「じゃあ、私トマトがいい」
エマがすぐに言った。
「俺は芋」
トーマも負けじと言う。
「俺は……珍しいもの」
カイルらしい答えだった。
「珍しいものって何?」
「珍しいものは珍しいから珍しいんだ」
「分からないよ」
四人で笑う。
父は少し離れたところで、その様子を見ていた。
「じゃあ、みんなで考えてみるか」
「いいの?」
「ああ。ただし、最後に決めるのは大人だ」
リオたちは畑の前に座り、どんな作物がいいか話し合った。
大きくなるもの。
甘いもの。
たくさん取れるもの。
育てやすいもの。
話しているうちに、昼になった。
結局、何を植えるかは決まらなかった。
「明日考えよう」
エマが言う。
「うん」
リオも頷いた。
家に帰ると、父が小さな袋を持っていた。
「これは?」
「種だ」
「来年植えるの?」
「ああ。良いものを残しておく」
リオは袋を覗き込んだ。
小さな種がいくつも入っている。
今日食べたもの。
昨日収穫したもの。
それが、また次の年につながっていく。
リオには、それが少し不思議だった。
「種ってすごいね」
「そうだな」
父は笑った。
その夜、リオは布団の中で考えた。
来年は何を育てよう。
まだ決まっていない。
でも、それを考えるだけで楽しかった。




